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「国内視察?」
ある日の事でした。
テラスでギュンターはある提案を有利にしたのだ。
「はい。政に携わる者は、まず民を知らねばならない。陛下のお側で深く学びました。
ついては、さらに民を深く知る為、暫く旅に出ようかと…」
「(ギュンターが旅に出れば、暫く勉強から開放されるし、おれもちょっと羽が伸ばせるかも…)」
と、考えた有利は。
「いいね!ぜひ勧めるよ!」
「お許し、ありがとうございます」
そう言ってギュンターは旅に行ったのだった。
「…と、見送ってはみたものの…何だよコレ!!働き者って思ってたけどこれが全部ギュンターの仕事だったなんて…!」
有利の目の前にあるのは大量の書類、書類、書類、そして財宝などが置いてあった。
その量の多さに有利はげっそりとなる。
「あ~…、さっさと呼び戻さなきゃ…」
「元はと言えば、これも陛下のお仕事ですよ」
「う…」
「今までギュンターが代わりにやってただけなのよね」
「むしろギュンターに感謝しないとな」
有利の隣にいるコンラートと双子は何時もと変わらない口調。
「「「「?」」」」
すると1羽の白鳩が部屋の中へと入って来る。
「白鳩瓶?」
白鳩便は、ギュンターからの報告書でもあったのだ。
『前略、ユーリ陛下。
旅の空で聞く陛下の評判は、どの町でも上場です。
それも、陛下のこれまでの麗しきご活躍の結実でしょう。
わたくしは、一輪の花に出会いました。
遠い西の町に咲く、気高き花、誇り高き姫君です』
「『誇り高き姫君』…?」
「ユーリ、まだ?」
「あ」
ギュンターの手紙を読みながら、有利はアリア、グレタ、エイル、グウェンダルと一緒にお菓子作りをしていた。
「こげるぞ」
グウェンダルはオーブンの戸を開け、そこから出したのは有利が作ったクッキー。
「ギュンターがいつもグレタにクッキーを焼いてたなんて知らなかった」
そう言いながら自分の作ったクッキーを見る。
「…あぁ…、何か汚い…」
「味は大丈夫だよ、きっと!」
そんな有利のクッキーを見て嫌な顔をしないグレタ。
カタ…
すると同じ様にクッキーを作っていたグウェンダルも自身が作ったクッキーが乗っている鉄板を置く。
「わ――!可愛いvv!」
「へぇ~ グウェンダル、上手だな」
「すごいですね!グウェン!」
エイルは完全に双子の相手の呼び名が移ったらしい。
「相変わらずね、グウェン」
「気に入ったか?」
「うん!」
「美味しそうです」
グレタはクッキーを1枚を手に取る。
「でも、食べたらかわいそう…」
「グレタ、エイル、中々お菓子食べれないね…」
「いい…。こっち食べる」
「え?」
真っ黒になった有利のクッキーを食べるグレタ。
「エイル、グレタ、私の食べる?」
アリアもついでに作っており、グウェンとはまた違ったクッキーを置いたのだ。
「わぁ!アリア、ありがとう!」
「すごいです!姉様!」
「ありがとう、2人とも」
2人に素直に感謝をされ、アリアも嬉しそうに微笑む。
「相変わらず器用なだ。お前も」
「でしょ?」
クッキーを作っていた昼時であり、夜になると。
「さ、陛下」
「うん…。よしよし、良い子にお眠り」
ダカスコスに呼ばれた有利は、セルセと一緒に馬小屋に来ていた。
「陛下にお願いするなんて恐れ多いのですが、いつもギュンター閣下が頬ずりしないと馬達が眠れないのでして…」
「それって、おれで効果あるの?」
「効果はあるっぽいぞ?ユーリ」
「え?」
先ほど頬ずりした馬を見ると安心して眠っている。
「おお、あった」
「では!他もお願いします!」
「え?」
馬小屋にある馬達の数を見る。
そこには約100mはあるんじゃないかという位の長さに、沢山の馬が待っていた…。
「ええぇぇぇ!!??おれが眠れないよ――!!」
「じゃ、頑張れよユーリ」
「え!?手伝ってくれないの!!??」
「ああ。俺は明日も兵達の訓練をしなきゃいけないしな。心で応援していてやるよ。じゃ、おやすみ」
そう笑顔で言い切ったセルセはそのまま馬小屋から出て行ったのだった。
『前略、ユーリ陛下。
気高き姫は今、その誇りを捨てようとしています』
翌日、有利はヴォルフラムと共にバラ園で栽培をしていた。
「有利」
「アリア、どうしたの?」
「これ、ギュンターからの白鳩瓶よ」
持ってきた手紙を手渡すと、有利は呆れたような表情になる。
「ギュンター、いったいどこで何やってんだ?」
そう言いながらもギュンターから届いた手紙を読み始める。
「『前略、ユーリ陛下。姫の誇りを取り戻す為、蛮族と戦う決意をしました』なんだって?」
「アイツは無双家だからな」
「そうね」
『前略、ユーリ陛下。
気高き姫は誇りを取り戻し、邪悪な者共は地の果てに逃げ去りました。
彼らと共に時を過ごした事を、わたしは誇りに思います』
「『ああ、美しき西の国よ…。眞魔国とともに永遠なれ』?何だこれ?」
有利の執務室に双子とコンラート、グウェンダル、そしてヴォルフラムがいた。
そこには相変わらず、溜まっている仕事が山積みになっている。
「西には寂れた街道しかない筈だが…?」
「町なんて、あったのか?」
「彼の事です。もしかしたら新種の魔族を見つけたのかも?」
ギュンターの手紙にいくつか不思議に思う事があり、どこか首を傾げるだけだった。
「てゆーか、もしかして ここと地球以外にも世界があったんじゃ…」
「アイツの頭の中ならありそうだな」
「否定はできないわね…」
ヴォルフラムの言葉にアリアは苦笑する。
「久しぶりに訪ねてみましたが!」
「?」
「あ、アニシナ」
突然扉が開いたと思ったら、アニシナが笑顔で中へ入って来る。
「ギュンターは国内視察で陛下がその代役をなさっているとか」
その手に持っているのはアニシナが作った魔動装置。
「ちょ、ちょっと待って!ア、アニシナさん!!」
さすがの有利に自分が実験体になるのだと気づき、思いっ切り嫌がる。
「あぁ!やめて!それだけは!!」
「まあまあ」
それでも止めないアニシナ。
『わたくしも、そろそろ陛下のお顔が恋しくなって参りました』
「ギュンター!!カームバ―――ック!!」
こうして有利の代理は無事(?)に終わりましたとさ。
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(2007/09/16)
(re:2017/03/19,2024/07/08)