船で約３日かけ、ディオネが治めているシヴェル島に到着した。

大シマロンの領内という事もあり、有利は髪を染め瞳にもカラーコンタクトを着用している。

ディオネの城に着き、門から屋敷へ入ると城の広さに有利は感心している。

「すごー。まるで血盟城みたいだね…」

「……まぁ…、この島を治めてる家だから…」

「？どうしたんだ？#アリア…」

いつもと様子が違うアリアを心配する有利だったが、彼女はある一箇所を見ていた。

いったいその場が何なのかわからない有利達とは違い、すぐにアリアは気づくと同時に彼女の元へ駆け寄る。

「アリア！」

そしてギュッと彼女を抱きしめる。

「落ち着け。今、この城にあの人達はいないって事ぐらい、分かってるだろ」

「っ わかってる…」

瞳に涙を溜めながらアリアはセルセの背中の服をギュッと握る事しか出来なかった。

「アリア、」

そんなアリアを見て有利達は驚くしかない。

「（やっぱりダメか…）」

いくらあの時に生きていた人達が今現在いなくても、子どもの時に味わった事は忘れる事が出来ないのだ。

それを嫌でも理解しているセルセはコンラートに話しかける。

「コンラート、アリアを頼む」

「ああ」

頷いたコンラートはすぐに双子の元へ寄ると、優しくアリアを抱き上げた。

抱き上げられたアリアはコンラートの首にしがみつくように腕を回した。

「アリア？」

「…ごめん…」

小さな声で呟く。

弱々しいアリアを見て、コンラートは何も言えなかった。

「エイル！」

「母様」

少し遠くから小走りで来たのは赤茶色の髪、黄土色の瞳をした女性は、エイルの母親でもあるシェリルだった。

シェリルはエイルの後ろにいる有利達に気づく。

「この方達は？」

「あ…」

「わたしの祖母の友人です」

「ヘラの？」

「はい」

どうやって説明しようか迷ったエイルよりも先に答えたのはユノだ。

ヘラの友人と紹介された有利達を見る。

シェリルはコンラートに抱き上げられているアリアを見ると驚きを隠せず、自分の口元を手で押さえたのだ。

「！！おばあ様…？」

『！？』

一瞬驚いたシェリルだが、すぐに謝る。

「あ…ごめんなさい、おばあ様はもう…、お亡くなりになっているのに…」

「母様…」

哀しそうに笑うシェリルを心配するエイル。

そんな様子を見ていたセルセはしょうがない、と溜息をつくとシェリルに話しかける。

「アンタが言ってる『おばあ様』って、レイア・ディオネの事だろう？」

「え？…ええ…」

セルセが何を言おうとしたのかわかったコンラートに『言うのか？』と聞かれ苦笑する。

「…言うしかないだろ？今さら隠したってしょうがないし」

苦笑してから真剣な表情になる。

「…その人は俺らの、…母親だよ」

「！！」

驚いたシェリルはすぐに昔、レイアが言っていた事を思い出す。

「…それでは貴方々が、おばあ様が言っていた双子？」

「母様が何か言っていたのか？」

「…立ち話しもなんですし、部屋に案内いたしますわ」

一度、話しを止め有利達に部屋へ案内した。