祖母の願い
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『この双子はあの魔族との間に出来た子どもだぞ!』
『レイアを連れ去った男との子どもか…』
『呪われてる…、この双子は…』
『機会はいつかあるはずだ』
『その時になったらこの一族から追い出してやる』
「(…夢…か…)」
朝、日差しで目が覚めたアリアは少し冷や汗をかいている。
なぜこんなに疲れているのか、その理由は夢の所為だ。
「(昔の記憶の夢を見るなんて…)」
自分の思い出でもあるのに、アリアにとっては幸せな思い出なんかじゃないのだ。
双子にとって苦痛でしかない。
「おはよう」
「あ、アリアおはよう。珍しいね、アリアが少し朝食に遅れるなんて…」
「ちょっと、夢見が悪くて…」
いつも有利達は朝食を食べている間に赴く。
そこにはいつものメンバーが食事をしている最中だったのだ。
あまり遅れないアリアが今日に限って遅れてやってきた事に、不思議に思った有利は尋ねたのだ。
「大丈夫なのか?」
「ええ、ちょっとね…、」
アリアの返事を聞いたグウェンダルは何かをわかったように聞きなおす。
「あのディオネの者達に関係あるのか?」
「………」
「グウェンダル?」
何も言えないアリアに有利は首を傾げる。
グウェンダルは先日のディオネの者達が来た時にセルセと共に話しを聞いていたのだ。
「まあ…」
「何かあるなら言った方がいいぞ、アリア…」
「コンラート?」
「セルセもそうだが、少しは話したほうが楽になるんじゃないか?」
双子が何かを思っているとわかったコンラートは双子から聞こうとしたのだ。
アリアはセルセを見る。
それに気づいた彼は小さく溜め息を吐き頷く。
その表情に納得したのか、アリアは思っていた事を話し始める。
「この間、ユノ…だっけ?ユノが私達に会いたい人がいるって言ってたから」
「それに何か問題でもあるのか?」
「俺達に会いたいって言ってもな、知り合いはもう死んでるはずだぞ?相手は人間であって、魔族とは寿命が違う。
それに…俺達はディオネから追い出されたのは約80年前だ。もし生きてたとしても相手は90~100歳ぐらいって事だろ?」
「あ」
その事に有利は思い出した様に納得した。
「だから、それだけが気になるだけなの」
今だ立っていたアリアは自分の席に着席する。
「その一族に行きたいのか?双子」
「「行きたくない」」
『………』
はっきり即答で答える双子に何も言えなくなる一同。
「行きたくは無いんだけど、その会いたいって言ってる奴には…、会ってみたいんだ…」
哀しいような、曖昧な笑った顔で話すセルセにアリアもまた何も言えない。
静まっていた部屋で話し始めたのはグウェンダルだった。
「前から思っていたのだが、お前達はセオラン様の事はどう思っているんだ?」
「グウェン?」
「お前達の実の父親だろう?だが、お前達は決してセオラン様の事を『父親』と言っているだけで、『父様』と呼んでいない。昔から、それが気がかりだったのだが?」
「「……」」
図星をつかれた双子は黙ってしまう。
グウェンダルの言った通りであり、双子は今までセオランの事を『父様』と言った事がないのだ。
いや、幼い頃は言っていた。
家族4人で暮らしていた幸せのあの時は…。
有利達は双子がなんと言うのか気になり、双子をずっと見る。
「どうなのだ?」
グウェンダルに再度聞かれ、諦めたようにセルセが答える。
だが、その返事が衝撃な言葉だった。
「父親だと思ってないからだよ」
まさかそんな言葉が出てくるとは思っていなかった。
『……』
アリア以外の者は何も言えなかったが、そんな沈黙を破ったのは有利だった。
「でも、双子のお父さんなんだろ?何で父親って思ってないんだ?」
「理由は簡単よ」
「アリア…」
「私達には父親の記憶が無い。それであの方が父親だって言われても、そんな実感なんてないの。私達が眞魔国に来た時にはもう死んでたから…」
「だから父親って思ってないって言うよりも…、思えないんだ」
記憶が無いから。
物心ついた時にはセオランはいなかった。
自分達は父親の思い出が無いのに、周りにいるグウェンダル達は知っている。
父親の話になっても何もできない自分達に対して周りがそれを答えていく事が、どんなに悔しいか…。
初めて双子の気持ちを知ったグウェンダルやギュンター達は何も言えなくなってしまい、その雰囲気を感じ取ったセルセは苦笑する。
「こうやって話すと、俺達って家族に恵まれてないよな」
「ハァ ま、それは置いとくけど、私達が気になっているのがその人の事」
「やっぱ、手っ取り早く脅すか?」
「え??」
セルセの提案に驚く有利。
驚いている有利を見たセルセは『冗談だよ』と笑っている。
『(絶対本気だ!!)』
全員がそう思った事だ。
そんなセルセ達を気にせずに、お茶を飲んでいるアリアだった。