数日後、アリア達は有利が眠っている部屋へと赴く。

「グウェンダル？」

「何をしている。大人しく寝ていろ」

「それ所じゃないよ！コンラッドは！？コンラッドはどうなったんだ！？」

心配している有利だったが、グウェンダルは部屋に中に入ると、一緒に来ていたアリア達も部屋の中へと入る。

「まさか、」

「無事だ。ちゃんと生きて、この城にいる」

「そっか、良かった…」

コンラートが無事だと分かり、安心したのは有利は倒れそうになる。

「陛下、」

「ユーリ！」

すぐにギュンターは有利を支える。

「さ、もう少しお休み下さい。慣れない人間の土地でいつも以上に魔力を使われて、お疲れでしょう」

「いや、大丈夫。コンラッドはどこにいるの？もしかして、酷い怪我とか？」

「渋谷…」

「……」

「え？」

言い難そうにしている健やヴォルフラムを見て、有利はまた不安に思う。

だがアリアはいつもと変わらない様子で説明をする。

「コンラートは、このフランシア城の別室で監視下に置かれているだけよ」

コンラートの事を聞いた有利はどういう事だと聞く。

「どういう事だよ！監視って！コンラッドは悪い事してないじゃないか！」

「許可無く魔王の側を離れ、あまつさえ敵である大シマロンに君した罪は裁からなければならない」

「コンラッドは裏切ってなんかいない！現に、おれ達を助けてくれたじゃないか！」

「それでも、魔王に剣を向けた事は事実だ」

怒っている有利をギュンターは落ち着かせようと声を掛けたが、有利はそれでも感情を抑えられない。

「もういい！おれが会って話を聞いてくる！何か訳があったんだ！」

そう言って有利はギュンターの腕を振りほどくと、すぐに部屋から出て行こうとする。

「！」

「申し訳ありません」

すると有利が扉を開ける前にライラが扉を開け説明をする。

「ウェラー卿の安全の為にも、こうするしかなかったのです」

「ライラさん、」

「彼が大シマロンの使者として、この地に来た事を知る者は多い。今も、彼を疑っている者達から守る為にも、必要な事なのです」

「でも、会いたいんだ！今すぐに、」

「今は駄目だ。すぐに会談と署名式だ。そうだな」

グウェンダルはギュンターに問いかける。

「はい。我がフランシアも同盟に参加する事をアントワーヌ陛下が決断されました」

「そうだったのか、」

「早く支度をしろ」

「そんなの、いつもみたいにグウェンダルが、」

やって、と伝えようとした、有利の言葉をグウェンダルは遮る。

「同盟に参加するのは魔王であるお前に動かされた人間達が中心になっている。その者達に対する責任が、お前にはあるだろ」

グウェンダルはさっさと部屋から出て行ってしまう。

それを見ていた双子は笑いながら話す。

「ユーリ、グウェンだって心配してんだぜ？あれでも」

「ただ個人の気持ちより、役目の方を取っただけなの」

「あたくしも心配ですわ。コンラートお兄様の事が…」

「３人とも…。そうだね」

頷いた有利はアントワーヌと会談をするために正装する。

「これ程大規模な人間達の同盟締結は今まで無かった事です。それを実現しつつある陛下は立派な魔王陛下ですよ」

「ユーリは誰彼構わず愛想を振りまくへなちょこだからな。ま、それが良い結果に結びついている事は確かだが」

「ヴォルフラム、ありがとう」

ギュンターだけでなく、ヴォルフラムにも褒められた有利は嬉しそうになる。

「さ、お仕事お仕事。ウェラー卿の事は心配ないよ。後で会えるさ」

「うん」

こうして行われた会談は無事に終わり、有利はヴォルフラムを健、双子と庭を歩いていた。

「コンラッドの罪、どうなるんだろ？」

「難しいな。とにかく、コンラートが何も話さないので事情が分からない。全く、あいつもさっさと理由を話せばいいんだ。そうすれば兄上も手の打ちようがあるのに」

「まあまあ、ウェラー卿にも事情があるんだろうし、じっくり話し合えば分かり合える。落としの村健にかかれば、あっという間さ。あー、すいません。かつ丼とってもらえます？」

「それ前にやったよ」

「有利がね」

有利とアリアが呆れている時だった。

「猊下、双子」

「ヨザ」

話かかけてきたのはヨザックだった、

「やっぱりやりましたよー、猊下」

「そうか。そう来ると思っていたよ。案外頑固者だね、ウェラー卿って」

「ハア…、」

「ったく、あの馬鹿」

予想していた事に健だけでなく、双子も溜息をつきながら呆れるしかなかった。

「昔からそうですからねー。そういう隊長を持つと、部下は苦労するんスよ」

今一４人の会話が分かっていない有利は戸惑う。

「何？コンラッドがどうかしたの？」

「隊長は脱走しました」

「脱走！？」

「どういう事だ！？」

衝撃的言葉に有利とヴォルフラムは驚く。

「言葉の通り。部屋を抜け出して外へ」

「そんなバカな！一緒に眞魔国に帰るって、…そう言ったのに！」

「ユーリ…」

そして彼らは脱走したコンラートを追いかける事になった。