アーダルベルトの中では、ジュリアを殺したのはアリアだと思っているのだ。

今、目の前にその憎い者がいれば感情なんて消える。

「そんな事をしてジュリアが喜ぶとでも思っているのか？」

「！ 」

その言葉に一瞬怯んだが、すぐに睨む。

「…うるせぇ！お前は引っ込んでろ！！」

叫ぶとアーダルベルトの体から光が出る。

そのまま光を左手に集中させ地面に触れると、光は地面を辿っていきコンラートを攻撃した。

「法術！？」

法術によって地面がどんどん盛り上がり、コンラートを閉じ込める。

「コンラート、！？」

コンラートとは反対の方からアーダルベルトが攻撃してくる。

「っ！」

すぐに反応をして防御したが、体格の差がある為地面に弾き飛ばされた。

「きゃあ！」

「ほう…。さすが、魔王直属親衛軍の副隊長だな」

「…くっ」

弾き飛ばされ、地面に叩きつけられたアリアはすぐに立ち上がるが、すぐにアーダルベルトは攻撃を仕掛けてくる。

アリアはその攻撃を何とか防いでいる。

「アリア！！」

地面に閉じ込められたコンラートは何とか抜け出し２人の所へ走る。

「アリア！コンラッド！！」

有利は持っていたモルギフで布を切り自由になった。

「ユーリ！」

それに気づいたセルセが止めようとしたが、それよりも先に有利は２人の元へ走って行く。

「待て、ユーリ！ヨザ！早く開けろ！」

「開けろって、お前の術でなんとかならないのか！？」

「なんとかって言われてもな…っ！」

アイツの布衣術なら大丈夫なのにと、悔しそうな顔で有利達を見る。

「止めろ！」

「有利！？」

後ろから声がして振り返ると、そこには走ってくるのは有利がいたのだ。

アリアと同時にアーダルベルトも有利の存在に気づくと攻撃の方向を変えた。

「お前よりも、あの小僧の方が先だな！」

アリアとコンラートはアーダルベルトが有利に攻撃をしようとする事が分かった。

「やめて！！」

「止めろ！アーダルベルト！！」

「くたばれ！小僧ぉぉ！！」

剣を振り下ろそうとする。

だがアーダルベルトよりも先にアリアは、有利とアーダルベルトの間に走り有利を抱きしめる。

「布衣術『守衣（ｼｭｺﾛﾓ）』！」

「ジュリアを殺すつもりか！？ユーリの魂はジュリアのものだ！！」

「「！？」」

コンラートの口から出た真実。

それを聞いた瞬間、４人の間には静かになる。

「（ジュリアって、アーダルベルトの婚約者…、コンラッドの大切な人…、そしてアリアの事を命懸けで助けた人……。…ジュリアの魂…？）」

「…ジュリア、の…魂？」

信じられない…。

確かに有利と一緒にいると、なんとなく懐かしい感じはした。

「……あ、」

だが、だからと言って有利をジュリアの代わりにしてきたわけじゃない。

有利を守る為に抱きしめていた手を離し、アリアは哀しそうな顔で有利を見る。