「まだ信じられん」

「ですが、それしか考えられません」

超高速艇でシマロンへ向かっているグウェンダル達。

「コンラートの父上について、わたくしは何も存じませんが」

「わたしもだ。旅の剣士だったという事以外はな」

「もしその父上が箱の鍵となる一族の者なら、そしてその事を大シマロンが知ったら、」

ギュンターの考えにピリアーチェとグウェンダルは信じられなかった。

「まさか、」

「コンラートの腕が、箱の鍵だと？」

その頃の血盟城では。

「愚かな男共は出払いました！我らだけで血盟城を守り抜き、今こそ！女性の真の力を世に示すのです！皆！よいですね！」

『お――――！！』

「……さすが、アニシナ様です」

メイド達の先導をする彼女にリュイは苦笑するだけだった。



アリア達に有利が大シマロンに行ったという情報が入り、急いで船で向かっている。

「ヒッヒッフ――！ヒッヒッフ――！」

「そうだ。船を漕ぐ時は、その呼吸だ」

「…閣下、それは違います」

違う呼吸法にギーゼラは訂正していた。

「もう気にしない」

「ああ。言っても無駄だし」

双子は呆れながら海を見ていた。

「あ、閣下方、あれ…」

ダカスコスが指した方を見ると、そこには一隻の船が停留していたのだった。

着陸した彼女達は、すぐに一台の馬車を借りる。

そして有利達が行ったであろう道を走っていると、まだ新しくできた馬車と人の足跡がある。

「…まだ、新しいですね」

「うん。あっちだ。行くぞ！」

降りていたヴォルフラムはすぐに馬車に乗り込み、すぐに出発する。

「？」

「天気が、」

急に天気が悪くなってきている事にも双子は気づき、空を見上げていた。

「あそこか？」


ガタン！


「！？」

「な、」

「うっ」

その瞬間、地面が急に揺れだしたのだ。

「…くっ！何がどうなってんだ？いったい…」

地面が揺れている所為で前に進めなくなったアリア達はギュッと馬車の柱などを掴んでいた。

しばらくして揺れていた地面は落ち着いた。

「ﾊｱ、助かった…」

やっとの事で揺れから解放された事にダカスコスは安心したが、ヴォルフラムは何かに気づいたのか立ち上がる。

「ユーリだ…」

「ヴォル？」

「ユーリが止めたんだ…」

そう言うと馬車から降り、そのまま走り出す。

「ユーリ！」

「閣下！」

「ったく、しょうがないわね！」

ヴォルフラムを追いかけようとアリアも馬車から降りる。

「おい！アリア！！」

驚いたセルセはアリアを止めようとするが、彼女は走りながら振り返る。

「セルセはギーゼラ達をお願いね！」

「…お願いって…」

アリアの言葉に呆れるセルセだった。

「ヴォル！」

「アリア！？」

後ろから追いかけてくるアリアに驚くヴォルフラムに、彼女は呆れながら言う。

「…有利の事が心配なのは分かるけど、少しは自分の行動を考えなさい」

「………」

「…ま、気持ちは分かるからな。早く行きたいんでしょ？」

「…アリア、」

その言葉に驚きアリアをジッと見る。

それに気づいた彼女は苦笑しながら、有利の所へ走って行く。

だが辿り着いた場所は辺りを見回しても瓦礫だらけで、まともに歩くのも大変だった。

「有利、」

２人は有利を探していると、アリアはある事に気づく。

「有利！」

「！ アリア！」

今にも崖から落ちそうなっている有利に気づくと、すぐにアリア出し、ヴォルフラムもその後を追いかける。

片手だけで何とか落ちずに済んでいたが、捕まっていた部分が外れてしまい崖から落ちそうになった。



ガシッ



「？」

落ちそうになった有利は落ちなかった事に不思議に思い、見上げる。

自分を助けたのがアリアとヴォルフラムだと分かり驚く。

「やっと、捕まえた…」

「ヴォルフラム…アリア…、何でここに？」

「お前は浮気者だからな。世界中を追いかけられる様に発信機を付けてあるんだ。ほら、引き上げるぞ」

「大丈夫か？下手したらアリア達まで…」

有利が心配そうな顔をしていると、アリアが苦笑しながら話す。

「平気だってば」

「アリア？」

「一応、軍人なんだし。布衣術使うから…」

アリアがそう言うと、着用しているストールを片手で取り布衣術を使う。

「布衣術『擬似猛手』」

ストールが伸び有利の体を掴む。

そのまま有利を崖から持ち上げると、その勢いのまま有利はアリアとヴォルフラムの上に倒れこむ。

「…いっつ～…。ごめん、アリア、ヴォルフラム」

「謝らなくて…、！」

「…有利？」

「どうした？」

アリアとヴォルフラムが心配そうに有利を見る。

「！」

「え、」

そして有利が握っている物に気づく。