アリア達は無事に眞魔国に着いた。

「やっと、着いた…っもう二度と船なんかに、乗らないぞ…」

相変わらずの船酔いでヴォルフラムは倒れる。

「そう言っても絶対に乗るんだろうな、あいつは」

「そうでしょうね。有利が行く先には絶対についてくると思うし」

ヴォルフラムの様子を見ていた双子は呆れるだけった。

有利達が無事に港に着陸した時、同じ様にヒューブも船から無事に降ろされたのだった。

「ヒューブ…」

目を覚まさないヒューブにグレタは心配していると、しんな彼女の肩に有利は触れる。

「大丈夫。城には優秀なお医者さんがいるから」

「…ヒューブ、死なない？」

「ああ。きっとすぐに元気になるよ」

２人のやりとりを見ていたヴォルフラムは、２人から視線を逸らし双子とコンラートを見る。

だが３人は何時もと変わらない様子だった。

「…ユーリ、迎えが来たみたいだぞ」

「先に伝令を飛ばしておいたんです」

「「？」」

有利とグレタは不思議そうに振り返ると、迎えに来ていたのはグウェンダルだった。

「あ、グウェンダル！わざわざ来てくれたの？」

彼が迎えに来てくれた事に有利は大きく手を振る。

だがグレタは何か恐怖を感じたのか、アリアの所まで歩いていき後ろに隠れる。

「大丈夫。顔は怖いけど、優しいから」

そう言いながらグレタの頭を撫でる。

馬から降りるとグウェンダルは有利達に見る事もせず、真っ直ぐヒューブの所まで歩いて行く。

「グウェンダル？」

すると剣を鞘から抜き、ヒューブの体すれすれのところで止める。

「何してんだよ！相手は怪我人だぞ！？」

「…ゲーゲンヒューバー。生きてこの国の土を踏めるとは思ってはいまい。貴様はそれだけの罪を犯したのだ」

「ダメだって！子供の前でなんて事すんの！それに、コイツは俺が助けて連れて来たんだ！！それを勝手にどうこうしようなんて、認めないからな！！」

有利がそう言うと、グウェンダルは有利を睨む。

「な、なんだよ。文句わるわけ？」

「グウェンダル、それが陛下のご意思だ」

「…くっ！」

魔王陛下の意志、と言われてしまったグウェンダルはそれ以上何も言えなくなってしまい、苦虫を嚙み潰したような表情になる。

「……城に運べ！」

「「はっ！」」

こうしてヒューブは城へ運ばれた。


「陛下！」

「？」

城に到着すると、ギュンターが迎えに出て来た。

「忘れてた。そう言えば黙って出て来たんだったよな、」

その事を思い出した有利はすぐにギュンターの側に駆け寄る。

「あのね、ギュンター！これにはふっかーいワケがあって！とにかく落ち着いて！

「ああ、陛下。よくぞご無事でお戻りくださいました。このギュンター、再びお会い出来る日を心待ちしておりました」

「…へ？？怒っていないの？しかも何時もみたいに泣いてねーし、」

いつもと違うギュンターの様子に有利は驚く。

「怒りなど、俗世にまみれた感情など、わたくしの心には存在しません。陛下、わたくしは悟ったのです」

「え？何を？」

いつもと違うギュンターに有利の頭には？が浮かんでいる。

「愛とは、全てを受け入れる事。愛するお方の望む通りに自分自身から変わる事」

「あのー、ギュンター？」

「陛下にお会いできない日々も、眞王陛下がお与えになった大いなる愛の試練！わたくしは、それを乗り越えたのです！」

「まぶしいよ、ギュンター！」

ギュンターの背後のはスモークと光が出ている事に有利はまぶしそうになるが、不思議に思った双子とコンラートはギュンターの近くまで寄ると…。

「…何をしているんだ？ダカスコス？」

「ホント何してるのよ」

「意味わかんねーし」

そこには一生懸命に煙を炊いているダカスコスがいた。

「すいません、閣下のご命令で、」

「「「……………」」」

さすがのコンラートと双子も呆れながらチラッとギュンターを見ると、彼は悔しそうな声を出す。

「ああ、もう！だから目立たぬようにと言ったではありませんか！！これでは、わたくしの過酷な修業体験が水の泡です！！」

「……全然、悟ってねーじゃん…」

「ああ。悟る気ないだろ」

「やっぱり馬鹿なのよ」

双子の毒舌トークが発しられた。

「ヒューブ！」

彼の名前を呼ぶ声が聞こえると、血盟城から二コラがヒューブの元へ駆け寄る。

「ごめん、二コラ。実は、」

有利は状況を話そうとしたが、ニコラはそれを遮るように話す。

「いいの。こうしてまた会えただけで…」

「ニコラ…」

「揺らさないように運んで」

「「はっ」」

ギーゼラに命令された兵士達はすぐに彼を城の中へと運んで行った。

「ギーゼラさん、頼むよ。二コラとグレタの為にも」

頼まれたギーゼラは少し躊躇いながらコンラートとアリアを見る。

「？」

それに気づいた有利は不思議そうにしていたが、ギーゼラはすぐに笑顔になる。

「お任せください、陛下。全力を尽くします」

そう言い残すとギーゼラも中へ入って行く。

「……」

そして有利は有利で他の者達の雰囲気が違う事に気が付く。

双子やコンラート、ギュンター達を見ても深刻な顔をしていた。