ヒスクライフと合流したアリア達は建物の中へと入り、有利達を探していた。

「奴らだ！」

「？」

「何だ、あいつら」

何人かの男達が誰かを追いかけているのに気づくと、コンラートとヴォルフラムはすぐにその男達を気絶させた。

「陛下、大丈夫ですか？」

「まったく、なんだってこんな怪しげな所に！」

アリア達の姿を見てホッとしたのか、有利はその場に座り込む。

「コンラッド、双子、ヴォルフラム…」

コンラートの隣からアリアはグレタの事を聞く。

「グレタ、平気？」

「アリア～！」

グレタをアリアのところに走って行き抱きつく。

「…大丈夫そうね？」

「うん」

その光景を見た後、有利はアリア達の後ろにいる人物を見る。

「お久しぶりでございます。ミツザエモン殿」

「ピッカリ君！…じゃなかった、ヒスクライフさん！」

久しぶりに会った彼に有利は驚いていた。

そして彼らかなぜここにいるのか詳しい話を聞く事にしたのだ。

「わたしは、この遊技場の工業主に話がありましてな」

「工業主って…」

「ルイ・ビロン。この西地区の全所有者から、イカサマ賭博で権利書を取り上げた男です。
彼は倫理にもとる商いを行っているらしく、南地区の所有者として黙ってはいられませんからな」

「丁度良かった。おれもソイツに言ってやりたい事があるんだよね！」

「ユーリ！事情は後でしっかり説明してもらうからな！」

「分かってるって。って、そういえば、コンラッド達はどうしてここに？」

今更ながら、コンラート達がこの建物にいる事に不思議に思ったのだ。

「もちろん、夜遊びの陛下をお迎えにあがったのですが」

「ハハハ、」

「その途中、ある男に出会いましてね。その男をつけてここへ…」

「では、参りましょう」

そう言ってヒスクライフは階段を上がり始めると、有利達も彼の後を追いかけて行く。

「ガツンと言ってやるぞ！」

「グレタもガツンとするよ！」

「おお！一緒にな！」

知らない間に仲良くなっている有利とグレタの様子を見たヴォルフラム。

「…随分仲良くなったものだ」

「焼きもち？」

「な、違う！」

アリアに尋ねられると、彼は顔を赤くしながらすぐに否定した。

「失礼します」

そうしてヒスクライフは階段の先に設置されている扉を開き、部屋の中へ入って行く。

そしてその部屋の中の先にはルイ・ビロンが座っていた。

「ビロンさん、今夜こそ決着をつけさせてもらおう」

「おや？また貴方ですか？例の件でしたらいくらお話ししても無駄ですよ。さっぱり、ぽん！ですな」

「…なんで伊勢海老？」

「…知らないわよ」

その時ヴォルフラムは何かに気づいた。

「ウェラー卿」

「分かっている」

「あれか？お前が言ってた男って」

「ああ」

ヴォルフラムは壁に寄りかかっている１人の男をキッと睨んでいた。

「貴様！」

男の挑発に乗ってしまったのか、ヴォルフラムは剣を構え男に攻撃をしかけたのだ。

「やめるんだ！ヴォルフラム！」

男も攻撃をしようとした瞬間、一瞬の隙をついて有利の方へと攻撃をしかけた。

「うわ――！！！」

「有利！」

それに気づいたアリアはすぐに有利と男の間に入り、彼を守ろうとする。

「アリア！！」

だがそれと同時にコンラートが剣で防いだのだ。

「コンラート、」

アリアは驚いた表情で、自分と有利を庇っているコンラートを見て呟いた。

それを見てからセルセは有利達に近づく。

「大丈夫か？ユーリ」

「ああ、なんとか。…アリアも庇ってくれたし、」

大丈夫そうな有利を見て双子は安心した。

「貴様…！」

「その小僧と女、よほど大事と見える」

「っ！」

するとヴォルフラムは剣を鞘から抜こうとした。

「手を出すな！ヴォルフラム！」

「！」

だがすぐにコンラートに止めらてしまった。

「…本気を出せ…。わたしの息の根を止める事が出来ねば、その小僧と女がどうなるか…」

一瞬の隙をつき、仮面の男はまもう一度有利達の所へ走ってくる。

「うわっ！」

「アリア、来るぞ…」

「…分かってるってば」

アリアはストールを肩から外し両手で持ち構え、隣ではセルセも針を操る為の珠を耳から外していた。

だが男が剣を振り下ろす前に、コンラートが男へ攻撃をしかけ気絶させたのだ。

「…死んじゃったの？」

「いや、まだ…」

「……ヒューブ」

「え？」

「ヒューブ！」

するとグレタは仮面が外れた為、男の顔を見ると男の側へ駆け寄る。

「間違えありません。剣を交えれば分かります。その男は、グリーセラ卿ゲーゲンヒューバーです」

「…この男が…あの…ゲーゲンヒューバー？」

初めてゲーゲンヒューバーに会った有利は戸惑いを隠せないまま、ジッと気絶している彼を見下ろしていた。