ー双黒の魔王ー


セルセとコンラートは新しい陛下をギュンターがいる町の家へと連れて行く。

陛下は馬に乗れない為、コンラートと相乗りでもある。

家の庭に着くと、ギュンターが家から出てきてコンラート達に近づく。

「ああ、陛下…」

「陛下？…陛下って俺？」

なぜ自分の事を陛下と呼ぶのか分からない双黒、渋谷有利は不思議に思っていた。

すると屋根の上に先ほどまで有利を掴んでいた骨飛族が座るところを見た有利は小さく驚く。

「あ、もう１匹いる！もしかして、このテーマパークのマスコット？」

一人で何かを話している彼にコンラートは気にせずに話しかける。

「陛下、ゆっくり降りてください」

「うん。よっこらしょっ」

有利がコンラートの馬から降りると、ギュンターは有利の前に膝まつく。

「ああ、陛下。ご無事で何よりです。
このフォンクライスト、お会いできるこの日をどんなに待ち望んでいたか…」

「は、はは…」

ギュンターの言葉に有利は苦笑いをするが、笑った時にお尻の痛みを思い出す。

「いってて！」

「陛下？何処かお怪我でも？」

「お尻が痛いんですよね？陛下。乗馬が初めてだったから」

それを聞いたギュンターは驚く。

「乗馬が初めて！？最近の小等教育は乗馬の訓練もしないのですか
どうして眞王はそのような世界に陛下を、」

信じられないような口調で話すギュンターにセルセは呆れながら話す。

「眞王陛下がそうしろって言ったんだから、しょうがないだろ？」

「それよりギュンター、フォングランツに先を越される所だった」

コンラートの話にギュンターのは更に驚くしかなかった。

「アーダルベルトに！？陛下！何もされませんでしたか？」

「あ～、石投げられて囲まれそうになったけど、」

「なんてことを、」

驚いていたギュンターは、ある事に気づく。

「陛下、何故こちらの言葉をお話されているのですか？」

「やだな～、皆さんの日本語はとてもお上手ですよ？お国は？」

ギュンターに聞かれた有利は笑顔で普通に答えた。

「お国は…、ここですよ」

「日本生まれ？」

「陛下、ここは日本じゃないんだ」

「はは、ほ～らね。やっぱり日本生まれじゃない…、はい？日本じゃない？じゃあ、何で日本語喋ってるの？」

一人で驚いている有利に、コンラートは普段と変わらずに話しだす。

「喋ってないよ」

「え？」

「日本どころか、貴方が生まれ育った世界でもない」

「？ どういう事？…コンラート…」

どこか言い難そうにしていた有利にコンラートは気づく。

「ああ、耳が英語に慣れているならコンラッドの方が発音しやすいでしょう。知人の中にはそう呼ぶ人もいます」

有利はジッとコンラートを見る。

「…おれ…、アンタとどっかで会ってるかな？」

「……いや、」

違うと答えた彼の表情がそう言ってない事に気づき、不思議に思うセルセだった。