捕らわれの身
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「…ん?」
とある部屋のソファで寝ていたアリアは目を覚まし、周りを見渡す。
「確か、」
いったい何があったのかを思い出していた時だった。
「いつっ!」
先程、頭を殴られた場所が痛み出し、咄嗟に傷の所へ触った。
ぬるっ
手に湿った感触があり、掌を見ると血がついていたのだ。
「ったく、手当てをするなら、しっかりやりなさいよ。これじゃ意味がないじゃない」
頭には一応包帯が巻いてあるのに、手当てが不十分な事にアリアは呆れるだけだった。
そして自分が座っていたソファから降り、近くにあるテーブルクロスを適当な大きさと長さに破き、自分の怪我を手当てしたのだ。
「さてと」
部屋の中から窓の外の景色を見ると、ここがどこだか理解する。
「…シュトッフェルの城、か」
小さく溜め息を吐いたが、すぐに扉に近づく。
開けようとするがはやはり鍵が閉まっている状態だったのだ。
だがアリアにとって、出ようと思えば簡単に出られる。
「ドアをぶち壊しちゃマズイよね?となれば…」
背中にある小瓶を1本取り出し、中に入っている粉をドアノブに振りまく。
シュウウゥゥ…
粉が降りかかったドアノブはどんどん溶けていき、扉の意味を無くし簡単に開いた。
「これでいいわよね。さ、脱出するか」
そう言いながら部屋から出て行き、兵に見つからないように脱出しようとし始める。
すると近くの部屋から聞き覚えがある声が聞こえ、不思議に思いながらその部屋での内容を聞く。
「では陛下は、彼らの何を知っておられるのですか?
「え?」
「彼らの闇の部分を、封印された歴史を。陛下はご存知なのですか?」
「…あ、そりゃ、知らない事ばっかりだよ…」
声の主は有利だけでなく、シュトッフェルの右腕と言っても過言ではない、レイヴンだった。
「でも、知らなくたって、ここで分かるんだ!あいつらは信用できる!絶対におれを裏切らない!」
「有利…」
有利の言葉を聞いたアリアはどこか嬉しそうに微笑む。
そしてすぐに真剣な表情になって部屋に入る。
「いい加減にしてよ、シュトッフェル」
突然、第三者の声が聞こえた事に有利だけでなく、部屋の中にいたシュトッフェルとレイヴンも驚いた表情で振り返る。
「……アスタルテ卿アリアか…」
「アリア!」
アリアの存在に有利は笑顔になる。
「ったく。ペラペラと余計な事話して」
呆れている彼女に、シュトッフェルは指をさしながら話し出す。
「だが事実であろう。貴様達、特にお前達双子は、たかが親衛軍の隊長副隊長だけの立場で、陛下の側から離れようとしはしないではないか!」
「……」
「そもそも、お前達が栄誉ある魔王直属親衛軍の隊長だけでなく、副隊長にもなるなどど…!」
「隊長副隊長になったのは私達の努力の結果よ。アンタみたいに、ツェリ様のおかげでなったんじゃない」
「…っ!」
図星だったのか、シュトッフェルは何も言えなくなる。
するとアリアは有利を見る。
「…さっき、レイヴンが言っていた事は否定はしない」
「……」
「確かに私達は有利にまだ話していない事が沢山ある。あの時の戦争の事も…。
…それでも私達は、有利の側にいて、守ると決めたの。
もう2度と、…あんな戦争を起こさないようにと」
「アリア…」
改めて聞くアリアの考えに、有利も真剣な表情になる。
そして彼女は有利からシュトッフェルとレイヴンの方を見る。
「それに、なんで私もここに連れてきたのか不思議だったけど、血盟城に侵入した部下から聞いたんでしょうね。ディオネの術の事を」
「ディオネの術?」
アリアの口から『ディオネの術』という言葉に有利は首を傾げるだけだった。
だが2人は図星だったのか、ジッとアリアを見る。
「魔術とは違う術、興味はある」
「でしょうね。確かにこの眞魔国で、あの術を使えるのは私とアリアだけ。でも、私達がそれを教えると思う?
私達が20年前の事、許してると思ってるの?」
一瞬殺気を出すアリアに有利は恐怖を感じ、シュトッフェル達も強張り、部屋が沈黙になった。
だが、その沈黙を破ったのはレイヴンだった。
「閣下、陛下とアスタルテ卿はお疲れの様子です。ここは」
「う、うむ…。陛下、これにて失礼」
レイヴンに言われたシュトッフェルは部屋から出て行く。
もちろんレイヴンも部屋から出て行こうとしたが、ふと有利を見る。
「どちらについた方が得か。…後でご理解頂けるかと思います」
「なっ!」
ソファから降りると有利はドアを開けようとする。
「おい!待て!」
だが完全に鍵が閉まっていた。
「諦めたら?鍵が閉まってるんでしょう?」
「何でそんなに落ち着いてるんだよ?」
「騒いでもしょうがないって分かってるから」
「…た、確かに…」
驚いている有利とは正反対にアリアは落ち着いた雰囲気で、有利が先程まで座っていたソファに座る。
一応納得した有利は、どうしても気になる事があった。
「……アリア、」
「何?」
「さっきの言ってた、ディオネの術って何だ?」
「……」
有利の質問にアリアは何て答えようか一瞬迷ったが、諦めたのか素直に話す事にしたのだ。
「人間の国のある一族が数千年前から使っていた術。
しかも、その一族だけしか使えないし、代々一族だけで伝えられてきたもの。その為に他の国にとっては、1番見慣れていない術でもあるのよ」
「へ――」
「もちろんこの眞魔国でも、その術を使えるのは私とセルセだけ。だからシュトッフェル達は興味があるんでしょうね」
「人間の国の術なのに、どうして双子は使えるんだ?」
その問いかけに、彼女はどこか哀しげに微笑む。
「……ディオネは、…私達の母様の実家なのよ」
「え?」
「私達の母様は人間で、しかもディオネの後継者でもあったの。
だから私達も知ってて当然なのよ。あの一族の者の血を受け継いでるから…」
「そうだったんだ…」
するとアリアは苦笑する。
「それに、きっと助けに来てくれるよ。あの男がね」
「…あの男?」
いったい誰の事だか分からない有利は首を傾げるだけだった。
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(re:2015/10/30,2024/07/03)
とある部屋のソファで寝ていたアリアは目を覚まし、周りを見渡す。
「確か、」
いったい何があったのかを思い出していた時だった。
「いつっ!」
先程、頭を殴られた場所が痛み出し、咄嗟に傷の所へ触った。
ぬるっ
手に湿った感触があり、掌を見ると血がついていたのだ。
「ったく、手当てをするなら、しっかりやりなさいよ。これじゃ意味がないじゃない」
頭には一応包帯が巻いてあるのに、手当てが不十分な事にアリアは呆れるだけだった。
そして自分が座っていたソファから降り、近くにあるテーブルクロスを適当な大きさと長さに破き、自分の怪我を手当てしたのだ。
「さてと」
部屋の中から窓の外の景色を見ると、ここがどこだか理解する。
「…シュトッフェルの城、か」
小さく溜め息を吐いたが、すぐに扉に近づく。
開けようとするがはやはり鍵が閉まっている状態だったのだ。
だがアリアにとって、出ようと思えば簡単に出られる。
「ドアをぶち壊しちゃマズイよね?となれば…」
背中にある小瓶を1本取り出し、中に入っている粉をドアノブに振りまく。
シュウウゥゥ…
粉が降りかかったドアノブはどんどん溶けていき、扉の意味を無くし簡単に開いた。
「これでいいわよね。さ、脱出するか」
そう言いながら部屋から出て行き、兵に見つからないように脱出しようとし始める。
すると近くの部屋から聞き覚えがある声が聞こえ、不思議に思いながらその部屋での内容を聞く。
「では陛下は、彼らの何を知っておられるのですか?
「え?」
「彼らの闇の部分を、封印された歴史を。陛下はご存知なのですか?」
「…あ、そりゃ、知らない事ばっかりだよ…」
声の主は有利だけでなく、シュトッフェルの右腕と言っても過言ではない、レイヴンだった。
「でも、知らなくたって、ここで分かるんだ!あいつらは信用できる!絶対におれを裏切らない!」
「有利…」
有利の言葉を聞いたアリアはどこか嬉しそうに微笑む。
そしてすぐに真剣な表情になって部屋に入る。
「いい加減にしてよ、シュトッフェル」
突然、第三者の声が聞こえた事に有利だけでなく、部屋の中にいたシュトッフェルとレイヴンも驚いた表情で振り返る。
「……アスタルテ卿アリアか…」
「アリア!」
アリアの存在に有利は笑顔になる。
「ったく。ペラペラと余計な事話して」
呆れている彼女に、シュトッフェルは指をさしながら話し出す。
「だが事実であろう。貴様達、特にお前達双子は、たかが親衛軍の隊長副隊長だけの立場で、陛下の側から離れようとしはしないではないか!」
「……」
「そもそも、お前達が栄誉ある魔王直属親衛軍の隊長だけでなく、副隊長にもなるなどど…!」
「隊長副隊長になったのは私達の努力の結果よ。アンタみたいに、ツェリ様のおかげでなったんじゃない」
「…っ!」
図星だったのか、シュトッフェルは何も言えなくなる。
するとアリアは有利を見る。
「…さっき、レイヴンが言っていた事は否定はしない」
「……」
「確かに私達は有利にまだ話していない事が沢山ある。あの時の戦争の事も…。
…それでも私達は、有利の側にいて、守ると決めたの。
もう2度と、…あんな戦争を起こさないようにと」
「アリア…」
改めて聞くアリアの考えに、有利も真剣な表情になる。
そして彼女は有利からシュトッフェルとレイヴンの方を見る。
「それに、なんで私もここに連れてきたのか不思議だったけど、血盟城に侵入した部下から聞いたんでしょうね。ディオネの術の事を」
「ディオネの術?」
アリアの口から『ディオネの術』という言葉に有利は首を傾げるだけだった。
だが2人は図星だったのか、ジッとアリアを見る。
「魔術とは違う術、興味はある」
「でしょうね。確かにこの眞魔国で、あの術を使えるのは私とアリアだけ。でも、私達がそれを教えると思う?
私達が20年前の事、許してると思ってるの?」
一瞬殺気を出すアリアに有利は恐怖を感じ、シュトッフェル達も強張り、部屋が沈黙になった。
だが、その沈黙を破ったのはレイヴンだった。
「閣下、陛下とアスタルテ卿はお疲れの様子です。ここは」
「う、うむ…。陛下、これにて失礼」
レイヴンに言われたシュトッフェルは部屋から出て行く。
もちろんレイヴンも部屋から出て行こうとしたが、ふと有利を見る。
「どちらについた方が得か。…後でご理解頂けるかと思います」
「なっ!」
ソファから降りると有利はドアを開けようとする。
「おい!待て!」
だが完全に鍵が閉まっていた。
「諦めたら?鍵が閉まってるんでしょう?」
「何でそんなに落ち着いてるんだよ?」
「騒いでもしょうがないって分かってるから」
「…た、確かに…」
驚いている有利とは正反対にアリアは落ち着いた雰囲気で、有利が先程まで座っていたソファに座る。
一応納得した有利は、どうしても気になる事があった。
「……アリア、」
「何?」
「さっきの言ってた、ディオネの術って何だ?」
「……」
有利の質問にアリアは何て答えようか一瞬迷ったが、諦めたのか素直に話す事にしたのだ。
「人間の国のある一族が数千年前から使っていた術。
しかも、その一族だけしか使えないし、代々一族だけで伝えられてきたもの。その為に他の国にとっては、1番見慣れていない術でもあるのよ」
「へ――」
「もちろんこの眞魔国でも、その術を使えるのは私とセルセだけ。だからシュトッフェル達は興味があるんでしょうね」
「人間の国の術なのに、どうして双子は使えるんだ?」
その問いかけに、彼女はどこか哀しげに微笑む。
「……ディオネは、…私達の母様の実家なのよ」
「え?」
「私達の母様は人間で、しかもディオネの後継者でもあったの。
だから私達も知ってて当然なのよ。あの一族の者の血を受け継いでるから…」
「そうだったんだ…」
するとアリアは苦笑する。
「それに、きっと助けに来てくれるよ。あの男がね」
「…あの男?」
いったい誰の事だか分からない有利は首を傾げるだけだった。
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(re:2015/10/30,2024/07/03)