魔剣発動
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翌朝、有利はアリアと共にモルギフがいる洞窟へと赴いていた。
「私はここで待っててあげるから。頑張ってね、有利」
「…ああ」
頷いた彼は先日使用したボートに乗り、洞窟の中へと進んで行ったのだった。
すると少し経ってからコンラートも洞窟へと赴いており、アリアの側へ近づく。
「陛下は、洞窟の中か?」
コンラートの問いかけに頷く。
「そう、一人で行ったよ。少しは魔王らしくなったんじゃない?」
「…そうだな」
しばらく沈黙が続いた。
「「………」」
耐えられなかったアリアは自分から話を持ちかけた。
「……言っとくけど、眞魔国を出た理由は話さないからね。話す必要もないでしょう」
「…セルセにも言わないつもりか?」
「言わない」
今だ洞窟の方を見ている彼女にコンラートはどこか哀しげな表情になる。
「……自殺未遂した理由もか…?」
「! 何で!?」
なぜアリアが自殺しようとした事をコンラートが知っているのか驚いた。
アリアが自殺しようとした事を知ってるのは、セルセ、ギーゼラ、ピリアーチェ、紅子だけ。
「俺が戻ってきてからセルセから聞いたよ。
セルセは俺に言うつもりは無かったらしいが、知っていた方がいいって事で教えてくれたんだよ」
「………そう」
「自殺しようとしたのは俺の所為だろう、」
「違う、コンラートの所為じゃない」
アリアはすぐに反対をした。
「(…セルセの馬鹿)」
「本当にか?俺があの時にお前を責めたから…、」
「……違う。コンラートが気にする事じゃない。私は誰かを責めるつもりは無いし、コンラートが責任を感じる事じゃない」
「……アリア」
「だから気にしないで」
コンラートは何か言いたそうだったが、丁度有利が戻って来た。
「おかえり、有利」
「見てくれよ、アリア、コンラート!」
有利は嬉しそうに洞窟の中から手に入れてきたモルギフを2人に見せたのだ。
無事に手に入れる事が出来た事に2人も安心し、コンラートはすぐに有利の側に寄る。
そして有利とコンラートが話している姿を見たアリアはどこかホッとしたのだ。
「(あのままコンラートと話してたら、私自身何を言い出すかわからなかった…。ナイスタイミングで有利が戻ってきてくれて良かった)」
こうしてモルギフを手に入れた有利達は宿へと戻って行ったのだった。
「魔剣モルギフは人間の命を吸収して力をとなす。よって、発動するには勢力補給の必要がある」
こうしてアリア達はモルギフの補給の為、町にある病院へ行ったのだ。
さっそく病室には今にも亡くなりそうな方がおり、有利とヴォルフラムがモルギフを持って患者の所に行く。
双子とコンラート、ヨザックはドアと所で待っている。
有利が患者にモルギフを近づけると…。
「おお――!何と神々しい!!」
「「!!」」
ヴォルフラムを見た患者は、みるみる元気になっていった。
他の患者にも同じようにモルギフを近づけていったのだが、ヴォルフラムを見た患者全てが元気となっていったのである。
「…さすが、ツェリ様の子どもね」
「…同感だな、俺もそう思う…」
「金髪という点で言うならセルセもこうなりそうだよね」
「そうか?」
結局別の作戦を考える事となり、アリア達は病院を出て近くの休憩場で休んでいた。
そこで次の作戦を考えている。
「ハァ…。どうしてヴァン・ダー・ヴィーアの病院は回復率が異様に高いんだろ?…ああ、いや、患者のご家族にとっては良い事なんだけど」
「ギュンターの資料には、確かに人間の命を吸収させないと、この魔剣は発動しないと書いてあるんだが…」
テーブルの真ん中にはモルギフが置いてある。
「人間の命ったってどうやって吸わせりゃいんだ?第一、患者は皆死ぬどころかピンピンしてたじゃんか」
「手っ取り早く数を揃えるなら…、村の焼き討ちかな?」
「ヨザック!陛下がそんな恐ろしい事をなさる訳ないだろ?…何とか、1人か2人…」
「コンラートまでそんな事言ってどうすんだよ…」
2人の会話に呆れるしかない。
「(コイツは何も言わないし…、)」
何も言わないアリアにセルセはまた怖い感じがしていたのだ。
ヨザックとコンラートの会話を聞いた有利も呆れる。
「オイ!お前ら!大概にしろよ!何人だろうと、罪の無い人の命を奪うなんて出来る訳ないっしょ!」
「つまり、作戦として問題があったんじゃないのか?」
「私もそう思うけど?」
「俺もそう思う」
ヴォルフラムの考えに双子は同意をすると、コンラートはその場から立ち上がる。
「ジッとしてても仕方がない。俺は何か別の方法を探ってくる」
「俺も行くぞ、コンラート」
「私も行く」
そう言って俺達は出かけようとしたら、アリアがヨザックに小さい声で話しかける。
「ヨザ、変な事しちゃ駄目よ?」
ニッコリ微笑むアリアにヨザックは青ざめる。
「おお…」
微笑んだアリアとコンラートの後を追う。
先程のアリアの笑顔が何故か怖く感じたコンラートは話しかける。
「…アリア、怒っているのか?」
問いかけにアリアが笑顔で否定する。
「まさかvvv」
「(…絶対に嘘だ。結構怒ってる)」
そう感じたセルセは溜息をしながらアリアに言う。
「嘘だろ?この馬鹿。何かには怒ってたんだろ?」
「…怒ってるというか、ヨザが何かやる気がしたからね」
「…何かをやる、か」
セルセは確かにとどこか納得した様子だったが、アリアは呆れながら話を続ける。
「…巡視船と、昨夜の3人の会話。あれを聞いてれば誰だってそう思うわよ」
「…巡視船と昨夜の会話?…って聞いてたのか?」
まさかアリアが話しを聞いているとは思わなかった。
「巡視船での話しは聞くつもり無かったわよ。…でも、昨夜の話は完全に盗み聞きしちゃった」
コンラートは少し怒った口調で聞き直す。
「何で、盗み聞きなんてしたんだ?」
「…言っとくけど、盗み聞きが目的じゃないからね?
ヴォルの薬が作り終わったから、部屋に入ろうとしたら3人が深刻な話をしてるんだもん。
入れずにいたら、そのまま話を聞いちゃったってわけ」
分かった?と2人に促しただけだった。
そして。
「………居ないけど?」
「何処に行ったんだ?」
「知らないわよ。絶対にヨザが何かやったんじゃないの?」
3人が休憩場に戻った時には有利達はすでに居なかった。
「セルセ、アリア、街の方に行ってみよう!」
コンラートの提案に双子は同意すると、すぐに町へと辿り着いたが、その時すでに町全体が騒がしかったのだ。
「…何でこんなに騒がしいんだ?」
「あれ!」
アリアがコロシアムの方を指差すと、そこには炎でできた巨大な竜巻が出ていたのだ。
急いでコロシアムに到着した時には、戦闘場にいる有利の手にはモルギフが暴走していた。
「まさか暴走してんのってモルギフの方か?」
「…私は有利がまた魔王になって暴れてるのかと思ってた」
「…俺もそう思ってた」
アリアの言葉にセルセも苦笑しながら同意するだけだった。
「ユーリ!」
「あ!コンラッド!」
すぐにコンラートは有利の元へ近づこうとしたが、今だ止まらないモルギフの力に吹き飛ばされてしまった。
その様子を見たアリアはすぐにコンラートの側に駆け寄る。
「大丈夫?コンラート」
「…ああ」
すると有利は何かを感じ取ったらしい。
モルギフをしっかりと構えると言い出した。
「“私の名を呼べば出来る限りの事をしよう。私の名は、ウイレム・デュソイエ・イーライド・モルギフ!”吐くならエチケット袋の中にしろーッ!!」
有利がそう叫ぶと魔剣モルギフは無事に止まったのだ。
「…止まった、の?」
「そうみたいだな」
先程の騒がしさとは嘘みたいに静かになった。
「……ハァ、助かったー…」
何とか落ち着いた事に有利はホッとするだけだった。
すると双子とコンラートが自分に近づいてくるのが分かり、有利は3人を見る。
「大丈夫か、コンラッド、双子」
「ええ、大丈夫」
「それにしても、いったいどんな魔術を使ったんですか?」
「話は後で。とりあえずリックを連れて」
「はい」
有利に頼まれたコンラートはすぐにリックと呼ばれる男の子の方に走って行き、双子は有利の元へ寄る。
「有利、大丈夫?」
「アリア、セルセ。ああ、うん、何とか。…ん?」
「どうしたんだ?ユーリ」
何かに気づいた有利は席にいる一人の老婆を見つけたのだ。
「コンラッド、お金。お金持ってる?」
「え?」
「ユーリ?」
コンラートからお金を受け取った有利は、老婆が立っている場所へ近づく。
「あの、奥さん!」
「!?」
「これで、足りるかどうか分からないけど、」
そう言ってお金を渡そうとした時だった。
「近寄らないでおくれ!」
「え?あ、」
近寄るなと言われてしまい有利は驚くが、老婆はどんどん怒鳴っていく。
「誰が魔族の金なんか!魔剣なんて持ち込んで私達を、人間を滅ぼしに来たんだね!!」
そう言われ、有利はそれ以上何も言えなくなってしまった。
「ユーリ、急ごう。ヨザック達が脱出の準備をして待っているはずだ」
コンラートにそう言われると有利はその場にお金が入った袋を地面に置く。
「このお金で息子さんの病気、治しなよ」
「魔族の金なんかで医者に行ったら、息子が呪われる」
コンラートと双子はその老婆を見ず、有利に微笑みながら話しかける。
「俺の父親は、魔族の女との間に子までつくったけど」
「俺らの母親も。…魔族の男性と恋に落ちて、子どもをつくったけどな」
「呪われた?」
「呪われるわけないでしょ」
「いや、89まで気ままに生きたよ」
「俺らの母親も生きてたと思うよ」
そう言われ有利は小さく笑うと、アリア達と共に走りながらコロシアムから脱出した。
「私はここで待っててあげるから。頑張ってね、有利」
「…ああ」
頷いた彼は先日使用したボートに乗り、洞窟の中へと進んで行ったのだった。
すると少し経ってからコンラートも洞窟へと赴いており、アリアの側へ近づく。
「陛下は、洞窟の中か?」
コンラートの問いかけに頷く。
「そう、一人で行ったよ。少しは魔王らしくなったんじゃない?」
「…そうだな」
しばらく沈黙が続いた。
「「………」」
耐えられなかったアリアは自分から話を持ちかけた。
「……言っとくけど、眞魔国を出た理由は話さないからね。話す必要もないでしょう」
「…セルセにも言わないつもりか?」
「言わない」
今だ洞窟の方を見ている彼女にコンラートはどこか哀しげな表情になる。
「……自殺未遂した理由もか…?」
「! 何で!?」
なぜアリアが自殺しようとした事をコンラートが知っているのか驚いた。
アリアが自殺しようとした事を知ってるのは、セルセ、ギーゼラ、ピリアーチェ、紅子だけ。
「俺が戻ってきてからセルセから聞いたよ。
セルセは俺に言うつもりは無かったらしいが、知っていた方がいいって事で教えてくれたんだよ」
「………そう」
「自殺しようとしたのは俺の所為だろう、」
「違う、コンラートの所為じゃない」
アリアはすぐに反対をした。
「(…セルセの馬鹿)」
「本当にか?俺があの時にお前を責めたから…、」
「……違う。コンラートが気にする事じゃない。私は誰かを責めるつもりは無いし、コンラートが責任を感じる事じゃない」
「……アリア」
「だから気にしないで」
コンラートは何か言いたそうだったが、丁度有利が戻って来た。
「おかえり、有利」
「見てくれよ、アリア、コンラート!」
有利は嬉しそうに洞窟の中から手に入れてきたモルギフを2人に見せたのだ。
無事に手に入れる事が出来た事に2人も安心し、コンラートはすぐに有利の側に寄る。
そして有利とコンラートが話している姿を見たアリアはどこかホッとしたのだ。
「(あのままコンラートと話してたら、私自身何を言い出すかわからなかった…。ナイスタイミングで有利が戻ってきてくれて良かった)」
こうしてモルギフを手に入れた有利達は宿へと戻って行ったのだった。
「魔剣モルギフは人間の命を吸収して力をとなす。よって、発動するには勢力補給の必要がある」
こうしてアリア達はモルギフの補給の為、町にある病院へ行ったのだ。
さっそく病室には今にも亡くなりそうな方がおり、有利とヴォルフラムがモルギフを持って患者の所に行く。
双子とコンラート、ヨザックはドアと所で待っている。
有利が患者にモルギフを近づけると…。
「おお――!何と神々しい!!」
「「!!」」
ヴォルフラムを見た患者は、みるみる元気になっていった。
他の患者にも同じようにモルギフを近づけていったのだが、ヴォルフラムを見た患者全てが元気となっていったのである。
「…さすが、ツェリ様の子どもね」
「…同感だな、俺もそう思う…」
「金髪という点で言うならセルセもこうなりそうだよね」
「そうか?」
結局別の作戦を考える事となり、アリア達は病院を出て近くの休憩場で休んでいた。
そこで次の作戦を考えている。
「ハァ…。どうしてヴァン・ダー・ヴィーアの病院は回復率が異様に高いんだろ?…ああ、いや、患者のご家族にとっては良い事なんだけど」
「ギュンターの資料には、確かに人間の命を吸収させないと、この魔剣は発動しないと書いてあるんだが…」
テーブルの真ん中にはモルギフが置いてある。
「人間の命ったってどうやって吸わせりゃいんだ?第一、患者は皆死ぬどころかピンピンしてたじゃんか」
「手っ取り早く数を揃えるなら…、村の焼き討ちかな?」
「ヨザック!陛下がそんな恐ろしい事をなさる訳ないだろ?…何とか、1人か2人…」
「コンラートまでそんな事言ってどうすんだよ…」
2人の会話に呆れるしかない。
「(コイツは何も言わないし…、)」
何も言わないアリアにセルセはまた怖い感じがしていたのだ。
ヨザックとコンラートの会話を聞いた有利も呆れる。
「オイ!お前ら!大概にしろよ!何人だろうと、罪の無い人の命を奪うなんて出来る訳ないっしょ!」
「つまり、作戦として問題があったんじゃないのか?」
「私もそう思うけど?」
「俺もそう思う」
ヴォルフラムの考えに双子は同意をすると、コンラートはその場から立ち上がる。
「ジッとしてても仕方がない。俺は何か別の方法を探ってくる」
「俺も行くぞ、コンラート」
「私も行く」
そう言って俺達は出かけようとしたら、アリアがヨザックに小さい声で話しかける。
「ヨザ、変な事しちゃ駄目よ?」
ニッコリ微笑むアリアにヨザックは青ざめる。
「おお…」
微笑んだアリアとコンラートの後を追う。
先程のアリアの笑顔が何故か怖く感じたコンラートは話しかける。
「…アリア、怒っているのか?」
問いかけにアリアが笑顔で否定する。
「まさかvvv」
「(…絶対に嘘だ。結構怒ってる)」
そう感じたセルセは溜息をしながらアリアに言う。
「嘘だろ?この馬鹿。何かには怒ってたんだろ?」
「…怒ってるというか、ヨザが何かやる気がしたからね」
「…何かをやる、か」
セルセは確かにとどこか納得した様子だったが、アリアは呆れながら話を続ける。
「…巡視船と、昨夜の3人の会話。あれを聞いてれば誰だってそう思うわよ」
「…巡視船と昨夜の会話?…って聞いてたのか?」
まさかアリアが話しを聞いているとは思わなかった。
「巡視船での話しは聞くつもり無かったわよ。…でも、昨夜の話は完全に盗み聞きしちゃった」
コンラートは少し怒った口調で聞き直す。
「何で、盗み聞きなんてしたんだ?」
「…言っとくけど、盗み聞きが目的じゃないからね?
ヴォルの薬が作り終わったから、部屋に入ろうとしたら3人が深刻な話をしてるんだもん。
入れずにいたら、そのまま話を聞いちゃったってわけ」
分かった?と2人に促しただけだった。
そして。
「………居ないけど?」
「何処に行ったんだ?」
「知らないわよ。絶対にヨザが何かやったんじゃないの?」
3人が休憩場に戻った時には有利達はすでに居なかった。
「セルセ、アリア、街の方に行ってみよう!」
コンラートの提案に双子は同意すると、すぐに町へと辿り着いたが、その時すでに町全体が騒がしかったのだ。
「…何でこんなに騒がしいんだ?」
「あれ!」
アリアがコロシアムの方を指差すと、そこには炎でできた巨大な竜巻が出ていたのだ。
急いでコロシアムに到着した時には、戦闘場にいる有利の手にはモルギフが暴走していた。
「まさか暴走してんのってモルギフの方か?」
「…私は有利がまた魔王になって暴れてるのかと思ってた」
「…俺もそう思ってた」
アリアの言葉にセルセも苦笑しながら同意するだけだった。
「ユーリ!」
「あ!コンラッド!」
すぐにコンラートは有利の元へ近づこうとしたが、今だ止まらないモルギフの力に吹き飛ばされてしまった。
その様子を見たアリアはすぐにコンラートの側に駆け寄る。
「大丈夫?コンラート」
「…ああ」
すると有利は何かを感じ取ったらしい。
モルギフをしっかりと構えると言い出した。
「“私の名を呼べば出来る限りの事をしよう。私の名は、ウイレム・デュソイエ・イーライド・モルギフ!”吐くならエチケット袋の中にしろーッ!!」
有利がそう叫ぶと魔剣モルギフは無事に止まったのだ。
「…止まった、の?」
「そうみたいだな」
先程の騒がしさとは嘘みたいに静かになった。
「……ハァ、助かったー…」
何とか落ち着いた事に有利はホッとするだけだった。
すると双子とコンラートが自分に近づいてくるのが分かり、有利は3人を見る。
「大丈夫か、コンラッド、双子」
「ええ、大丈夫」
「それにしても、いったいどんな魔術を使ったんですか?」
「話は後で。とりあえずリックを連れて」
「はい」
有利に頼まれたコンラートはすぐにリックと呼ばれる男の子の方に走って行き、双子は有利の元へ寄る。
「有利、大丈夫?」
「アリア、セルセ。ああ、うん、何とか。…ん?」
「どうしたんだ?ユーリ」
何かに気づいた有利は席にいる一人の老婆を見つけたのだ。
「コンラッド、お金。お金持ってる?」
「え?」
「ユーリ?」
コンラートからお金を受け取った有利は、老婆が立っている場所へ近づく。
「あの、奥さん!」
「!?」
「これで、足りるかどうか分からないけど、」
そう言ってお金を渡そうとした時だった。
「近寄らないでおくれ!」
「え?あ、」
近寄るなと言われてしまい有利は驚くが、老婆はどんどん怒鳴っていく。
「誰が魔族の金なんか!魔剣なんて持ち込んで私達を、人間を滅ぼしに来たんだね!!」
そう言われ、有利はそれ以上何も言えなくなってしまった。
「ユーリ、急ごう。ヨザック達が脱出の準備をして待っているはずだ」
コンラートにそう言われると有利はその場にお金が入った袋を地面に置く。
「このお金で息子さんの病気、治しなよ」
「魔族の金なんかで医者に行ったら、息子が呪われる」
コンラートと双子はその老婆を見ず、有利に微笑みながら話しかける。
「俺の父親は、魔族の女との間に子までつくったけど」
「俺らの母親も。…魔族の男性と恋に落ちて、子どもをつくったけどな」
「呪われた?」
「呪われるわけないでしょ」
「いや、89まで気ままに生きたよ」
「俺らの母親も生きてたと思うよ」
そう言われ有利は小さく笑うと、アリア達と共に走りながらコロシアムから脱出した。