彼が天使に堕ちるまで
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湿っぽい空気に、埃まみれの床。何処からともなく入り込んだ隙間風によって、ギシギシと木材の軋む音がする程、ボロボロな天井。
おおよそ子供を預かるとは思えないような劣悪な孤児院に、とある子供は預けられた。
──否、耳障りのよい言葉で語るのは、些か不適切であろう。
その子供が生まれる前のこと。
母親の胎盤で胎動をしていた頃、よやく授かった命に、両親である二人はたいそう喜んでいた。
どんな子供だろうか、きっと母親に似て可愛いのだろう。父親に似て賢いのだろう。まだ見ぬ愛しい我が子に思いを馳せては、二人は微笑みあっていた。
だが、生まれてきた姿を一目見て、その思いは儚くも消えた。
雪のように白い……と言えば聞こえがいいが、おおよそ人間とは思えぬ真っ白な肌。
まるで彫像を思わせるような白さで、白人の色とも違うその肌色に、あれほど待ち望んでいたというのに、両親は薄気味悪さを覚えた。
何より、初めて見開かれた目の、本来あるべき物がない、右側の眼窩の存在。生まれた我が子は異様な肌色であるだけでなく、隻眼という欠陥を持っていたのだ。
果たしてこれは本当に我が子なのか。あまりにもの衝撃に呆然とするしかなかったが、ただ一つのことについて、二人の意見は完全に一致していた。
そして、5歳の誕生日を迎えたその日。
端金を得る代わりに、近所では悪名高い違法な孤児院へ、その子供は売り払われた。
「はじめまして」
「………………」
包帯に身を包んだ無愛想な少年は、怪訝そうな表情を浮かべて、異様な肌色の少女をジロリと見かえした。
人間とも思えない肌色の少女は、薄暗い孤児院の中でも、白く浮かびあがっているように見える。
それはまるで幽霊のような不気味な様であったが、特殊な愛好家であれば、白磁の彫像のように美しいと、幻想的であると、称賛を送っていただろう。
「……フン……」
残念ながら、包帯の少年にそのような感性はなかったのだが。
挨拶を返す訳でもなく、無愛想にも鼻を鳴らした少年は、白い少女の脇をスルリと抜けていく。
少女は、その態度に気を悪くした様子もなく、通り過ぎた小さな背中を、片方しかない目で見送った。
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