収拾癖シェパードさん
タリのログが、1日の間に第二ページまで更新されるという快進撃()に遭遇した日から数日。
あれから今の今まで、新しいページは追加されずに止まっていた。少し残念な気分になったのはきっとおそらく気のせいだ←
砲台のキャブレーションを終えたギャレスは、いつもの通り武器在庫をチェックしている。
別に、今日ならあの例のログが増えているのではないかとか、実は見落としている新しいファイルがあるんじゃないかなんて思ってもいないし考えてもいない←←
いくつか新しく追加されてる武器在庫のみ長めに見てから、代わり映えのしないものはほぼ流し見する程度にとどめる。
最下層までスクロールしたところで、例のファイルの名前が出てきた。
ファイル名【シェパードによる回収物一覧】
「何度見てもわけのわからない名前だ」
ヴォン、と音を立てて画面が遷移する。昨日とほぼ変わらない、ちょっとおかしな回収物一覧がそこに並んでいた。
【回収物一覧】
・銀河各地で拾得した武器、およびアーマー
・使用用途不明の鉱物。※ノルマンディーに収納済み
・プロセアン由来と思われる遺物
・所有者不明のドッグタグ
・各宇宙船の模型
・スペース・ハムスター
・クローガンの頭部 ※壁面装飾済
・ギャレス・ヴァカリアン①
・タリ・ゾラ①
・タリ・ゾラ②
・アードノット・レックス① New!
「…………」
スッと顔を一旦画面から離し、深呼吸。
もう一度画面へ戻して確認。
【アードノット・レックス① New!】
「………………」
ま た な ん か ふ え て る。
「…………」
チラッ、チラッと左右確認。念のための真後ろにも人影、エイリアン影がないかチェック。
「…………これは、確認しておく必要があるな」
こ い つ 懲 り て ね ぇ。←
ギャレスが指をレックスの項目に触れかけて──
「……いや、ちょっと待て」
「タリも呼ぼう」
何 故 そ う な る ギ ャ レ ス・ヴ ァ カ リ ア ン。
数分後…………。
「それで私を呼んだの?」
「あぁ、前回勝手にログを見たのが問題だっただろう」
「そうね」
「だから二人で確認すればいいと思ったんだ」
「いやなんでそうなるの?」
「違うのか?」
「違う」
ギャレスの頭に大量の疑問符が浮かんでいる。きょとんとした目は無駄に純真無垢だ。こいつまじでわかってねぇ←
タリは頭を抱えながら、ゆっくり、嚙み砕きすぎて粉になるのかというくらい、ゆっくりと喋った。
「いい? ギャレス。問題なのは、人数じゃなくて、ね?
本人の! 許可なく! 個人情報を見ること! よ」
「…………」
「分かった?」
「分かった」
「ならいいけど」
うんうんと何度も頷くギャレス、ようやくわかってくれたらしい。
「本人の許可を取ればいいんだな」
「…………」
思 っ て た ん と 違 う 反 応 !
「取ってこよう」
「待って何するつもり」
「レックスに連絡する」
「ちょっと待とうか????」
や っ ぱ り わ か っ て な か っ た!
「よし、ちょっと行ってくる」
「聞こえてないわねこの駄犬!?」
タリが止める間もなく、ギャレスはピューっと去っていった。おそらく連絡用に宛がわれた自分の端末の操作をしに行った。
終わった。
「……いいえ、いいえまだよタリ・ゾラ」
「ハッキングして止めればいいのよ」
オムニツールを起動。タリの指には一切の迷いがなく、高速でホログラムを走った。
が。
【ギャレス・ヴァカリアンのメッセージログ】
【宛先:アードノット・レックス】
【送信完了】
「なんでよっ!?」
手 遅 れ だ っ た
「……いいえせめて、せめて遠隔操作で手違いだったというログをレックスに送れば──」
ピロン♪
「?」
【ギャレス・ヴァカリアンのメッセージログ】
【差出人:アードノット・レックス】
【受信完了】
「なんでよぉぉぉ!!!」
タリは頭を抱えたまま天を仰いだ。
男はメッセージのやりとりが遅いだとか散々恋愛心理本を呼んでいたのに、こんなの聞いてない。
そもそもなんでこんなに返信が早いんだアードノット・レックス、暇かっ!
「Dammit!」と叫ぶタリをよそに、高速でレックスとやり取りをしていたギャレスが帰ってきた。ウキウキとした様子から問題なく許可をもらったのだろう。
裏ではタリによる妨害工作が行われかけていたなどど知る由もない。
「許可が出たぞ、タリ」
「…………」
「どうした?」
「……なんでもない」
「そうか。では見よう」
「…………」
「?」
「(なんでそんなに嬉しそうなのよ)」
ギャレスの指が画面を滑り、例の詳細画面へと遷移する。
あーだこーだと言っていたタリだが、なんだかんだ居座って横から覗いている。←
「どれどれ……」
【アードノット・レックス 回収ログ①】
種族:クローガン
回収場所:シタデル
回収時期:フィスト追跡任務中
▼回収に至るまでの詳細
レックスはシャドウ・ブローカーからの依頼で『タリを暗殺しようと目論んでいたフィスト』の暗殺の機会をうかがっていた(三角関係)
「いや三角関係ってなによ!?」
「ブハッ……!」
開始1分と立たずにタリの突っ込みが入った。
端末の置いてある机に掌が炸裂し、タァン!と破裂音が響く。
「~~~~っ……」
直後にタリが両手を摩った。思っていたより痛かったらしい。
「……ッ……ッッ」
「……ギャレス?」
「な、何も見てない、見てないぞ?」
「笑ってたよね?」
「気のせいだっ」
レックスは律儀にも公の場(コーラズ・デン)で殺害、脅迫を行ったため、C-Sec警官により本部へ連行。
逮捕されそうなところをガン見していたシェパードに眼をつける。
「いやそれただのヤンキー!!」
「……いや……実際あの時の状況だけ抜き出すと……」
「ギャレス?」
「何でもない」
「今肯定しかけたよね?」
「続きを見よう」
眼つけクローガンに臆することなく接するシェパードと、同行していたギャレスの助言により、フィスト暗殺のため案外すんなりと合流。
「仲間に加わってくれて嬉しい」という言葉に何度も頷いた(シェパード情報)
その後、シェパードと共にコーラズ・デンへ乗り込み、シェパードがフィストをボコボコに伸して情報を吐かせた後に殺害、任務完了。
「…………」
「あの時のシェパードは容赦がなかった……」
「ねえ」
「?」
「さっきレックスをヤンキーって言ったけど」
「……」
「シェパードも──」
「さあ続きを見よう」
離れるかと思いきや、そのままクルーとして同行する流れのまま捕獲に至る。
ヴァーマイアでシェパードに説得()されたことにより奇跡的に死を回避。
現在はノルマンディーに収納済み
回収時の状態:眼つけクローガン。不信行動によりC-Sec本部へ連行。C-Secの威圧を歯牙にもかけず。
現在の状態:シェパードとの関係、最良好。よくわからん家宝を律儀に回収したシェパードに絶対の信頼を置く。
「「…………」」
合っている、概ね。
当時同行していたギャレスが何も言えないくらいには合っている。
途中色々おかしかったことに目をつぶりさえすれば、合っている。←
「これ、本人に許可取って正解だったわね」
「ああ」
「でもレックス、これ読んでいいって言っただけで、内容を知ってるとは限らないわよね」
「…………」
一拍の間、顎に手を当てて考え込んだギャレスが、「あ」と、掌を拳でポンッと叩き。
「メッセージで伝えてやればいい」
「や め な さ い」
全力でタリに止められた。
≪オマケ≫
ピロン♪
「あ? なんだ……ギャレスからか。
『お前についての妙なログを見つけた。閲覧して構わないか?』だぁ?
なんでいちいち聞いてきてるんだ、みたけりゃ勝手に見てろ」
ポチポチ……
ピロン♪
「レックス、あいつ返信早いな」
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