収拾癖シェパードさん


 ギャレスの謎の独白から、なんとかことの経緯を引き出したタリ。

「……つまりギャレス」
「うん」
「私の個人ログを勝手に見たの?」
「…………」
「ギャレス?」
「……すまない」
「いや謝るなら最初から見ないでくれる??」

 しょんぼりへにょんとなったトゥーリアンの頭をとりあえずひっ叩いておいた。

 が、フォルダの内容が気にはなったので、問題の端末の場所まで案内してもらう。
 いたって普通の、全てのクルーがアクセスできるような場所にあったが、どうして今まで誰も気づかなかったのかが不思議だ。

「ここだ」
「これ?」
「そうだ」
「……普通の共有フォルダじゃない」
「そうなんだ」
「アクセス制限は?」
「ない」
「暗号化は?」
「されてない」
「…………」
「…………」
「なんで私の個人情報がここにあるの??」
「それは私も聞きたい」

 ギャレスの目が遠くなる。
 問題のファイルを探すために端末の操作をはじめた。が──

「何でこんなにスクロールバー長いのよ」
「武器在庫のフォルダだからな」
「それなら余計にここにシェパードの収集物一覧があるのが謎なんだけど???」

 すべての武器の情報を収録しているフォルダは、無駄に長かった。ギャレスはこれを一日で確認していたという。お前正気か???

 スクロールバーがほぼ最下層レベルで下がってからようやく問題のフォルダにたどり着いた。
 この武器在庫の一覧を一個一個確認していたギャレスの頭は、一回キャリブレーションしたほうがいいと思う。

 ファイル名【シェパードによる回収物一覧】

「……本当にあった」
「嘘だと思っていたのか?」
「いやだって……目の焦点合ってなかったし……」
「……そんなに酷かったか?」
「うん……」
「何だ」
「…………」
「タリ?」
「ちょっと安心した」
「何に?」
「あなたの頭が壊れてなかったことに」
「心外なんだが??」

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするギャレスをよそに、タリの指が端末の画面に触れ、画面が遷移する。

 【回収物一覧】
 ・銀河各地で拾得した武器、およびアーマー
 ・使用用途不明の鉱物。※ノルマンディーに収納済み
 ・プロセアン由来と思われる遺物
 ・所有者不明のドッグタグ
 ・各宇宙船の模型
 ・スペース・ハムスター
 ・クローガンの頭部 ※壁面装飾済
 ・ギャレス・ヴァカリアン①
 ・タリ・ゾラ①
 ・タリ・ゾラ② New!

「…………」
「…………」
「タリ」
「何?」
「さっきはなかった」
「…………」
「本当だ」
「…………」
「私が君の①を見たときには、②はなかった」
「…………」
「タリ?」
「ちょっと黙って」

 タリは頭を抱えた。聞いていた話では①しかなかったはず。
 いやそれはいい。いやよくはない、よくはないけど、一先ず今は②のほうだ
 ①は後で見る。絶対に←

「とりあえず開いてみましょう」
「いやちょっと待てここは一旦心構えを────」

 ブォン

【タリ・ゾラ(タリゾラ・ヴァス・ニーマ) 回収ログ②】
 種族:クォリアン
 回収場所:フロティラ
 回収時期:故郷の惑星調査中
 ▼回収に至るまでの詳細
 シェパードにゲスの重要なデータを授かり、ノルマンディーより放流。移民船へ合流し、無事に成人の儀を終えて、晴れて成人(タリゾラ・ヴァス・ニーマ)となる。
 コレクター襲撃の調査で訪れた惑星フリーダムズ・プログレスにて爆発四散したはずのシェパードと再会。ヴィトールの捜索を共同で行う。
 この時取得には至らず。

「いや待って、ちょっと待って?」

 タリが画面から勢いよく顔を離した。そのままの勢いでグリン! とギャレスの方へ向くと──

「爆発四散って何!?」
「間違ってはいない」
「そうだけどそうじゃなくてね!?」
「まぁ落ち着こう、まだ読み始めたばかりだ」

 ギャレスに落ち着くように言われて、ひとまず大きく深呼吸をする。妙な玄人感が癪に触ったので、ついでに一発決めておいた←

「まて、何故今私は殴られた???」
「続き読みましょうか」
「タリ??」

 その後、タリはクォリアンのチームと共に、太陽の異常活動を調査する研究任務のために惑星ヘストロムへ。
 しかし、うっかり下衆…ならぬゲスの襲撃を受けて孤立し、危険な状況に陥っていたところ通りすがったシェパードらにより救出。
 重要任務を終え、暇になったところをシェパードに確保、取得される。
 現在はノルマンディーに再収納済み。

「いやうん、ちょっと待て??」

 今度はタリが画面から静かに顔を離し、ギャレスの方へゆっくり向き合う。
 マスクで見えないはずだが、ハイライトの消えた目がギャレスを凝視している。
 ……ように見えた。怖い。

「シェパード、こういうことは書かないわよね」
「書かないな」
「……EDI?」
「大正解」
「…………」

 タリの顔がゆっくり天井へ向けられる。
 そこはいつもと変わらない知ってる天井だ。
 いや当たり前だ、今更なにを言ってるのか。
 そして残念なことに、天井を見つめても何もいない。いや、ある意味犯人は常にそこにいるが、これだけ名前が出てるのにも関わらず一切反応がないのが逆に怖い。

「……とりあえず続き見ましょうか……」

 回収時の状態:ゲスに後ろから刺され、精神、身体共にボコボコ。海兵隊のカルリーガーの生存により完全ダウンは逃れる。
 現在の状態:シェパードとの関係、最良好。ただし犬猿の仲のゲスによりストレス値は上昇。なおシェパードの前では猫を被っている模様。

「うんやっぱりちょっと待とうか???」

 ダンッと端末の両脇に拳を叩きつけ、言葉にならない言葉をタリが発した。

「だから言っただろう?」
「…………ギャレス」
「うん?」

「ちょっとじっとしてて」

 ギャレスの頭のこぶが増えた。




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