収拾癖シェパードさん


「…………」

 ギャレスは今日も武器在庫ログを見ていた。機関室での砲台の調整も一先ず区切りのいいところで終えて、手持ち無沙汰になってしまったからだ。
 なお、例のログにはまだ辿り着いていない。

 いや違う、今日こそ真面目に武器在庫を確認しにきただけだ。
 決して、決してあの妙に詳しいログの続きが気になったわけではない。
 それにもしかしたら夢だったのかもしれない、実はあんな怪しいログはなく、単なるシェパードの収集物一覧だったのかもしれない。
 これは念のため確かめる必要がある。うん。

 だが、武器在庫の項目を確認する目は、明らかに昨日よりも素早く滑っている。1日で速読スキルが身に付いたようだ。流石元C-Sec。

 そうしてとうとう、例のシェパードログの項目まできた。

「……今日は……誰もいないな……?」

 キョロキョロと念入りに周囲を見渡す。
 不審者、圧倒的不審者感。
 だが幸いにも、周囲には誰もいなかった。
 少なくとも今は。

「ふぅぅ……よし」

 ブォン、と画面が切り替わり、例のファイルの一覧に遷移する。相変わらずその他の項目の詳細は確認できない。

 【回収物一覧】
 ・銀河各地で拾得した武器、およびアーマー
 ・使用用途不明の鉱物。※ノルマンディーに収納済み
 ・プロセアン由来と思われる遺物
 ・所有者不明のドッグタグ
 ・各宇宙船の模型
 ・スペース・ハムスター
 ・クローガンの頭部 ※壁面装飾済
 ・ギャレス・ヴァカリアン①
 ・タリ・ゾラ① New! 

「………ンン????」

 ギャレスの頭に疑問符が大量生産される。
 なんだか昨日は見なかった項目がひとつ増えている気がしたが、気のせいだろうか?
 
 クシクシと片目を擦ってから、もう一度一覧画面を見た。

 【タリ・ゾラ① New!】

「…………」

『タリは?』
『拾ったわ』

 昨日のやり取りを思い出す。そしてもう一度画面を見る。

 【タリ・ゾラ① New!】

「…………」

 昨日。
『タリは?』
『拾ったわ』
 画面。

 【タリ・ゾラ① New!】

 いやなんか増えてる。

「……いやいや、まさかな?」

 ギャレスの視線が上を向く。
 天井だ。当たり前だが、誰もいない。いないのだが、排気孔がだんだん目に見えて……いや気のせいだ。

「…………EDI?」

 呼び掛けたつもりはないが、EDIからの返答はない。いや、返事をされても困るっちゃ困る。
 ……なんだか背中に寒気を感じた。

 ブルッと背中を震わせて、問題の画面へ目を向け直す。

 【タリ・ゾラ① New!】

「……いやいやいや……いや……」

 そうだ。

「これはタリの個人情報だ」

 そうだ。

「私が見るべきものじゃない」

 その通り。

「…………」

 指を自分の項目へ向けて──

「…………ただ」

 ピタッと止まる。

「昨日は存在しなかった項目だ」

 そうだな。

「つまり、このログがどういう基準で更新されているのかを確認する手掛かりになる」
 
 いや違うだろう←

「C-Sec時代の私ならそうしたし、上官も許していた。きっと」

 元C-Secを便利な免罪符として使うギャレス・ヴァカリアン。
 トゥーリアンの規律どこいった。

「それに、昨日の会話が原因で追加されたのなら……私にも多少の責任がある」

 い や 違 う だ ろ う 。←

「……そうだ、これは、元C-Secとして
 アークエンジェルとして見過ごせない」

 とうとう銀河に轟く中二病ネームの威光も持ってきやがった。←
 
「よし」

 ヨシじゃない、全然ヨシじゃない。

 しかしギャレスの指は止まらない。
 タリの項目に触れて、詳細画面へと遷移した。

 【タリ・ゾラ 回収ログ①】
 種族:クォリアン
 回収場所:シタデル
 回収時期:サレン追跡任務中
 ▼回収に至るまでの詳細
 巡礼の旅のために銀河を放浪していたクォリアン。有益なゲスの情報を探っていたところ、サレン・アルテリウスがゲスと手を組んでいるという決定的な証拠音声をうっかり入手。
 あまりに危険な情報のため、シャドウ・ブローカーへ渡して保護を求めようとしたが、仲介役だったフィストにあっさり裏切られ、刺客に命を狙われる事態へ。
 運良く情報に辿り着いたシェパード、及びギャレス・ヴァカリアンに窮地を救われる。
 未成年の危険保護のためにシェパードによって回収、取得。能力の有用性もあり重宝される。ただし戦闘への同行はごく稀であった。
 現在はノルマンディーに収納済み。

 回収時の状態:巡礼の旅の最中だった未成年。自身の能力が高かった故にうっかり地雷を踏み抜く。
 現在の状態:踏み抜いた地雷はしっかり除去。シェパードとの関係、再良好。無事成人の義を終えた。

「……私も救助に関わっているし、合ってると言えば、合っている」

 そして普通だ。
 ……いや違う、普通ではない。やはり所々おかしい。
 けれど最後の経歴まで概ねあっている。あっているが、途中がおかしい。

 『危険保護のため』
 タリ→犬猫
 ギャレス→拾い物
 
『あなたの中で私は、C-Secを辞めた瞬間にどういう状態になったんです?』
『……野良?』

 扱いの温度差が酷いな?????
 
「……いや、タリが未成年だったのは事実だ。保護が必要だったのも分かる」

「だが私は……」

 ── シタデルでの遭遇の振り返り中 ──

「…………」

「私は別に保護される必要はなかっただろう」

 ── オメガでの遭遇を振り返り中 ──

 オメガ。アークエンジェルとして傭兵団相手に暴れ回る。
 仲間を集めて、シドニスに裏切られ。仲間全滅。
 一人で籠城。
 ブルー・サンズ。エクリプス。ブラッド・パック。三大傭兵団から集中攻撃。
 弾薬にも限界。敵は押し寄せる。
 そこへシェパード←
 シェパード無双により三大傭兵団撃退。
 しかし最後にギャレスへロケット直撃。顔面崩壊。重体化。
 ノルマンディーへ搬送。メディベイ送り。

「…………あれは保護、になるのか?」

 完全に保護されていた件について。


 ── その日の夕食時、ノルマンディー食堂にて

「タリ」
「ギャレス、何?」
「2回目は私も君と同じ保護対象だったようだ」
「ちょっと待って何の話?」
「しかし君は1回目から保護だった」
「いやだから待って、1回? 2回? 保護? どういうこと?」
「私の1回目は『回収』だった……」
「ねえだから何の話!?」




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