収拾癖シェパードさん


 とある日のノルマンディー船内。
 機関室から出てきていたギャレスは、武器在庫のログにアクセスして在庫のチェックを行っていた。

 習慣となっているその行為、いつも通りのログの並びに満足して終わるはずだったが、今日に限ってはいつもと違う項目が目についた。
 ファイル名【シェパードによる回収物一覧】

「……こんなログ、いつの間に作られたんだ?」

 数日前に確認したときにはなかったログ。個人的に作成されたものなのか、EDIに作成されたものなのかは不明だ。
 しかし、クルーであれば誰でも閲覧可能なフォルダに分類されているということは、特に見ても問題はない内容のはずだ。
 ……はずだが。

「シェパードによる……というのがな……」

 気になる。
 しかし直属の上官の名前が入っているログである。
 でも気になる。
 しかしあのシェパードの名前が入っているログである。
 ……でも気になる。

「……少し見るだけなら……時間あるし……」

 ギャレスは禁断のファイルにアクセスしてしまった←

「何々……」

 ログの内容は、途中までは至って普通のもので、項目に触れれば更に詳細が確認できるようだった。

 【回収物一覧】
 ・銀河各地で拾得した武器、およびアーマー
 ・使用用途不明の鉱物。※ノルマンディーに収納済み
 ・プロセアン由来と思われる遺物
 ・所有者不明のドッグタグ
 ・各宇宙船の模型
 ・スペース・ハムスター
 ・クローガンの頭部 ※壁面装飾済
 ・ギャレス・ヴァカリアン① New!

「……ン?」

 目を擦ってもう一度項目を確認する。
 ……ギャレス・ヴァカリアン①? ①????

「……私の項目、か?」

 もう一度見返す

「……ギャレス・ヴァカリアン、いち……」

「……いち?」

 何度見返しても項目は変わらない【ギャレス・ヴァカリアン①】、しかもNew、最近追加されたばかりだ。
 ……いやどういうことだ?

「…………」

 ギャレスの思考が今や「????」で埋め尽くされていた。今なら脳内メーカーで調べれば「疑」の文字で一杯になっていること間違いなし←

「いや、落ち着こう、EDIのジョークログかもしれない」

 そう言いながら、他の項目に触れてみる。
 さすが元C-Sec。好奇心に負けずに冷静。論理的。慎重な検証だ。
 が、更に詳細が確認できるような説明が記載されているくせに、何故か一個も開かない。
 残る項目は……。

 【ギャレス・ヴァカリアン① New!】

「……ふぅぅ…………」

「いや、私の名前が書いてあるんだ。EDIのジョークなら、勝手に使ったことへの文句も言えるだろう」

「そう、これは別に疚しいことではない、決して、断じて」

「単なる好奇心ではない、違うぞ、本当に」

 そしてとうとう、その項目へ触れた。
 ブォン、と音を立てて、画面が切り替わる。

 開 い た。
 普 通 に 開 い た。

「…………」

 【ギャレス・ヴァカリアン 回収ログ①】
 種族:トゥーリアン
 回収場所:シタデル
 回収時期:サレン追跡任務中
 ▼回収に至るまでの詳細
 ギャレス・ヴァカリアンはスペクターであるサレン・アルテリウスの容疑を独自調査して追跡。
 しかしC-Secの上層部から「証拠不十分」として捜査を打ち切るよう命令が下され。公的な捜査が不能となる。

 とある情報筋により、クォリアン女性がサレン・アルテリウスの決定的な証拠を握っていることが発覚。暗殺者による人質事件を未然に防止。
 その後、C-Secのルールに縛られてる状態でサレン・アルテリウスの捕縛が不可と悟り。下野。
 をしたところでシェパードにより回収、拾得される。
 現在はノルマンディーに収納済み

 回収時の状態:C-Sec勤務。上司との関係が著しく不良。
 現在の状態:シェパードとの関係、最良好。好みのプレイは───

「いや、まてまてまてまて」

 思わずログの画面を一覧表に戻してしまう。

 途中までの経緯は良かった、合っていた。
 いやちょっとおかしい表現はあったが合っていた。うん。
 で、好みのプレイってなんだ?????

「いや、待て。なぜ回収ログにそんな情報が必要なんだ
 というか、そもそも誰が記録したんだこれ……?」

 ①とあるからには②もあるんだろう、そもそも2年以上も前の内容を、何故今になってログに収めているのかも不明だが。
 いやそもそもなぜ、性癖が収められている???

「これは一度、シェパードに確認が────」

「ギャレス?」

「…………」

 油の切れたブリキ人形にでもなった気分だった。

「何してるの?」
「……武器在庫の確認、です」
「あぁ、武器在庫ね。でもそのログ、違うみたいだけど」
「……途中までは、ちゃんと確認していました、よ」
「そうなの」
「はい」
「…………」
「…………」

「それで、何か聞きたいことがあるようだけど?」
「……この、ログについてですが……」
「うん、ログね」
「……私が」
「うん」
「…………回収された件について」
「どれ?」

 ……どれ???????

「……どれ?」
「うん、何かEDIがログを新しく作成したとは聞いているのよ
 私が拾ったものについて」

 拾ったものについて???????

「私は、拾われたんですか?」
「ええ、私に拾われたわね」
「どこで?」
「シタデルで」
「いつ?」
「タリを助けたあと」
「……それは仲間になったというのでは?」
「ええ、拾ったのよ」

 ちがうそうじゃない。

「……では、レックスは?」
「拾ったわね」
「タリは?」
「拾ったわ」
「リアラは?」
「テルムで拾ったわね」
「ケイダンは?」
「あれは連合の付属品だから拾えないわよ」

 連 合 の 付 属 品 ?????

「…………付属品?」
「ええ」
「ケイダンが?」
「ええ」
「…………本人には言わない方がいいですよ」
「どうして?」

 どうして?????? いや、こっちがどうして???????

「……では、私がC-Secを辞めていなければ?」

 混乱で疑問符が浮かぶ頭に、ふと一つの質問が浮かんだ。
 シェパードは顎に手を当てて、首を傾げながら一拍考えると。

「C-Secの備品だから、拾えなかったでしょうね」

 備 品。
 ギャレス・ヴァカリアン。
 トゥーリアン。元C-Sec捜査官。射撃の名手。が
 備品。って言われた。完全に、備品って。

 私、C-Secの備品認知されていた件について←

「……シェパード」
「何?」
「一つ確認していいですか」
「どうぞ」
「あなたの中で私は、C-Secを辞めた瞬間にどういう状態になったんです?」
「?」

 ちょっと何を聞きたいのかわからない。という顔でギャレスを見返すシェパード。
 聞いてるこっちもよくわからない←

「だから、C-Secの……備品、だった私が辞職して」
「ああ」
「その後です」
「……野良?」

 野 生 の 生 き 物 扱 い だ っ た。




.
1/5ページ
スキ