【シェパード×リージョン】名前を付けられないもの


『何故、私のアーマーを修理に使ったの?』

 その問いは、既に幾度となく再生されていた。

 損傷したプラットフォームの修復には、他にも利用可能な資材が存在した。
 それでも『我々』は、シェパードのアーマーを選択した。

 何故。

 演算。比較。再検証。
 既存の記録を参照し、選択に至った過程を再構築する。
 ──しかし、有効な解は得られない。
 五千万回を超える演算を経ても、その結果は変わらない。

 不足している変数がある。
 そして、その変数として最も高い関連性を示す存在は──

「少佐シェパード」

 ノイズがかかったような低い声。
 歩く度にゲス独特の駆動音を発しながら、リージョンが珍しくAIコアの部屋から出てきた。

「リージョン、どうしたの」
「少佐、質問を許可願う」
「いつもは私が聞いてばかりだものね。どうぞ」
「感謝」

 彼らなりの感謝の動作か、あるいは単なる機械現象か。リージョンのレンズがキュルと一瞬収縮し、光を放つ。

「少佐シェパードは、以前我々にこう聞いてきた。
 『何故、私のアーマーを修理に使ったの?』」
「……そうね、あなたは穴を塞ぐために使ったと言っていたけれど」

 ゲスはこくりと頷いた。

「肯定、しかし回答不能。
 この問題について、プラットフォーム内のプログラムが5,000万回以上の演算を行ったが、有効な解に至らず。」
「それで?」
「提案。少佐シェパードへ協力を要請」
「……私?」
「肯定」

 こくり、とまた頷きが一つ。
 それも何らかの機械的な挙動なのか、単眼のレンズは、光を収縮させながら細かく照射先を変えた。
 まるで、人間の行う瞬きのようだった。

「我々はなぜ、少佐シェパードのアーマーを使ったのか」
「……それは私が聞きたいのだけど」
「理解。この結果は、少佐シェパードに関する我々のデータが不足しているためと推測される」
「つまり?」

 頭部の装甲が小さく駆動音を立てながら動き、単眼レンズの光が細くなった。

「追加観測の許可が必要」

 リージョンのレンズが、キュルキュルと渦巻いて光度を変える。
 こちらをうかがうかのように動くレンズを見つめながら、シェパードはクイッと片眉をあげた。

「それは、どんなことをするの?」
「少佐シェパードの行動、判断、他の有機生命体との相互作用を観測。
 既存データとの比較を行う。」
「あまり今までと変わらないように思えるけど?」

 レンズの回転が一瞬とまり、頭の装甲が小さく動いく。

「観測頻度を増加。有効解には、より多くの情報が必要」
「……任務まで勝手についてこられるのは困るわよ」
「理解。ノルマンディー船内での観測の許可を願う」
「まあ、それくらいなら……」

 構わないわ。
 下された言葉がリフレインする。パタと装甲が動き、一拍の間を置いてから。

「協力に感謝」

 キュルリと収縮したレンズが、先程よりも強く光を放った。




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