19話
夢小説設定
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その後フレイルも到着しお茶会は始まった。カインは研究所の仕事が忙しく邸に顔を出していなかったが、それでもルーナは久しぶりの面子に頬が緩むのを感じた。各々が思いついたことを話題にし、誰かが話を広げたり静かに耳を傾けたりする。団らんの時間に使用人たちは早々に部屋を出て行った。
「そういえば、この三人は来年成人だな」
レングランド学院の卒業の流れで、リュシオンはフレイル、ユアン、そしてロッタを順に見て、思いついたようにそう言った。
「はい。僕とフレイルは春に、ロッタは秋に18の誕生日を迎えます」
「成人後は目立つことが増えるからな。今のうちに覚悟しておけよ」
「覚悟……」
ロッタが小さく呟いたのを、隣に座ったルーナだけが聞いていた。
「成人したら、ロッタのレングランドでの研究成果が、ロッタの名前で広まるんだよね。でもそれって、ちょっと危険じゃない?」
ルーナの発言に、まわりの青年たちは真剣な顔をしてロッタを見る。
「魔力に関する研究は対象者が少ないから、学術的興味以上の関心は持たれないだろう。だが魔道具の研究に関しては、そこから生まれる莫大な利益に目を付ける輩が出てくるだろうね」
魔道具の研究に関して彼女が主に行うことは、軽量化とコストの削減、機能の複合化などである。どれも魔道具の市井流通のために必要な作業であるがゆえに、その技術を欲する人間は多いと思われた。
「その件に関しては俺も気にかかっていた。マティス卿や研究所の関係者とも話しながら、どう対処するかを考えなければならないな」
「ロッタはこれから社交界デビューまでは、ライデールにいるんだろう?」
「そのつもりです」
「それならまだ時間はある。マティス卿にも話をしておこう」
リュシオンやジーンが、ロッタを気にかけてくれていることに、彼女は素直に感謝の言葉を口にした。しかし彼女の顔はまだ晴れない。
「どうしたの? 何だか、気になることがあるみたいだけど」
「ええ。ちょうど、研究のことなんだけど……」
ロッタはここで言葉を切ったが、ここまで言ってしまえば、最後まで言うしかないと思ったようだった。
「聞いたの。社交界に出て一年は、毎日のように招待状が来て、ほとんどすべてに参加しなきゃいけないって。だから、多分、思うように研究できなくなるわ」
眉を下げて、本当に困った様子でルーナを見る。ルーナはかつて、アマリーと同じような話をしたことを思い出した。それは貴族令嬢特有の悩みだった。しかしアマリーは、社交界デビューをした直後にヒューイと婚約したので、ルーナの想像よりは忙しくないようだった。彼女は思いついたことをそのまま口に出す。
「でも、令嬢が誘われるのって、社交界が結婚相手を探すことを目的としているからっていうのも一つだよね? だからアマリー姉様みたいに早く相手を見つければ、その目的はなくなるんだから、ちょっとくらい招待が減るんじゃない?」
「すごいこと言うなおまえは」
ルーナのトンデモ理論に、最初に突っ込んだのはリュシオンだった。
「ロッタも『その発想があったか』みたいな顔をするな。ないぞ」
「やはりそうですよね」
「結果的に、ってことはないことはないですけどね。アマリー姉様もそうでしたし」
グループ分けをしたら、確実にルーナとロッタの方に入るであろうユアンは、少女たちに付け足すように言った。
しかしそこでルーナの表情を見たロッタは、すぐに話題を変えた。
「まあ、一年は大人しくしていようと思います。来年は大祭があるわよね? ルーナはまた出るんでしょ?」
「えっ。う、うん。なんか、そんなことになっちゃった」
ルーナが恋愛話を始める前に、という勢いだけが先に立ち、その話題転換は非常に雑だった。アマリーに続いて、ロッタも気になる人はいるのかなーなどと呑気に考えていたルーナは、急に話題を振られて口ごもる。
「また父上か。面倒なのに好かれたな」
「あはは……。今回は年齢もちょうどいいからって、父様もすっかり乗り気だったから」
「だろうね。次こそは衣装を用意するって張り切ってたよ」
一同は、娘の晴れ着を上機嫌で選ぶリヒトルーチェ公爵の姿を思い浮かべた。リュシオンやルーナ、ジーンは同時に、それを呆れた顔で見守る国王も想像した。