18話
夢小説設定
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ネイディアとロッタが仲が良いという話はリュシオンの耳にも入っている。王妃の手前迂闊には近づけないリュシオンとは違い、ロッタは王妃公認でネイディアとの交流が認められている数少ない人物だ。少女たちの関係が崩れたとき、ネグロと王家は完全に縁を切ることになる。エリックがそれを望んでいるのか否か、そして国王やリヒトルーチェ公爵はどう考えているのか、推測するには情報も経験も不足していた。
「リュシオン、私はロッタ一人にこの重責を担わせるつもりはありません。彼女が一人で動き出す前に、何とか方法を考えようと思っています」
二人が話している間に、ロッタたちやツェリ子爵の姿は公爵邸から消えていた。ジーンはリュシオンに向き直りはっきりと宣言する。人一倍慎重な彼が、前後不覚の状況でこれほど自分の行動を明確に言葉にするのは、長年の付き合いのリュシオンですら滅多に見ないことだった。
「無論だ。だが、ジーン。それはロッタが友人だからか?」
――言葉にした瞬間、リュシオンは嫌な予感の正体に時間差で気が付いた。
自分が口に出した言葉を反芻するたびに、それが何を意味するのかを改めて知る。そんなはずはない、有り得ないと思いながら、彼は目の前の友人を見た。
ジーンは、碧い瞳を僅かに見開いて彼の言葉を受け止めていた。まるで、ずっと側にあったのに気づかなかったものに、ようやく気づいたかのような、動揺を隠しきれない表情だった。普段は何があっても余裕を崩さない眼差しが小さく揺れる。その動揺が伝播し、リュシオンは途端に眉を寄せた。
「ジーン!」
衝撃を取り繕うように発せられた非難の声は、広間にいたルーナたちの耳にも届く。しかし招待客を相手にしているアマリーたちや両家夫妻はそちらに集中しており、二人の話し合いにはまったく気づかない様子だった。
ルーナとユアンは二人のただならぬ様子に怖々とそちらを窺う。カインはそんな彼女たちを見た後、落ちついた足取りで二人に近寄る。
「どうしたんですか。殿下がそう大声を出されるとは」
「……何でもない」
カインの介入で、リュシオンは必要以上に熱くなっていた自分を諫めた。しかし直後、ジーンは硬く彼を呼んだ。
「リュシオン、それは私にはまだ分かりません。しかし、……いえ。アマリーたちの様子を見て参ります」
そう言うと彼は広間を立ち去った。
(分からないこと自体が答えだろうが)
残されたリュシオンは深刻な表情を押し殺し、訝しむカインを誤魔化した。そして、いまだ心配そうに彼を見るルーナに笑顔を向ける。
「意見の相違だ。よくあることだ、心配ない」
「よくあること?」
あんなことが、と言い出しそうなルーナに、さすがのユアンも空気を読んだ。
「僕もフレイルと時々喧嘩するし、政治の話だと尚更なんだよ。ほ、ほら、ルーナだってコーデリアとは喧嘩から始まったじゃないか」
「そういうものかな?」
「うん! そう。それだよ」
ルーナたちの場合、コーデリアが一方的に敵視していただけの気もするが、ルーナは素直に納得した。一方カインとユアンはそうではない何かがある気配を感じ取っていた。庭園でにこやかに招待客の相手をするジーンを見て、ユアンはルーナに気づかれないように、こっそり顔を曇らせたのだった。