13話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼らの後ろ姿を曇った表情で見つめていたロッタだが、ジーンが近づいてきたのを目の端に捉え意識をそちらに移した。
「私たちと一緒にいるところを陛下に見られるとまずいだろう。彼女が遠ざかるまでは私の陰に隠れた方がいい」
ささやかれた声に小さくうなずき、ロッタはそそくさとジーンの背後に移動する。
彼らの予想に反して、王妃はリュシオンの明らかな挑発にも応じなかった。そのことに彼は尚更違和感を覚える。しかしこれ以上言い募っても仕方がないと踏んだのか、素直に引き下がるフリをした。
「そうだ、
「――こちらは?」
訝しげにカインを見る王妃の後ろで、招待客たちも興味津々とばかりに聞き耳を立てる。
「エアデルトの第二王子カイン殿ですよ。彼は公爵家とは縁が深くてね。それで本日この場にいるというわけです」
「エアデルトの!?」
リュシオンの紹介に王妃は思わず声をあげた。それは聞き耳を立てていた周囲も同じで、ざわめきが広がる。
「はい、カインと申します。ご存じでしょうが、先日、正式にクレセニアへ留学することが決まりました。まだ先のことではありますが、その時はよろしくお願いいたします」
カインは当たり障りのない挨拶をしたあと、リュシオンに目配せした。その意図をすぐに察したリュシオンは、王妃の関心を庭園のアマリーたちに移す。王妃は彼の誘導に気づくことなくそのままテラスへと向かった。
ルーナはすかさずリュシオンに近付いた。一方ジーンは王妃がテラスに出たころを見計らいロッタから離れる。
「リュー」
去っていく王妃を見つめていたリュシオンに、ルーナは心配そうに声をかける。
「いや、あれだけ挑発したにもかかわらず、えらく機嫌がよかったのが不思議でな」
リュシオンの疑問に、王妃を知る面々は口々に同意する。自信過剰な王妃の性格ならば彼に馬鹿にされれば簡単に怒り出す。だからこそ、先ほどの態度にはどうしても疑念を抱いてしまうのだ。
「とにかく王妃様は見張ってた方がいいよね」
「そうだな。付かず離れず、誰かしら近くにいた方がいいだろう。……だが、ロッタはあまり視界に入らないようにしろよ。とはいえ時間の問題だろうが」
本人がどう思うかにかかわらず、ロッタは王妃の実の姪である。王妃自身も、そして周りの貴族も、彼女を王妃の身内と思っているからこそ無理難題を言ってくる可能性があった。
「分かりました」
王妃の登場で、広間や庭園の貴族たちには緊張が走る。ロッタは険しい表情になったリュシオンたちを見て小さくため息をついた。
王妃はゆっくりとテラスから庭園へ降り立ち、皆の注目に笑顔で応える。
「陛下、本日は私どもの婚約式にお越しいただき、誠にありがとうございます」
「ありがとうございます」
ヒューイに続いてアマリーが感謝を述べると、王妃は
「良いのよ。婚約式にわたくしが出席したということで、あなた方も鼻が高いことでしょう。寛大なる国王陛下に感謝するといいわ」
「――ありがたき幸せにございます」
頭を下げるヒューイとアマリーを、王妃は扇で口元を隠したまま見下ろす。言葉と態度がまったく一致していない状況にルーナたちは顔を引きつらせる。しかし比較的彼女と関わる機会の多いリュシオンとロッタはすっかり慣れた様子だった。
歩き出した王妃のもとに、庭園にいた高位貴族たちが挨拶に訪れる。しばらくそんな光景が続いた後、タイミングを見計らってロッタたちもテラスから庭園に出た。人々の注目は王妃からリュシオンたちに逸れ、貴族たちはすぐさま彼の元に集まる。周囲に少数の親しい者しかいなくなった王妃は、それを目の当たりにして顔を強張らせた。次いで顔に浮かぶのはリュシオンへの明らかな敵意。
庭園を見渡していたロッタは、テラスの方から近づく人影に最初に気が付いた。