13話
夢小説設定
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アマリーとヒューイがロッタたちの元を離れると、待ってましたとばかりに招待客が取り囲む。それに嫌な顔ひとつせず、二人はにこやかに対応をしていた。ニール侯爵も主役の二人にあいさつした後、知り合いを見つけたのか、彼女たちから離れていった。
「姉様たちも庭園の方に向かったし、わたしたちもそっちに行く?」
「そうだな。挨拶が終わったら、指輪のお披露目をするらしいし」
ルーナの問いにジーンが答えると、彼女は不思議そうに首をかしげた。彼女と同様、婚約式に初めて参加するロッタは、これからの式の流れについて一緒に説明を聞く。
「婚約式では婚約指輪が披露されてから、婚約者と交換し合うんだ」
「貴族の家系だと代々奥方が身に着けるものがあるから、嫡男や当主の配偶者にはそれらを渡して、女性側からは相手の家紋をかたどった指輪が贈られるんだよ」
ジーンに続いてユアンが説明すると、ルーナはふむふむとうなずいた。
「うちにもそういうのがあるの?」
「母上が持ってるよ。ほら、
ルーナはすぐに思い至ったらしくパッと笑顔になる。
「花の意匠がきれいな、母様がいつも嵌めてる指輪だよね?」
「うん。初代リヒトルーチェ公爵が、妻に贈ったものなんだそうだよ」
「じゃあ、将来ジーン兄様のお嫁さんが受け継ぐことになるんだね」
「そうなるかな」
組んだ手を顔の下に掲げて想像するように上を見るルーナに、周りは優しい表情を向けた。十中八九メルヘンな妄想が展開されている。
「何だか、由来がリヒトルーチェ公爵家らしくて素敵ね」
「ロッタのうちにもきっとあるよ」
「あるにはあるだろうけど、……紛失したとか言われたらどうしよう」
ありえないとは誰も言いきれなかった。
「だけどほら、ロッタは相手の家紋をかたどった指輪を用意する側でしょ? だから、心配しなくていいってわけでも、ないけど……」
確かに困るのはエリックだけである。しかし言うにつれてそういう問題でもないような気がしてきたルーナは、自信なさげに言葉を紡ぐ。
その時、広間の両開きの扉が開き、遅れてきた招待客が入ってくる。
「あら、少しばかり遅かったかしら」
控えめとは言い難い大きな声で、新たに現れた招待客――王妃キーラが高らかに告げた。その声に広間にいたすべての視線が向くと、彼女は満足そうに
彼女の深紅のドレスは、金糸や銀糸、宝石が縫い付けられた華美なもの。豊満な胸元を強調するかのように大きく開いたデコルテには、大粒の宝石を中心とした豪華なネックレスが飾られていた。王妃の登場に、まず主役の両親であるアイヴァンとミリエルが挨拶に向かう。続いて、ヒューイの両親が挨拶した。いずれも王妃は愛想よく応じる。
ロッタはアマリーとヒューイが登場する前に、王妃が今日の婚約式に出席する予定だということをリュシオンたちから聞かされていた。どう考えても裏があるとしか思えない話に、遠目から王妃を観察する。
「――なんか意外なほど、ご機嫌ね、王妃様」
ルーナはポツリとつぶやく。
王妃はその後も、話しかけてくる貴族たちを相手に、にこやかな応対を続けている。
「ちょっとつついてみるか」
唐突にリュシオンが言うと、カインに向き直った。
「悪いが一緒に来てくれるか? 他国の王族というおまえの身分なら、俺と一緒にいてもあの女も何も言うまい」
「いいですよ」
リュシオンはカインに満足げに微笑むと、彼を伴って歩き出す。