12話
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しばらく再会の喜びに浸っていたロッタたちだったが、いよいよアマリーのお披露目の時間も近づき、客間を出て会場に向かった。広間に入ると彼らに一斉に招待客の視線が集まり、ため息交じりの感嘆の声があがる。見目麗しい青年と、少年、少女が一堂に会しているのだ。それも無理はない。
一方ロッタは、会場のほぼ全ての人間から注目を集めるという、今まで経験したことのない事態にこわばった表情で顔を背けていた。ふとルーナに目をやると、彼女は慣れた様子でリュシオン達を見ている。彼女の緑色の瞳がやがてロッタを映す。
「緊張してるの?」
「ええ。見た目が良い方々は大変な思いをしているのね。ほら、ジーン様やユアンも、毎回こんな感じなんでしょ?」
ルーナだけに聞こえるように、ロッタはささやいた。
「そうだね。本人たちは平然としてるけど」
ルーナは彼女に身体を向け、楽しそうに微笑む。
「でも、多分、ロッタも注目されてるよ」
「それは恐らくルーナへの視線ね」
「どっちもどっちだよ」
どこかズレている少女たちに、ユアンは的確に指摘した。
「もうこればっかりは慣れるしかないよ。ほら、ロッタ、笑顔笑顔」
笑顔が標準装備のユアンに言われると説得力があった。両隣から笑顔を連呼され、彼女はとりあえず目が合った人間に微笑みかける。手にシャンパンを持っていたとある貴族令息は、しばらく彼女を凝視し、空いている方の手で何度も目を擦って彼女を見た。扇で口元を隠したとある貴婦人は、扇で目元まで隠す。
「……わたし、もう少し笑顔の練習を真剣に取り組むことにするわ」
「えっ、なんで」
ユアンはなぜそうなったのか本当に分からない様子で彼女を窺う。
「ロッタはそのままでも十分素敵だと思うな」
一連の流れを見ていたジーンは、ユアンのアドバイスが悪い方向に転がったことを悟り、にこやかに語りかける。その笑顔たるや、正装と相まって、後光が差したのかと思うほど輝いていた。
(ジーン兄様、ナイスフォロー!)
ルーナは内心拍手喝采を送りながら、ロッタを横目で見た。彼女は少しの間ジーンを眺め、視線を逸らしたかと思うと、再びジーンを見る。何か返事をしなければと思ったようである。
「わ、分かりました……?」
自分で言っておきながら、何が分かったのか分からないといった表情だった。ただジーンの輝きに圧倒されてしまっただけのような気もする。
(ロッタ、その気持ち分かるよ。うちの家族って、結構直接的だもんね)
ルーナが妙に共感していると、それまで柔らかな光を放っていた広間のシャンデリアが、一斉に明るくともった。暖かな橙色の光から淡い白へ、緩やかに明かりの色が変わり、それに合わせるようにして音楽が奏でられる。