9話
夢小説設定
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王都北区のはずれにある、とある准貴族の邸宅。屋敷の中で自分の家のように寛いでいるのはバルナド・デジレと名乗る男。その正体は、すでに滅びたと言われている――魔族だ。その対面には完璧に整った美貌の青年が不機嫌な表情で腰かけている。艶のある黒い髪と赤紫の瞳を持ち、彼もまた魔族の一人だった。
「南の方が面白いことになっているんだって?」
くくっと笑うバルナドに青年は眉間のしわを深くしたが、生真面目にうなずく。
「瓦解するのも近いだろうな」
「確かあそこにも一つ、気になる場所があったはずでは?」
「ある。だがあれは手が出しづらい」
「私が出向いてつついてやるのもいいが……」
バルナドは考え込むように顎に手をやった。
「前の失敗もあって、王妃も今のところ素直に時期を待つようだし、まだしばらくは大人しくしているだろう。ならば少しくらいクレセニアを出ても問題ないか……」
独りごちるバルナドに、青年は無感情な口調で問う。
「王妃? あの愚か者を野放しにするのか?」
「確かに愚か者だが……まあ、ほんの僅かな期間だし、大丈夫だろう」
バルナドは楽しむように笑い声をあげた。モルガナを力のある『はぐれ
「ならばいいが。それより、かの地を守る輩は我らの気配にさとい。どうするつもりだ」
「モルガナを連れて行こう。あの子は唯人だからね。警戒されることはない」
「なるほど。それは役に立ちそうだな」
簡潔に言い放つと、青年はもたれかかっていたソファから身を起こした。
「おや、北に戻るのかい?」
「ああ。しばらくおまえの顔を見なくて済むと思うとせいせいするわ」
「それは残念だね」
欠片も残念そうでない表情で肩をすくめるバルナドに、青年は返事をしなかった。
「おまえがどうしようと勝手だが、上手くやれ」
言い終わると同時に、青年の姿がバルナドの目の前から煙のように消える。それに驚くこともなく、バルナドは手に持った杯を軽く掲げてみせた。