3話
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秘薬――『
ルーナが出発する二日前、ロッタはようやく彼女と面会することが出来た。ルーナが不慣れな土地で危険な旅をすることも心配ではあったが、恐らく彼女なら大丈夫だろう。面会の一番の目的はやはり情報を仕入れるためである。
「ロッタ……様、にご挨拶申し上げます。こちらからお伺いできなくて申し訳ございません」
「いいのよ。こちらこそ、旅の準備で忙しいところを押しかけてしまってごめんなさいね」
部屋の外で侍女たちを待たせようとしたロッタだったが、安全のためと銘打った監視によって二人で話をすることは不可能だった。衛兵が退室する代わりにフィーネが彼女に付き添う。そのため室内にはルーナとロッタとフィーネの三人。フィーネの手前、二人は演技をしなければならなかった。
「聞くところによると、オズワルドに向かうことになったそうね」
「はい。王太子殿下のために力を尽くしたいと思います」
ルーナの言葉にロッタは軽くうなずく。
「突然のことだったから、同行する兵士は数人程度だと聞いたわ。ニール侯爵が直々にお選びになったとか」
ルーナはロッタがそこまで知っていることに目を丸くした。しかし後ろに控えている侍女――フィーネ――が全く反応していないところを見ると、ルーナの旅の話は、宮中ではすでに有名になっていることを知る。
「……はい。数人と言えど信頼できる者を付けてくださるそうで、侯爵のご厚意に感謝しています」
「そうなのね。出来ることならわたくしも王太子殿下のために動きたいけれど、今の立場では出来ることも限られる。あなたの帰りを待っているわ」
「お任せください」
二人の会話はどこか表面的だったが、言葉の節々に本音が見え隠れしていた。フィーネは相変わらず静かに控えている。彼女がどこまで捕捉できているかは定かではないが、誰に聞かれても当たり障りのない発言であることは確かだった。
「折角のエアデルト訪問がこんなことになってしまって、あなたも苦労が多いでしょう」
「苦労ばかりではありません。……わたくし、家族へのお土産として宝石細工の店を訪ねようと思っていたんです」
「宝石? それはいい考えね、お目当ての店は見つかったの?」
「はい。すぐにでも行きたかったのですが、代わりに誰かを向かわせようと思っています。父様とか」
ロッタはちらりとルーナを見て、それが冗談だとわかると笑みを浮かべた。国王の治療をしているマティス卿にそんな時間はきっとないだろうし、第一彼に宝石細工は似合わない。
「きっとマティス卿には不似合いよ。行かせるにしても紳士然とした方でないと」
彼女につられてルーナも笑顔になる。
「ええ。実はもう見つけてあるのです。金髪の好青年の文官に行ってもらいます」
「それがいいでしょうね」
恐らくジーンだろう。紅茶を
リュシオンはどうしても自ら動くことができない。その点ジーンなら誰にも怪しまれずにカインや一連の事件に関する調査が出来るというわけだ。つまりルーナは秘薬、ジーンは調査、リュシオンは監視という風に役割を振り分けたということだろう。
そのとき部屋に衛兵が入ってきた。退室の時間が来たらしい。どこか寂し気な顔をするルーナにロッタは軽く微笑み、彼女の手を握った。
「……ルーナ、わたくしはあなたの疑いが晴れ、あなたの願いが叶うと信じているわ。そしてわたくしもあなたと同じように、
『彼』という言葉と共に、ロッタは握っていた手に軽く力を籠める。ルーナはつぶらな緑の瞳をさらに大きくして彼女を眺めた。そしてあるかないか程の短い沈黙のあと、「ありがとうございます」と小さく口にした。