18話
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魔族が去ってのち、王妃は正気を取り戻しカインに許しを請うた。彼は王妃の今までの所業を水に流し、彼女を許すことにしたのだった。彼女は王太子に看取られながら静かに息を引き取った。
王妃の死から三日後、ロッタは絶対安静からやっと解放され、ルーナたちと共にリラの泉を訪れていた。
彼女が駆けつけるまでに起こった出来事は、病室で休んでいる間にリュシオンたちによって伝えられた。
ルーナが王太子に
すると突然王妃が苦しみだし、彼女と共に偽のオリバレス子爵――実際には魔族――が転移魔法を使い部屋から立ち去った。そして魔族がわざと捕まって皆の気を引いているうちに、魔物化したヘクトルがリラの泉の宝珠を壊したということだった。
彼女が走っている間に感じた瘴気の消失は、ヘクトルを倒した際のものと、シリウス、レグルスが浄化した際のものだったらしい。
王妃の死は厳重に
魔族の目的は何なのか。宝珠が壊されたことによって何が変化するのか。事件が収束に向かっている今でも謎は多いままだ。
「おまえ、俺たちに何か言うことがあるだろう?」
すっかり片付けられて何もなくなった泉の孤島を眺めていたロッタは、リュシオンがルーナに放った言葉によって現実に意識を引き戻される。その場にはリュシオンたちを初め王太子やニール侯爵、ナイジェルもいた。この面子を見る限り話す内容は決まっている。
「わたし、精霊使いなんだ」
ルーナがはっきりと口にすると、リュシオンとジーンはただ静かにうなずき、予想していただろう王太子たちはそれでも驚きに目を瞠る。ただ以前から事情を知っているカインは心配そうな眼差しで彼女を見ていた。
「リューや兄様に隠していたのは、ごめんなさい。いつかは言わなきゃって思っていたけど、それでも簡単には言えなかった」
ロッタには精霊使いの希少性は分からなかったが、周りの反応を見る限りそれは大変珍しい存在なのだということは理解できた。どうやら強大な
リュシオン達は彼女の告白を迷いなく受け入れた。次いで王太子も彼女の秘密を守る旨を伝える。
「エアデルトもクレセニアと同じように精霊使いを迫害してはいない。むしろ迫害するなど罪だと思うものが大半だろうね」
それは初代王妃を精霊使いに持つエアデルトだからこそだった。そしてエアデルトにはお抱えの精霊使いが二人いることを告げる。クレセニアが魔法大国であれば、エアデルトは精霊使いの国だったのだ。
「わたしが精霊使いだってこと、ロッタはすでに気づいてたよね」
微笑ましい会話を外から見ている気分だったロッタは、急に話題を振られて口ごもる。一方でルーナ以外の面々は予想外の発言に彼女を凝視した。
「何故知っていたんだ?」
「……わたくし、元々精霊が見える体質のようです」
霊感があるなーとしか思っていなかった自分を殴りたい。周りの驚きようをみれば彼女と彼らとの間にいかに温度差があるかは分かるものだ。
「ルーナ様の元に精霊がいるということは随分前から気づいていました」
「ロッタったら、風姫さんのこと、ずっと幽霊だと思っていたんだって!」
『まったく、失礼なやつだ!』
『あらあら可愛らしいじゃないの』
「本当にごめんなさい」
風姫と水姫が立て続けに言った内容に、ロッタは反射的に謝った。すぐにルーナと自分以外には聞こえていないことを思い出し口に手を当てる。何故か、三日前から精霊の声が聞こえるようになってしまったのだ。無視するのがいいと分かっていても、慣れるまでに時間がかかる。
しばらく呆気に取られていた一同だったが、自然体な彼女に毒気を抜かれた。その危うさを正確に理解しているルーナと違い、どこか『霊感のある一般人』気分が抜け切れていないように見える。精霊が見えるということは精霊の波長と合っているのと同義で、悪意のある人間に知られようものなら一発で見世物小屋行き案件なのだが。
「とりあえずロッタは、精霊についてもう少し勉強が必要ということだな。心配になるほど危なっかしい」
「滞在中は自由に図書館を利用してもらって構わないよ」
「……ありがとうございます」
両国の王太子から言われれば頷くしかない。
会話が一通り済んだところで、ルーナはポケットから小瓶を取り出した。それは神木の実を絞ったもので、簡単に言うと、果汁である。彼女は泉の縁ぎりぎりに立ち、瓶の中身をそっと注ぎ入れる。すると泉の水が一瞬、金色に輝いた。ロッタが次に泉を見たときにはたくさんの精霊たちが嬉しそうに戯れる姿が広がっていた。
(これが、本来のリラの泉。本来の精霊の力)
先ほどまでとは打って変わって泉は浄化の力を遺憾なく発揮している。王城中が生まれ変わるように清浄な空気に包まれていく。事態を把握できていない人たちに説明するルーナの近くで、ロッタはひたすら泉を眺めていた。