17話
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白い肌は夜明けの空のような薄青に。赤紫の瞳は縦に細くなり深紅に変わる。彼の白目部分は人にはありえない金色に変わっていた。
「ま、魔族……!」
その様子を息を呑んで見守っていた騎士が
――魔族。ネビュリンド大陸に住むとされる種族で、長年人間とは関わりのない存在のはずだ。しかし目の前の男は彼女たちを心底見下すような態度で平然と宙に浮いている。
「感謝してもらいたいものだ。私が作り変えてやったおかげで、あの女はまだ生きている」
「ふざけるな!」
王太子は病み上がりのはずだったが、
「おやおや、感謝されるどころか怒り出すとは。これだから人間は恩知らずで嫌なのだよ」
時間が経つにつれて、ロッタは身体が芯から冷え切っていくのを感じていた。全身がここにいてはいけないと警鐘を鳴らす。ここにいる誰も彼には敵わない。少なくとも『結界』が壊されてしまった今は。
『リグ・ソルム』
リュシオンが短く詠唱すると炎の玉が魔族へと襲い掛かる。しかしそれは彼まで届かず、相手の倍以上の魔力で魔法を打ち消す<消去>の魔法で跡形もなく消えてしまった。
「随分と人は退化したものだな……これではお遊びにもならぬ。あるのは活きの良さだけといったところか」
「黙れ、魔族!」
リュシオンは魔族の視線を真っ向から受け止める。力の差を認識しながらも一切怯む様子を見せない彼に、魔族は哄笑した。
「気配すら認識できぬ人間が何を言う! だがその心意気は認めてやろう! 下手に勘づいて怯えるそこの小娘よりはマシというものだ」
金色に縁どられた、血の滴るように赤い瞳がロッタを向いた。途端、首を絞められたように息が出来なくなる。身体が恐怖に包まれて、視線を逸らしたいのに逸らせない。魔物化した王妃と突然の魔族の登場に気を取られていた面々は、森の入り口に彼女がいることにようやく気づく。
「そうだな、目的は果たしたことだし、楽しませてくれた礼に小娘の命だけ頂いて帰るとするか。――『リグ・リデ』」
「ロッタ!」
魔族が火系魔法を唱えるのと、リュシオンが彼女の名前を呼ぶのはほとんど同時だった。彼女の目の前には無数の火の矢が飛んでくる。下位魔法とは思えないほどの速度で迫るそれが、彼女に致命傷を負わせるだろうことは誰の目から見ても明らかだった。ロッタはこれから訪れる痛みを予期して反射的に目を背ける。
『大丈夫。これはいつか外れる魔法。混乱しないで、ただ、受け入れなさい』
その声が聞こえた瞬間、彼女の周囲を覆うように光の膜が現れ、炎の矢はそれに衝突し霧散した。
「なっ!?」
魔族は想定外の出来事に目を見開いて光の膜を凝視する。しかしすぐに余裕の表情に戻ると、軽蔑の視線を彼女に浴びせた。
「……いちいち癪に障る娘だ。まあいい、ここで全てを破壊するのも芸がない。時間をかけて楽しませてもらうとしよう」
そう言い捨てた彼は右手を左肩に当て仰々しく一礼すると、一瞬にしてその場から消え去った――