15話
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オリバレス子爵領で数人の使用人たちの証言を取った後、二人は細密画を持ってすぐにディレシアに戻った。事の顛末を聞いたリュシオンは子爵領の家令と同じくらい呆気に取られている様子だったが、すぐに平静を取り戻すと二人にくれぐれも内密に動くよう釘を刺したのだった。
ジーンの先導に従ってオリバレス子爵の別邸を目にしたロッタは無意識に息を呑む。形状、構図は子爵領の領主館を切り取ったように似ている。しかし内部から発せられるドロドロと纏わりつくような空気は明らかに異質だった。僅かながら瘴気のようなものも感じ取れ、彼女は無意識に恐怖を抱く。
(緑の髪に赤紫色の瞳。きっと、たまたまじゃない。だけど何も証拠がない状態でジーン様に伝えるわけにもいかない)
道中にジーンから聞いたオリバレス子爵の特徴は、ロッタが平原で見た不気味な男と一致していた。つまり王城で彼女を襲った首謀者である。しかし偽のオリバレス子爵が膨大な
「疲れたかい?」
眉を寄せて下を向いていたロッタにジーンは努めて優しく声をかけた。ここまで相当無理をして馬を走らせたこともあり、彼の顔には心配の色が浮かぶ。しかしその言葉にロッタは肩を揺らすと彼を少し見つめたあと頭を振った。
「大丈夫です。行きましょうか」
「……ああ。まずはこの家の使用人に事情を話すところからだな」
屋敷の前でいい身なりをした男女が馬を引いているということで、屋敷から使用人と思わしき青年が出てくるところだった。子爵領のときと全く同じ反応。<傀儡>の魔法にかかっている可能性は低い。
「あの、どちらさまでしょうか」
「クレセニアのジーン・リヒトルーチェというものだ。こちらはロッタ。オリバレス子爵にお会いしに来た」
流石に王都というだけあって情報は伝わっているのだろう。使用人は彼らの素性を疑うことなく客間に通した。『クレセニア』の『リヒトルーチェ』を冠する青年というだけで、今回の派遣団の一員だと思い当たったようである。客間に控えていた数人の使用人を代表して、執事らしき初老の男性が二人に応対した。
「申し訳ございませんが、主人は只今参内しておりまして……」
「時間がないから手短に話す。君たちの主人、つまりオリバレス子爵を名乗っている人物だが、彼が偽物だという疑いがある」
いきなりの話題転換にポカンとしてしまった使用人を尻目に、ジーンはとりあえず話を続ける。彼らが別邸に着くのと時を同じくして、ルーナが
「私たちは数日前までオリバレス子爵領に滞在していた。そこで子爵の幼いころの細密画を借りてきたんだ」
ジーンからの目配せに無言でうなずき、ロッタは子爵領から持ってきた細密画を机に並べる。赤毛に青い瞳の男性と少年二人の細密画。幼いころの先代の子爵と現当主が描かれた絵だ。促されるままにそれを覗き込んだ使用人は思わずと言った様子で生唾を飲み込む。