13話
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街道は穏やかな春の光を反射して白く輝く。王都を出発するときには雑草一つ生えていなかった道も、田舎に向かうにつれ舗装が悪くなっていった。ただしそれでも『道がある』こと自体が便利なのは当然で、馬を走らせること数日、予定よりもはやくレブン村に到着した。
ジーンに見つかったあと、彼は予想外のことを口にした。
『君が行くのは反対しない。ただし私と一緒にまずはレブン村へ行くこと。それから子爵領へ行って調査しよう。危険があれば逃げる、隠れる、助けを呼ぶ。いいね』
そして彼は今、細工師――ロバートの友人宅へ話を聞きに行っている。
(絶対、ランデン兄様と話をしたのよね……。聞くに聞けないけど!)
あの台詞が出るということは、ジーンたちがどこかのタイミングでランデンに連絡を取ったということだった。帰ったら鬼の形相をしたランデンが待ち構えているのだろうか。エリックにしてくれればよかったのに。ロッタは村の入り口で馬を休ませながら、座り込んで空を見上げていた。
何があっても後悔しないと決めたのだ。こんなことになるとは思っていなかったが。しかし一度決めたことはやり遂げようと心に誓ったのである。しばらくすると、村の向こうから……周りの人々とは立ち振る舞いの違う青年が歩いてくるのが見えた。
(目立たないように最大限気を遣った服装でも目立ってる。気配遮断の魔道具とか、発明出来たら面白そう)
ロッタが将来の研究テーマについて考えを巡らせているとはいざ知らず、村の入り口に戻ってきたジーンは開口一番に彼女に告げる。
「この村には宿はないようだから、噂になる前に早くここを離れよう」
「はい。……収穫はありましたか?」
「ああ。宿を見つけたら一旦リュシオンに連絡をいれないといけないな」
ジーンはすっきりした顔をしている。指輪の宝石細工から始まった調査がようやく何かに繋がったのだろう。
放牧された家畜と耕された畑、小さな家々。典型的な田園風景に、雑草を食む馬たちも心なしか動きがゆるやかになる。彼女たちはレブン村より街道に近く、それなりに栄えている村で宿を取ろうと考えていた。
颯爽と馬にまたがるロッタを、ジーンは無言で見つめる。
「どうかしましたか?」
「いや……。乗馬はランデンに教わったと聞いた。豊穣祭後の数カ月で、よくそれだけ上達したものだと思ってね」
ジーンの感心したような口調にロッタは苦い顔をした。蘇る猛特訓の日々。運動神経と体力が神がかっているランデンには、一日のほとんどを家かレングランドで過ごすロッタの気持ちは分からないだろう。宿への道すがら、彼女は彼がいかに指導者に向いていないかを説明しなければならなかった。その内容にはジーンも思わず顔をしかめる。
「家でも外でもランデンはランデンだな……」
聞くと、レングランドでも似たようなことがあったらしい。恐らく彼女に行った所業が何倍にも濃縮されていたのだろう。ジーンが学院を休んだ次の日にクラスに行くと、そこは死屍累々たる有り様だった……などという、笑えない体験談が返ってきた。
「兄様が度々申し訳ありませんでした。ですがあともう少しの辛抱ですと、クラスメイトの皆さんにぜひお伝えください」
ジーンは頭を下げる少女を横目で見る。
(彼女の無表情と無頓着な性格は手に余るアイツの相手を長年してきたからじゃないか……?)
謝り方が手馴れすぎている。しかし短期間で乗馬が上達したことについては、彼女は一転して感謝を口にしたのだった。