11話
夢小説設定
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「おい、まさか、お前が調査するとか言うんじゃないだろうな」
無言。それがすべてを物語っていた。彼と見つめ合うこと数秒、ロッタはそっと目を逸らす。
「ロッタ!!」
「まさか! そんなことは致しません。それはお二人にお任せします。……わたしはただ王城の外に出たいのです。このままここに滞在していては、わたしの命はあってないようなものですから」
リュシオンは責めるような口調で彼女の名前を呼んだ。しかし彼女から出てきたのは彼が予想していた内容とは違うものだった。彼は拍子抜けした様子で、未だに目を逸らしたままのロッタを見る。一方ジーンは彼女の真意を探るような視線を向ける。
「……先ほどのことを考えると、王城内はロッタにとって安全とは言い難いでしょう。ディレシアは治安もいいですし、技術者たちが滞在する宿に泊まる方がいいかもしれません」
やがてジーンは彼女から目を逸らし、リュシオンに向かってそう告げた。
「リュシオンからニール侯爵に話をつけるということでよろしいですね?」
「ジーン」
珍しく強引に話を進めようとするジーンを、リュシオンは不機嫌を隠すことなく睨みつける。しかしジーンはロッタに分からないよう、彼に向かって小さくうなずいた。
「……わかった。そうしよう」
「ありがとうございます。では早速荷物をまとめて参りますので、失礼いたします」
余程外に出られることがうれしいのだろう。彼女はリュシオンの気が変わらないうちにと、そそくさと部屋を出て行った。パタンと軽い音を立てて閉まった扉を眺めながら、リュシオンは気を落ち着かせるように紅茶を飲む。
「エアデルトの紅茶は上手いな」
「ええ。最高級の茶葉を使っているそうですよ」
「どういうつもりか聞かせてもらおうか」
「本題に入るのが早いですね」
リュシオンが閑話を始めたからそれに合わせたのに一瞬で終わってしまった。ジーンは肩をすくめて茶化すように言う。しかしリュシオンがますます不機嫌になるのを感じると、真剣な顔で向き直る。
「彼女はああ言いましたが、あの様子では私たちの目を盗んででも調査を始めるはずです。相手はオリバレス子爵と庶子でしょう? それなら彼女を遠ざけた方が話は早いのではと思いまして」
彼は続けて口を開く。
「王城内で、すでにロッタは侍女たちを味方につけています。一方でディレシアの宿にはミゲルしか彼女の言うことを聞く人間はいません。私たちにとっても動きを監視しやすいのでは?」
リュシオンはロッタに仕えていた侍女たちを思い出す。短期間で彼女がどうやって信頼を得たのかは分からないが、侍女を使って動かれると厄介だ。彼に王城内の人間の動きを制限する権限はない。ジーンの言う通り、彼女を王城の外に出すことは利点ばかりのように思われる。ただ一つ、気になることがあるとすれば……。
「なぜ、ロッタは自分にとって不利な提案を自らしたんだ」
「謎ですね。外に出て何をしようとしているのやら」
部屋を出る前の、うれしそうな表情には確実に裏がある。しかし彼らには全く思い当たることがなかった。
「仕方ありません。こうなったら、大変、大変に癪ですが、
ジーンはある人物を思い浮かべ、苦虫を噛み潰したような顔をした。その表情を見てリュシオンは当たりを付ける。ジーンは苦手なタイプだろう。だからと言って自分が得意かと言われるとそうではないが。
「なるほどな。奴か」