11話
夢小説設定
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リュシオンは深いため息をついた。ここまで言い当てられては隠す方が逆に危険だ。
「その通りだ。よく自力でそこまで分かったな」
カインの件はルーナが国王の肖像画を見たことで発覚したことだった。エアデルトでの外交に彼らが追われている間、暇を持て余したルーナがたまたま肖像画を目にしたのだ。そのときカインが国王にそっくりだということに気づき、彼の出自の真相に思い至った。
「ヘクトルに<変化>や<
リュシオンはルーナの今までの行動と、エアデルトに来てから得た情報についてかいつまんで説明した。ルーナが王太子襲撃の際、賊の名前を呼んでしまったこと、そしてそれは『カイン』だったということを聞いても、ロッタは平然としていた。予想済みのことだったのだろう。しかし唯一、ジーンが仕入れた指輪の話には身を乗り出して、考え込むような仕草をした。
「それにしても、私たちは相当気を付けて君に情報を与えないようにしていたつもりだったんだが、どこから仕入れてきたんだい?」
少なくとも自分たちからは漏れていないだろう。エアデルト側も彼女に情報が漏れることを警戒し、部屋の前に見張りを付けたほどだ。誰が彼女に情報を与えたのか。どのように、どうやって。ジーンには見当がつかなかった。
「隠そうとすればするほど噂は広まります。その真偽を確かめる術があるのなら、宮中で働く者すべてが情報源です」
「真偽はどうやって?」
「今回は、この事件に関わる方々のお人柄です」
彼女の簡潔な答えにジーンは納得する。ルーナやカインはもちろんのこと、彼女は王妃や倒れる前の王太子とも面識がある。噂には誇張や虚報がつきものではあるが、一定の判断基準によって惑わされずにすんだというわけだ。『ルーナががエアデルトの賊と通じていた』という噂も、彼女が公爵令嬢であること、エアデルトに来た目的をはじめから知っていれば、何かしらの誤解が混ざっていると考えるのはたやすい。
「なるほどな。どこで誰が聞いているか分かったものではないということか。今後の参考にしよう」
そう呟くリュシオンの顔には切実さが見て取れた。
多少空気がなごんだ頃を見計らって、ロッタはいよいよ本題に入ろうと気を引き締める。彼女は答え合わせをしに来ただけではない。もう部屋でゆっくり成り行きを見守っているつもりはなかった。
「二つ目の問題は王太子殿下の襲撃です。これに王妃が関わっていないのは、誰から見ても明らかでしょう。目下、一番怪しいのはカインだとしても、彼がこの状況で王太子に手を出すことに疑問は残ります」
彼の性格からしても、そのような浅はかな行動をするとは思えない。王太子がカインを害そうとして思わず反撃してしまったという線もあるが、ロッタは王太子もまた、潔白な人間だと思っていた。
「ジーン様はカインの失踪の真相から調べを進めているのですよね?」
「……ああ。そうだが」
それがどうしたとでも言いたげな様子だ。
「それならばもう一つ調査が必要でしょう。すなわち、ヘクトル様とオリバレス子爵の関係についてです」
ロッタは一息で言いきった。言いきってから彼らの顔を見据える。リュシオンは決意のこもった彼女の顔を呆けた表情で眺めていたが、数拍後ハッと意識を取り戻す。