9話
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ロッタはジーンが滞在する部屋の向かいに運ばれた。外傷は一つもなく、強いストレスから意識を失っただけだと医師から説明されたリュシオンとジーンは、とりあえず肩を撫で下ろした。その後ニール侯爵や近衛隊長などが部屋にやってきた。
「男は何も覚えていないと繰り返しています。自分の耳が聞こえづらくなっていることに、戸惑っている様子でした」
彼女の使った
「やはりな。あの男、<傀儡>の魔法の跡があったからな」
「それはどのようなものなのですか」
近衛隊長の疑問に、リュシオンは簡潔に説明する。<傀儡>は魔法の中でも難しい部類に入り、並の魔法使いでは使いこなせないことを話すと、彼と侯爵の顔は驚きに包まれた。
「では、この王城内に、腕のいい魔法使いが潜んでいるということですか」
「その可能性は考えておく必要があるな。だがそれほどの魔法使いならば、俺たちは出会ったら分かるはずだ」
「なるほど。しかしお二人が会ったことのない城内の人間というだけでは特定できません」
クレセニアでは魔法が一般的であるため、王城に万全の魔法対策を施している。また、衛兵の中にも
「加えて、彼女の滞在していた棟には<幻惑>の魔法の痕跡も見られました」
「気づいていたか」
「ええ」
隊長がまたしても首をかしげるのを見て、今度はジーンが簡潔に説明する。彼は「ありがたい」と呟き再び考え込む。
「あの棟には人間を近づけさせないような魔法がかかっていたんだろう」
「とすれば、魔法使いは何らかの目的でネグロ侯爵令嬢を狙ったということですな」
「そう考えるのが妥当だろう」
エアデルトで彼女を狙う人物は限られてくる。一番怪しいのは王妃だった。しかしエアデルトの宰相であるニール侯爵や王族の護衛を任されている近衛隊長を前にして、それを口にするのははばかられる。
「とにかく、彼女は俺たちの部屋の近くに滞在させることにする。侯爵、異論はないな?」
「はい。こちらの不手際の致すところでございます。ご令嬢にも直接謝罪をと思いましたが、今日の所は一旦下がらせていただきます」
彼らにも後始末が残っているのだろう。リュシオンがうなずくのを見ると、一礼して足早に去っていった。
「王妃がしばらくロッタに手を出さなかったので油断していました」
「しかしなぜ今になって手を出そうとする? 妙に引っかかってならないな」
王妃は王太子を溺愛するあまり、ロッタにいい印象を抱いていないのは彼らにも分かっていた。しかしその王太子が危篤な今、彼女を排除することに大きなメリットはない。むしろ敵を増やすだけだろう。