1話
夢小説設定
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豊穣祭から4か月が経った。まだ春先ということもあり肌寒い日が続いているが、厳しい冬が終わり自然が色づき始めるのをロッタは毎日観察しては日記にしたためていた。特に以前リヒトルーチェ公爵家の子供たちから贈られたアイリスは、水をやるとき以外にも頻繁に足を運ぶほど気に入っている。しかし庭師がそんな彼女の様子を見て、絶対に枯れさせまいと最優先で気を配っていることは知る由もない。
「まーた書いてんのか、飽きないなお前」
ランデンは庭園に彼女の姿を見つけて、後ろから声をかけた。ロッタは目の前のアイリスを見つめながら絵葉書を書いていた。宛名はネイディア、しばらく会っていない従姉妹に向けてである。
豊穣祭の誘拐事件失敗を受けて、ネグロ侯爵は領地に引きこもることになった。そして王妃は失敗の原因をロッタに見出した。彼女の怒りは凄まじく、大祭後ロッタが何度謁見しに訪れても決して奥宮に通すことはなかった。当然王女に会うこともできなくなったロッタは、せめてもの思いで頻繁にネイディアに手紙を書いていた。しかしネイディアから返事が来ることはなく、大方王妃が握りつぶしているのだろうと予想がついた。
「ネイディア様はおひとりになってしまったから……。わたし、少しでも彼女を励ましたいの」
眉を下げて絵葉書を見つめるロッタに、ランデンは止めろとは言えなかった。彼女の行動がさらにキーラの反感を買ったとしても、従妹を思う純粋な気持ちを
「絵を見ればお前がどれほど王女様を気にかけているかは伝わるだろ。……それはそうと、少しは俺のことも気にかけて欲しいもんだな」
「え?」
ロッタは隣の兄を見て首をかしげる。
「時間。俺はあと40分で授業が始まるんだが」
そう言われてロッタはランデンが彼女を待っているのだということを思い出した。
「に、兄様。そういうのはもう少し早く言ってよ!」
「お前が学ばなさすぎるんだよ! 何度同じことを繰り返せば気が済むんだ。俺の成績をいたずらに下げて面白いか?」
彼女は急いで立ち上がって屋敷に駆けて行った。ランデンは途端に元気を取り戻した妹の後ろ姿を眺めて呆れた顔をしたのだった。
レングランド学院は全寮制の学校であり、入学すると同時に入寮することが求められる。それは王都に別邸を持つ貴族の子女たちでも変わらない。しかし実家が近い学生は休日の二日、光曜日と闇曜日は実家に帰ることを許されていた。彼らは休日の夜、もしくは週明けすぐの
豊穣祭期間中、ロッタの願いを聞いた神官の必死の努力によって彼女は神官長と謁見する時間を手にすることができた。彼女の記憶では、生まれたばかりのころ神官長が侯爵邸を訪れ、ロッタの
しかし誘拐事件によってその約束は果たせなくなった。神官長は普段俗世の人間と