20話
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護衛の青年の案内によって、四人は『リラの泉』に向かうことになった。
「リラの泉は、城の北側にある聖なる泉のことです。初代エアデルト国王グレアム一世の王妃リラ様は、水の精霊使いとして有名な方でした。そのリラ様の精霊が湧かせた泉が、『リラの泉』と呼ばれるものなのです」
黙って聞き入る彼女たちに青年はさらに続ける。
「泉の中央には小さな島があり、聖水珠と呼ばれる宝珠が置かれています。その宝珠にはリラ様の魂が宿っており、城を、そして国を守っていると伝えられているのです」
「愛する人の国を守るために泉を沸かせたなんて、何だか素敵なお話ね」
説明が終わるとルーナはそう感想を述べた。青年は微笑みながら同意して、「もう少しです」と彼女たちに告げる。
小道を進んでいくとやがて城の外郭が見えなくなりそのまま森の中へ入る。手入れのされた森には、足下にエトラールという日日草に似た花が群生し、白い絨毯となっている。おとぎ話の森のような光景にロッタはゆっくりと辺りを見渡した。案内されるままに緩い坂道を下っていくと突然視界が開ける。そこには小さな泉があり、それを囲うようにエトラールの花が咲いていた。
ロッタは『リラの泉』がロブロアの森で見た泉とぴったり重なるような感覚に驚きで言葉を失う。透き通った水が、見る人間の心を浄化するようにキラキラと輝く。彼女はこの泉が人間の手を離れて城を浄化するような役割を持ったものだと直感した。ただし一つ不自然な点があるとするならば、それはこの泉の清浄な気配が何かによって
「あの中央に見える柱の上に置かれたのが、聖水珠です」
青年は泉の中央を指した。そこには小さな島があり、その上にルーナの背丈ほどの白い円柱が立てられていた。柱の上には大きなビー玉を思わせる、青を帯びた透明の玉が載せられている。
「あのように無防備に宝珠を置いて、大丈夫なのですか?」
誰でも近づけそうな周辺の様子に、ジーンが首をかしげながら尋ねる。
「誰も近づくことができないので安全なのですよ」
「近づくことができない?」
青年の言葉をリュシオンは不思議そうに聞き返す。青年はやって見せた方が早いと思ったのか、無造作に泉の端へと近づいてみせた。
「見ていてください」
そう言いながら青年はゆっくりと片手を前へと差し出す。すると次の瞬間、バチンッと静電気が起こったような音がして彼の手が弾かれた。
「これはリラ様が張った結界だと言われています。これは特殊なもので、一般人は結界を超えることが出来ないのです」
彼の説明にリュシオンとジーンは感心したようだった。ロッタは彼らから離れ泉の周りを歩いた。
平原で見た恐ろしい男、魔物、城の空気、国王の急病と、疑惑の庶子。加えて『リラの泉』は本来の機能を果たしていない。すべてが一度に起こって、渦中の人間を混乱させているようだった。ロッタは泉を眺めて歩きながら、出発前にエリックが言っていたことを思い出す。
(『相手の意図が分からないときは、反対のことを考える』よね。反対のこと……。全てにおいて反対のことを考えてみましょう)
彼女は退屈に思えていたエアデルト訪問が、実はそうも言っていられないのではないかと思い始めていた。ここには彼女を守る兄たちはいない。自分の身は自分で守らなければならないのだ。
リラの泉を堪能した後、リュシオン達は城へ戻ると言ったが、ロッタはもう少し外の空気を吸うことにした。『反対のことを考える』。彼女は静かな庭園で兄の言葉を
――王太子が襲撃されたのはその日の夜。ルーナたちが晩餐に呼ばれたちょうどその時のことだった。
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