20話
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「ロッタ、こっちだ」
マティス卿がいる宮殿に到着すると、その隣の部屋から見知った声が聞こえた。扉を少し開けてジーンが顔を覗かせている。案内してきた女官はその場で一礼し、「御用がございましたら、何なりとお申し付けください」とだけ言って、その場を立ち去った。
「おはようロッタ。呼びつけちゃってごめんね」
「いいえ、朝食を済ませたところでしたから」
マティス卿の部屋の隣はルーナの寝室である。しかし小さな身体に部屋の調度品は豪華すぎたようで、椅子に座らされているようなルーナを見て、ロッタは思わず微笑んだ。むしろ肘掛けに片腕をついて彼女を見ているリュシオンの方がこの部屋にはお似合いだった。
「よく眠れたみたいだな」
「……昨日は申し訳ございませんでした」
彼女を茶化すような言い方だった。ルーナは何のことかと首をかしげたが、他の三人にはその意味が伝わる。ロッタは迷った末に素直に頭を下げた。リュシオンはその反応に僅かに眉を寄せる。
(何故そうなる……?)
目の前の少女は、こちらを見てはっきりものを言ったかと思えば、今のように他人行儀な態度を取る。ルーナのように分かりやすくムッとした顔をするかと思ったのに、返ってきたのは正反対の言葉だった。さっぱり訳が分からない。
一方、何か失敗しただろうかと、リュシオンの顔をじっと見つめるロッタに、ジーンはさりげなく助け舟を出した。
「大した事じゃなかったからいいんだよ」
「そうですか? それならよかったです」
「長旅で疲れていたのかい?」
「……気づいてはいませんでしたが、そうだったのかもしれません」
話し込む二人を見ながらルーナはリュシオンの方に身体を移動して、小声でささやく。
「リュー、あれじゃだめだよ」
「何がだ」
「ロッタと仲良くなりたいんだったら、もっとはっきり言わないと」
「……」
見抜かれているというか、邪推されているというか、何故だか若干誤解されているような気がする。しかしここで『誰がいつ誰と仲良くなりたいと言った』と反論しようものなら、意地を張っていると尚更誤解されそうだった。
年下の少女に友人作りの指南を受ける状況に、腑に落ちない部分を感じながらも、リュシオンは苦虫を嚙み潰したような顔で軽くうなずいた。
用件はシリウスとレグルスについてだった。魔物に襲われたときに放りっぱなしだった疑問をリュシオンとジーンに聞かれたので、まとめてロッタにも話そうということになったらしい。
ルーナは改めて豊穣祭の出来事を話した。その驚くべき真実にリュシオンとジーンは呆然とする。しかしあらかじめルーナから『召喚した』と聞かされていたロッタは、心の準備ができていた。
(つまりこの二匹はロブロアの森に封印されていた神獣ってことよね)
もう少し複雑な話がありそうだったが、ロッタは考えるのを止めた。まとめると二匹は『すごい獣たち』ということだ。
「なるほどな。聖なる獣か……」
「今の姿は、仮のものということなんだね」
一方リュシオンとジーンは彼女よりもしっかり理解しようとしたようで、途中から思考を放棄した彼女とは違い、ルーナの話についていけているようだった。その流れのまま昼食を取り、午後からは庭園を散歩することになった。