1話
夢小説設定
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目に入ったのは真っ暗な室内だった。瞼を開けてから数拍置いて、自分が目覚めたのだと自覚する。まだ空が白けてもいない早朝、暗闇と静寂に包まれた屋敷で、
彼は屋敷の使用人たちにも気を遣い、自室で湯を沸かして紅茶を注いだ。身だしなみを整え軽装に着替える。昨日から持ち越していた書類に目を通そうと机に向かう頃になってようやく鳥の鳴き声が聞こえる。だんだん白んでくる空を眺めながら、人影のない都が新しい一日を迎えるのを肌で感じた。何かと不便な体質の中で彼が唯一利点だと思えたのは、この爽やかな朝の一瞬に毎日立ち会えることだった。
鳥の声を皮切りに人の気配が多くなっていった。屋敷の中でも使用人たちが仕事を始めたようで、小さな話し声や足音が部屋の外から耳に届く。彼は山際が白くなるのを見ると再び手元の書類に視線を落とした。日が昇るにつれて物音が大きくなる屋敷とは裏腹に、室内にはページをめくる音だけが響く。彼は日の光が部屋に差し込むころになっても微動だにせず積み上げられた紙と向き合っていた。
しばらくして控えめに扉を叩く音がした。それはいつもの侍従の気配ではない。彼は入室を促すと、入ってきた人物に顔を綻ばせた。橙色の真っ直ぐな髪を無防備に下ろし、澄んだ
「兄様、起きてる?」
「ああ。おはようロッタ」
扉の向こうから覗き込むようにして様子を
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