17話
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王城に到着して早々、ロッタはリュシオン達と別れることになった。エアデルト国王の治療を最優先の課題とするリュシオン達とは違い、彼女はあくまでユリウス王太子の婚約者としてここに訪れたのである。当然エアデルト側も、彼女の扱いを考慮せざるを得なかった。
しかし婚約を含む話し合いは国王が回復してからということになっており、ロッタはしばらく出番なく滞在することになる。ミゲルもそれまでは城下町で待機していた。
彼女は多くの侍女たちが待機する部屋で、居心地の悪い時間を過ごしていた。元々多くの人間に世話をされるのが嫌いな彼女は、屋敷でも最低限の使用人たちしか傍に置いていない。しかしエアデルトの客人として扱われる以上、文句をつけるわけにはいかないのだ。
ロッタを緊張させるものは、侍女の多さだけではなかった。城中に、言葉にできない恐ろしさが漂っているのである。それは彼女に、五日前に見た男を思い出させた。男は恐らくルーナに向けて、『王城でお会いしましょう』と語りかけていた。人間離れした不快さを漂わせながらロッタを見て歪めた口元が、なぜか頭から離れない。
(この城のどこかに、あの男がいる)
明確な根拠はなかったが確信していた。
エアデルトに出発する前に、エリックからエアデルト国王の
暇つぶしに、必死に覚えたエアデルトの王侯貴族の事情を、彼女は一から整理することにした。
(庶子ってことはユリウス王太子の腹違いの兄弟ってことになるでしょ。彼の母親は弱小の子爵令嬢……)
しかし育てたのはロセット伯爵だという。刺客によって彼女は殺され、幼馴染だったロセット伯爵が代わりに彼を引き取ったのだ。しかしロセット伯爵もまた急襲され命を落とし、庶子は長い間生死不明の状態だった。
(何者かにって言ってもね……)
ロッタは決して口に出してはいけない言葉が思い浮かばずにはいられなかった。庶子が二度も『たまたま』襲われるなど、有り得ないことなのだ。
ちなみに子爵令嬢とロセット伯爵、そして現宰相のニール侯爵は幼馴染らしい。また二人と国王は友人だったようだ。
一連の出来事を考えるにつけ、ロッタはこれから顔を合わせることになるであろう、王妃ロウィーナに当たり障りない対応をしようと固く決心した。王太子を溺愛している王妃というだけで、ロッタの先行きは不安しかない。身体が弱かった以前ならいざ知らず、将来有望な王太子を一介の貴族令嬢と結婚させたくないと王妃が考えるであろうことは容易に想像できる。
(だけど、今まで庶子を散々目の敵にしていたのに、証拠を持ってきたところで『彼女』がすんなり納得するのかしら……?)
何か裏がある気がしてならない。ロッタがまだ幼かったころは、王妃といえば優しく慈悲にあふれた人間だと幻想を抱いていた。しかしクレセニア王妃の姿を見ても、また多くの権力者の姿を見ても、ここは物語の中ではないのだと実感させられる。クレセニアがそうであるなら、エアデルトがそうでない保証はどこにもないのだ。
しかし、彼女の考察は突然開いた扉によって強制的に終了させられた。