16話
夢小説設定
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その後ジーンとマティス卿は兵士を連れて戦闘の後処理に向かった。ロッタは一連の騒動にすっかり疲れてしまい、用意された簡易椅子で休憩中である。ルーナたちほど戦闘の役には立っていなかったが、初めての経験に彼らより無駄な力が入っていたのは否めなかった。
身体の力を抜きながらも、上品な仕草で
しかしロッタに一心に集められていた視線は悲鳴に変わる。そこには険しい顔をしてルーナを抱き寄せるリュシオンと、彼らの目の前に迫る炎の塊があった。炎は凄まじい勢いで彼らに近付き、詠唱もできないままリュシオンを焼き尽くすかに思われた。しかし彼らに当たる直前、シリウスとレグルスが巨大な炎球を撥ね返し、二人は事なきを得たのだった。
彼らの無事に胸を撫で下ろしたロッタは、すぐに虫が這うような嫌な気配を感じ、辺りを見回した。
遥か遠方、草原にぽつんとある大きな岩の上に、いつの間にか一人の男が立っている。束ねられた緑の長髪に赤い瞳。ロッタは思わずロブロアの森の泉で見た『妖精』を思い出す。男は彼女と同じくらい空恐ろしい雰囲気を身に
(だけど……違う。あの人からは、嫌な気配がする)
命の危険を感じながらも清浄な空気を放っていた彼女とは違い、彼はひたすら不快さをばらまいていた。彼は一瞬ロッタに目を止め、真っ赤な唇を横に歪める。
『まさか、こんなところで会うとは』
心臓を掴まれたような威圧感にロッタは目を逸らしたくても逸らせなかった。しかし彼は苦し気に顔をしかめる彼女を一瞥すると、別のところに視線をやり再び口を開く。
『あの程度の魔物では力不足だったか……。お嬢さん、次は王城で会いましょう』
男は道化師を真似た仕草で深々と一礼すると、パチンと指を鳴らし、その場から一瞬にして消え去った。
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
リュシオン達の方を見ていたミゲルは、ロッタの顔色が若干悪いのに気づき声をかける。彼女は同じように呆然と立っているルーナを見つけて、彼女にも男が見えていたのだと考えた。
「……そこに、人が立っていたの」
「岩の上ですか」
「ええ。だけど、もういないみたい」
彼女はそれ以上のことは言えなかった。男の持つ明らかに異質な空気を、ミゲルに伝えられる自信がなかったのである。ただ彼女はしばらく男のいた場所を眺め続けた。今回の派遣が予期しない方向に転がっていく音を聞きながら――