16話
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パタパタとリュシオン達に近付くルーナを見ながら、ロッタもゆっくり立ち上がると彼らの元へ向かった。魔物の死骸は
「君は、私の言うことが聞けないのかな?」
死骸をボーッと見ていたロッタは、横から聞こえた声に身を固くして視線を向ける。そこには魔物の死骸よりも黒いオーラを放っていそうなジーンの姿。顔は笑っているのに目が全く笑っていないのが逆に怖い。
リュシオンが後でルーナに説教だと言っていたが、自分はジーンに怒られるのだと頭の片隅で考える。
「もちろん、ジーン様のおっしゃることは何に代えてでも守るつもりでした」
「『でした』?」
「じ、事態は刻一刻と変化するものです」
怖い。怖すぎる。この視線に耐えて反論した自分を褒めたい。ロッタは猛吹雪の中、寝間着で放り出された囚人のような気分になった。
「君は両国の
「ですが……」
呆れたように発せられた声に、ロッタは反論しかけて言葉を止めた。二人に注目してはいないが、周りには複数の兵士たちが魔物周辺を警備している。ロッタはジーンにそっと近寄り、囁いた。
「ですが、ジーン様の妹君です」
彼の
「それにわたしはわたしの出来ることをするまでです。相手が誰であっても、わたしの持てる力は変わりませんから」
ロッタは言い切ってからジーンの様子を窺った。幸いなことに、彼の怒りは収まったようだった。
マティス卿が国境警備の兵士たちを連れて彼女たちの元へやって来るのが見えると、ジーンは元の真面目な表情に戻りリュシオン達の様子を確認する。
「君の行動に感謝しよう」
彼女がしたようにそれは小さく呟かれた。そしてロッタが返事をする前に彼は二人の元へ足を進めた。彼女はジーンの後ろ姿を見て小さく微笑んだのだった。
ロッタは同様にミゲルにも呆れたため息をつかれた。彼は彼女を『突拍子もない行動をするお嬢様』に認定したようで、彼女が怪我人の手当てをしている最中、遠くから一挙手一投足に目を光らせている。リュシオンの要請を受けて結界を張っていたマティス卿も途中から手当てに加勢し、少し遅れてルーナもやってきた。
「ロド……お、お父様! 彼も看てあげて」
治療が必要な人間が大方いなくなったとき、ルーナの声が聞こえてロッタはそちらに向かった。そこには地面の上で眠るニコラスと、彼を心配そうに見つめるルーナの姿があった。
「これは……」
マティス卿は中指に大きな
「<睡眠>は俺がかけた」
いつの間にか近くにいたリュシオンが告げる。
「どうやら<
「解けるか?」
「やってみましょう」
リュシオンの問いに、マティス卿は重々しくうなずいた。
精神系の魔法を解くためには魔力だけではなく高度な技術が必要だ。その点でいえば、クレセニア屈指の魔法使いであるマティス卿が治療に当たるのは最適解だった。
治療を施すマティス卿の向かいにルーナが座り、ロッタもそれに倣って彼女の隣にしゃがんで静観した。
マティス卿が最後の詠唱を終えると、ピクリとニコラスの瞼が震え、次いでゆっくりとその目が開かれる。
「ニコラスさん!」
満面の笑みを浮かべたルーナは、ニコラスの手をぎゅっと握りしめてその名を呼んだ。
「え……あ、えぇ!?」
ニコラスは驚いてルーナに握られた手を凝視する。彼のぎこちない行動にロッタは今更ながらピンときた。何日も共に旅をしているのだ、ルーナの可愛らしさにあたふたするのも分かる気がする。
しかしジーンはそれが気に入らなかったらしく、彼に近付きにっこりと微笑んだ。
「後遺症はないようだね。ああ、でも心配だから馬車で休んでいてもらおうか? そこの君、すまないが彼を馬車まで送ってやってくれ」
隣にいた兵士に声をかけたジーンは、言い終わると同時にニコラスの手に重ねられたルーナの手を取る。そして笑みを浮かべたまま、彼女をさりげなく立たせて自分の方へと引き寄せた。
(ジーン様……)
今からこの調子では、ルーナが年頃になっても片っ端から男性を排除していそうである。ふとリュシオンを見ると、彼もまたロッタと同じような表情をしてジーンを見ていた。