15話
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ロッタはルーナの倒した魔物の方へ意識を向けた。そして驚いた表情をすると、すぐさまルーナの方へ駆けだした。
「お嬢様!!」
ミゲルが叫ぶ声が聞こえてきたが、それどころではない。ルーナが倒したはずの魔物が再び身動きを始めていたのだ。
『サイ・ネス・ティーア』
『エラン・リデ』
ロッタとリュシオンが魔法語を紡ぐのはほぼ同時だった。その瞬間、魔物は重力と氷の矢を受けて大きな音を立てて倒れこむ。
「馬鹿、油断するな!」
叱責するリュシオンに、ルーナはようやく倒したと思っていた魔物が、再び彼女に襲い掛かろうとしていたことを悟った。
「ルーナ、大丈夫か?」
慌てて近付いてきたジーンが声をかけると、ルーナはこわばった表情でコクンとうなずく。ロッタは彼らに駆け寄ると、ルーナの傍に膝をついた。
「良かった、ご無事で」
「ロッタもありがとう」
全力疾走は体に悪い。とりあえずの危機は回避したという安心感と共に、彼女はそのまましゃがみ込んだ。
「説教は後だ。あと一体、倒すぞ」
大きな声でリュシオンが告げると、ジーンや兵士たちはすぐさま風姫によって捕らわれていた最後の一体と向かい合う。ルーナは気を取り直し、風姫に風の
「ふん、あのような小物にてこずる奴が偉そうに」
「そういえば、生意気にもルーナに説教などと抜かしていたな」
ロッタは急に人語を話し出したルーナのペットたちを凝視した。余りにも自然に話すものだから、「ああ、そんなこともあるか……」などと思わず流しそうになってしまったが、流していいはずがない。
酸素を求める金魚のように、口をパクパク動かすロッタを見て、ルーナは一瞬『しまった』というような表情をしたが、聞かれてしまったからには仕方がない。彼女は大人しくロッタに向き直った。
「あのね、豊穣祭のときに、この子たちを見つけたって言ったでしょ?」
「ええ。洞窟の中で拾ったと」
「そうなんだけど、実は召喚したんだ」
「はい?」
(やっぱりそういう反応になるよね……)
至極当然なロッタの反応を受けて、ルーナは詳しく説明しようと頭をひねる。しかし簡潔な説明文句が出てこずに、結局白旗を上げた。
「リューと兄様にも近いうちに話すから、そのときでもいいかな?」
ロッタは優しい笑顔を浮かべて一つ頷く。
「ちなみに、ルーナ様の横にいつもいる『幽霊』については、リュシオン様たちは知っていらっしゃるのですか?」
「……ん?」
聞き捨てならない言葉に、微妙な反応を返したのはルーナだった。ロッタは明確な意図を持って風姫を見る。
「そこの、小さい半透明の少女のことです。豊穣祭で見たときより、少し大きくなっていますが、同じ子でしょう? 幽霊ではないのですか?」
『妾のことか!? 何と言った、幽霊だと!?』
風姫はロッタに向かって不機嫌な顔をした。しかし彼女には何を言っているのか聞き取れず、無音でプンプン怒っている幼女にしか見えない。その絵面の可愛さに思わず微笑むと、風姫は尚更怒り出す。
「風姫さんが見えてるの?」
「ええ。声は聞こえないのですが、姿は昔から」
『妾の声が……聞こえぬのか。怒って損をした』
風姫はそう呟いて、ふいっとどこかへ消えてしまった。ルーナは彼女から詳しい話を聞きたいと思ったが、最後の魔物をリュシオン達が倒すのを見て、急いでロッタに向き直った。
「あのね、風姫さんは精霊なの」
「精霊って、あの?」
「うん。だから、このことは二人だけの秘密」
ルーナの焦った表情と言葉に、ロッタは彼女がまだ家族にさえそのことを明かしていないのだと悟った。こちらを見るリュシオン達を視界の端に捉え、彼女は真剣な表情で「はい」と返事をした。