15話
夢小説設定
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「ロッタ!」
盗賊たちの処理や兵士たちへの指示をしていたジーンは、先ほどから姿の見えなかった彼女を見つけて駆けつける。
「どこまで行っていたんだ。無事だったかい?」
「はい。大丈夫です」
彼女の返事を聞いても彼はまだ心配そうに眺めていた。服に土が付いているのに気づくと、説明を求めるようにミゲルに視線を寄越す。
「戦闘が終わるまで様子を窺っていたところ、盗賊の残党がこちらに気づき襲ってきたのです」
ロッタは詳しい話をしてほしくなかったが、ミゲルはジーンに促され先ほどの出来事を事細かに報告した。彼はリヒトルーチェ公爵の名代として派遣に同行している。彼女がいくらエリックに任されたご令嬢だとはいえ、命令されればジーンに従うしかないのだ。
詳細を聞いたジーンは次第に表情を厳しくしていった。
「大体のことは理解できた。これからは君にも護衛を付けるべきだな」
「ジーン様……」
「少なくとも護衛の一人や二人は連れて出歩くように」
彼は言外にミゲルでは力不足だと言っていた。今回のことでそれが明らかになったのである。ロッタの訴えかける視線を受けても考えを変えることはなく、彼女はしばらくして目を逸らした。小さく同意した彼女にジーンは再び口を開きかけた。しかしそれは声になる前に閉じられることになる。
――グガァァァッ
突然草原に獣の
『ラノア・リール・フォルグラン・シード』
ジーンは目を
「ロッタ、ここでじっとしているんだ」
切羽詰まった彼の声に、ロッタは力強くうなずいた。それを見てジーンは一瞬表情を緩めたが、すぐに兵士たちを率いて彼らの元へ駆けつけていった。
大羊はつぶらな瞳が充血し、口からとめどなく涎を垂らしている。さらには開いた口から羊にはあるはずのない牙が生え、続いてメキメキと骨が軋む音と共に、両肩が盛り上がってその体型を変えた。
「魔物……」
異様な様子を見ていた誰かが小さく呟くのが聞こえた。巨体がさらに大きくなり、傍に立っているルーナたちが頭を上に向けて呆気に取られているのが見える。人間がまともに攻撃を受ければ致命傷は避けられないことは誰の目にも明らかだった。
互いに互いの実力を測るようなしばらくの硬直ののち、最初に攻撃を仕掛けたのはリュシオンだった。彼は寄り添うように立っていた二体の魔物に拘束魔法を唱える。見事に魔法が効き魔物は必死に抵抗しようと暴れ回ったが、咆哮ばかりが彼女たちの耳に届いた。
しかし魔法にかからなかったもう一体の大羊が突進すると、兵士の一人が草原に吹っ飛ばされる。その後リュシオンは拘束されている二体を相手取り、先ほど突進してきた残りの一体をジーンが倒すことにしたようだった。
拘束されて動けない魔物の相手をするリュシオンはまだ安心して見ていられた。しかしジーンは突進してくる魔物を寸前で避け、その際に剣を振るう。ロッタは彼の動きを見ながら、いつの間にかこぶしを固く握りしめていた。
そのうちリュシオンがルーナに二頭を任せてジーンの応援に向かった。彼女は信じられないといった目で彼らを見る。まだ年端もいかない少女が魔物の相手をするのはどう見ても危険だ。
(いざとなったら、わたしがルーナ様をお守りしなければ)
どこまで守れるかには疑問が残るが、何も行動しないよりましである。ジーンやミゲルに聞かれたら全力で止められるであろう決意を胸に誓った。
しかしルーナはロッタの
(流石ルーナ様)
ロッタはそう思ったのちにふと疑問を抱く。
――流石?
ルーナがただ者ではないと常日頃から思っていたのは確かであり、シリウスとレグルス、それに『幽霊』ですら、きっと特別な存在だろうと予想はしていた。しかしロッタはルーナが強いと確信を持つに至った『何か』をすっかり忘れているような気がした。小骨が喉に引っかかるような感覚に思わず顔をしかめる。
「どうかなさいましたか?」
覗き込むようにして様子を窺うミゲルに、ロッタは軽く首を振って応えた。違和感に見て見ぬふりをしながら、彼女は再びルーナに視線をやる。ルーナは魔物を鎮圧し終えて、リュシオン達の戦いを見ているようだった。彼らも仕上げに入っているらしくリュシオンが魔物を閉じ込めた<檻>にジーンが暴風を投げ入れる。そのあとから炎の攻撃魔法を加え、魔物を巻き込んで火柱を上げた。