14話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ロッタはそれを見て肩の力を抜いた。その時――
「ふざけやがってこのアマァッ!」
ガキンッという音と共にロッタは草原に投げ出される。防御魔法のおかげで攻撃は当たらず、投げ出された衝撃も受けなかったが、彼女にはその効力が消えていくのが分かった。この場に魔法を解する人間がいないことが不幸中の幸い。その事実は現時点ではロッタにしか分からない。
防御魔法によってロッタと同じく投げ出された男が体制を立て直すのが見えた。火傷で顔の半分が真っ赤になり、ふらつきながらも彼女を見据えている。彼は最初に彼女が炎の玉を放った男だった。
「甘い顔してりゃ調子に乗りやがって! 殺してやる!!」
ロッタに向けられるのは明確な殺意。彼女は
『リグ・ロゥム・ブラウド』
彼女の口から出たのは中位の攻撃魔法。しかしそれは発動せず霧散した。頭に浮かんだ魔法言語が消えていく。
(失敗!? このタイミングで!)
男はロッタの言動など眼中にないかのように、ゆっくりと剣を構えて彼女に近付く。己の身の危険など度外視した行動に狂気を感じて、彼女は倒れこんだまま後ろに下がった。
(ロッタ、落ち着くのよ。集中して)
少しずつ距離が縮まる状況に追いつめられながら、彼女は自分に言い聞かせた。深く息を吐き目の前の男をキッと睨みつける。
「もう一回! 『リグ・ロゥム・ブラウド』」
唱えた瞬間、先ほどとは違う手ごたえを感じた。それは魔法の成功を示すものだった。
「グゥアアァァァ!」
男は怪物のような悲鳴を上げて天を仰いだ。火柱に身体じゅうが焼けただれていく。ロッタは人が目の前で焼け死ぬかもしれないという恐怖に、ひたすらその光景から目を離せないでいた。
「このっ、小娘がぁあああ」
火だるまになった男はそれでも彼女に剣を振り上げた。炎の塊が襲ってくるような景色に頭が真っ白になる。満身創痍の中、男はただ彼女に致命傷を与えるためだけに身体を動かしていた。
(だめっ、当たるっ!!)
思わず顔を背けた刹那。
「ぐぅっ」
彼女の耳に、小さなうめき声と共にドサリと鈍く地面に叩きつけられる音が聞こえた。
「お嬢様! ご無事ですか!?」
知らない声に彼女が顔を上げると、そこには武装した護衛の兵士たちがいた。彼らは残った二人の盗賊をあっという間に捕縛すると、未だ呆然とするロッタに声をかける。
「お怪我はありませんか。駆けつけるのが遅くなり申し訳ございません」
「……だいじょうぶ、大丈夫よ。……ミゲルは!?」
反射的に答えながら、ロッタは突然今の状況を思い出した。ミゲルはもう一人の盗賊の相手をしていたのだ。
「彼も無事です。盗賊の団長と思われる男も捕縛されたようです」
「そう……」
兵士の言葉につられてリュシオンたちの方へ目を向けた。どうにかして魔法護符を奪ったらしい。彼らはすでに後始末を始めていた。その後彼女は多少ふらつきながら彼らの所へ戻った。