2話
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豊穣祭が閉幕して一週間ののち、都に訪れた観光客や
まだ一週間しか経っていないはずなのにロッタはすでに懐かしく感じている自分に気が付いた。神官が部屋の前で止まり、彼女は促されるがままに扉を開けた。
「……神官長、今回はお時間を取っていただきありがとうございます」
彼女は中にいた人物に頭を下げる。そこには印象的な髭を携えた老年の男性、神官長が座っていた。正装をしていた豊穣祭のときよりも幾分か楽な格好をしておりどこか親し気な印象も受ける。しかし彼の
彼はロッタを目を細めて眺めた後、腕を動かして座るように促した。そして彼女が座ったのを確認するとまずは、と言って頭を下げた。
「この度はお嬢様を危険にさらしてしまったこと、神官と神殿を代表してお詫びいたします」
「い、いえ、神官長が謝罪なさることではありません。むしろ、わたくしがお詫び申し上げなければならないくらいです」
思いがけない言葉にロッタは慌てて否定した。元はといえば父がやったことである。思わず父の顔を思い浮かべてロッタは眉をひそめた。結局何も言葉を交わすことなく父は領地にこもってしまった。彼女は侯爵を思い出す度に最後に見た冷たい視線が頭から離れなくなっていた。神官長は彼女の様子で何かを察したのか、それ以上言い募ることはしなかった。
「今日は神官長にお尋ねしたいことがあって参りました」
「ええ。何でしょう」
「……わたくし、以前、あなたに会ったことがある気がするのです」
ロッタは言い出してから発言を後悔した。いくら記憶があるとは言えないからといって、これではいい加減な口説き文句のようである。
「あの、そうじゃなくて、わたくしの母とお知り合いでしたか」
神官長は
「ええ。確かにおっしゃる通り、あなたのお母君とは知り合いでしたし、お嬢様とも以前にお会いしたことがあります」
(それじゃああの髭の長いおじいさんはやっぱり)
ロッタは記憶の中の魔法使いが、実は魔法使いでなかったことを確信した。
「母のことについて知りたいのです。もしかしたら……」
「もしかしたら?」
ロッタは途中で言葉を止めた。それ以上のことを話すのには少し勇気が必要だった。しかし次にいつ会えるか分からない神官長を前にして、ここで逃げてはいけないと再び彼を見据える。
「もしかしたら、母の死因をご存じなのではないかと」
彼女の言葉に神官長は押し黙った。ゆっくりとした動作で水を飲む姿は彼女に落ち着きを与えると同時に、彼が何かを知っているのだという確信をもたらした。
「お嬢様、私が一つ言えるのは、お母君……アイリス様は、あなたを本当に愛していらっしゃったということです」
彼はしっかりとロッタの目を見て言いきった。この後に何を言おうとも、それだけは揺るぎない事実だと少女に分からせるように。