3話
夢小説設定
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返事は思いのほか早かった。
『一週間後、午後に魔法研究所に来られたし』
多忙の合間を縫って面会してくれるマティス卿やリュシオン達の要望を、彼女が断るはずがない。そして、メイドたちが張り切ったのは言うまでもない。
「失礼いたします。お待たせして申し訳ございませんでした」
研究所の一角、応接間に集まった面々を見て、ロッタは集合時間を間違えたかと不安になった。しかし学院長、ロドリーゴ・マティスは、彼女の不安をかき消すように体躯に見合わない笑顔を浮かべる。
「今到着したところなので問題ありませんよ。それにしても、今日は一段とお綺麗で」
「ありがとうございます」
言葉に似合わず疲れた声と表情だった。髪に編み込まれた青い花と同じ色のドレスは、まるで王宮に出向くような格好なのである。メイドたちの実験台にされたと思うとロッタがうんざりするのも当たり前だ。リュシオンはジーンの隣、左向かいの席に腰かけた彼女を気の毒そうに眺める。
「おまえもなかなか大変なようだな」
「お二人に比べたら些細なことです。今日はお忙しい中お越し下さりありがとうございます」
「いや。今回の一件で貴族の、特に女性にとってどれほど研究環境が過酷なものかが分かったからな。国としてもいずれ真剣に取り組まなければならない問題だった」
「そうですね。クレセニアから広く人材を募るにも、環境が整わないことには始まりません。先例が少ないからロッタには苦労をかけることになるが……」
浮かない顔のジーンに、ロッタは慌てて首を振る。彼女はそれほど多くの仕事を強いられてはいない。むしろ彼らの仕事を増やしているのだ。ロッタが申し訳なく思うことはあっても、ジーンに謝られる理由はなかった。次いで、彼女は三人を見てためらいがちに口を開く。
「皆さんに残念なご報告をしなければなりません。
うつむきがちに眉を下げて報告するロッタに、三人はそれほど驚いた様子を見せなかった。どちらかというとそれも予想済みという顔である。
「ちなみにマート卿は何とおっしゃっていましたか?」
ロッタの正面に座った学院長はなだめるように問い掛ける。
「確か、『ネグロに関わると碌なことにならない。私はその名を聞いただけで発疹が出るんだ。分かったらこれ以上私と言葉を交わさず、回れ右をして出ていけ』と」
「やはりな」
「もう何年も経っているのであるいはと思いましたが、相変わらずですね」
ボリス・マートはレングランド魔法研究所の所長で、若いころは魔法師団の副師団長も務めた華々しい経歴の持ち主だ。しかし研究馬鹿を地で行く変わり者であり、魔法に関わるどのようなことについても研究しなければすまない質である。その点では『どこかに
しかしマートの言い分から、そして三人の反応から、ロッタは彼とネグロ家との間に因縁があるのだと悟らずにはいられなかった。
「あの、ネグロ家の誰が、マート卿にご迷惑をおかけしたのでしょうか?」
ジーンの『何年も』という発言から、若干予想はできたが、彼女は敢えて尋ねる。