12話
夢小説設定
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「で?」
「対岸まではまだ時間があるだろ。そう急ぐな」
ゆっくりと湖を進む舟の上。天蓋付きの座席にはルーナとリュシオンが、カインと向かい合うように座っていた。
木材に組み込まれた魔石の効果で、舟は
こうしてばかりはいられない。ルーナは意を決した。というよりもうほとんどバレている。
「ジーン兄様は、ロッタが好きなの。だから出来る限りお手伝いしようと思ってて……。こういうのって多分、あんまり人に言わない方がいいだろうから、カインには黙ってたんだ」
「まあ既に隠す気ゼロだけどな、あいつ」
ジーン本人が悟られたくないと思っているならまだしもそんな素振りは一切なく、アイヴァンやエリックに押し付けられた仕事を一通りこなしてからは、露骨にロッタと関わるようになった。しかも彼女に近付く貴族を徹底的に排除している。もっともロッタはエリックの工作だと信じて疑わないようだったが。
カインは大きなため息をついた。次いで目頭を押さえる。
「そんなことになってたんですか」
「いつか言おうと思ってたんだよ」
「別に隠されたことを責めてるんじゃありませんよ。というか断じて責めてません。そうではなくて、例え恋愛感情があったとしても、ロッタはまずいでしょう。そこのところ殿下はどうお考えなんですか」
カインの口調は心配しているようでもあり、冷静に意見を伺っているようでもあった。実際にそのような心境なのだろう。ルーナは二人の恋愛を、ロマンスとしてどこか憧れをもって眺めているだけだった。しかしカインはもう少し現実的に、政治や勢力関係から吟味しようとしているのである。
リュシオンはしばらく考えて、不安そうに彼を見つめるルーナに目を向けた。
「ルーナ、ここからの話は聞いていて気分のいいものじゃないぞ」
彼は当然、ルーナがジーンとロッタの恋愛を、兄と友人の恋愛として応援していることを知っている。彼の気遣いにルーナは目をみはり、眉を下げ、しかしすぐに真剣な表情で見つめ返す。
「大丈夫だよ。実はね、アマリー姉様に相談したときもおんなじこと言われたんだ。二人の間に、気持ちだけじゃどうにもならない問題があるってこと、分かってる。でもわたしは応援するって決めたの」
「……そうか」
エストランザ伯爵夫人となったアマリーは、令嬢だったときよりも積極的に社交界に参加していた。そうなれば自然と視野は広くなる。レングランドでの生活やアイヴァンの庇護によって、政治の現実的な部分を知らなかった自分とルーナを重ね合わせ、恋のキューピッド役を積極的にこなそうとする妹に度々言い聞かせていたのである。