6話
夢小説設定
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庭園からルーナに顔を向けると、彼女もこちらを見ていた。
「どうしたの?」
「何でもないよ」
ルーナは取り繕うようにスイーツを口に運ぶ。
「そう? ああそれから、夫人ったら、『誰もいないならうちのジーンはどう?』っておっしゃったのよ」
余りにも直接的な発言にルーナは思わずむせかえる。
「る、ルーナ!? 大丈夫? 水を飲んで、ゆっくり……」
ロッタは近くにあった水を差し出すと、席から立ち上がって、彼女の背中をさすりながら心配そうに覗き込んだ。ルーナは水を飲みながらロッタに身振り手振りで大丈夫だとアピールしたが、内心穏やかではなかった。
(何言ってるの母様!! もうそれ答えだよ。ジーン兄様が知ったら頭抱えるやつだよ!)
子供たちに溢れんばかりの愛情を向け、子供たちからも信頼を寄せられるミリエルだったが、彼女は時に家族の誰よりも大胆な行動に出ることがあった。その容姿や立ち振る舞いによって、恋愛に関しては敵なしでやってきたからか、色恋沙汰に少々積極的なのである。
アマリーのときには娘の健気な姿を一歩引いたところから見守っていた彼女も、ジーンに対しては安心感があるのか、ロッタを気に入っているのか、何度か危ない発言をしていた。それはほとんどジーンがいないところで行われるため、目撃者のルーナのみが冷や汗をかいて眺めている。
「ごめんなさい、変なことを言ってしまったわ。忘れてちょうだい」
ロッタはルーナの反応を拒否だと思ったのか、ごまかすように話題を変えようとした。
「変じゃないよ! むしろロッタがいいならわたしも嬉しいっていうか……。別に、ロッタが嫌だったらいいんだけどね!?」
どちらに転んでも妙な雰囲気になりそうなため、ルーナは挙動不審な態度を取る。しかしロッタは気にすることもなく、ルーナをチラリと窺って困ったように微笑んだ。
「嫌だなんて。むしろ夫人にそう言っていただけるのは嬉しいことだわ」
「え!? ほんとに?」
「ご多忙なジーン様の手を煩わせるわけにはいきませんってお返事したの。でも、光栄なのは本当よ」
(ジーン兄様が多忙なのは、ロッタに辿り着くための障壁を乗り越えてるからなんだけど)
それを伝えたら、目の前の友人はどんな反応をするだろう。驚きに目を瞠って、やはりすぐには信じないだろうか。
ロッタは再び席につくと、先ほどのルーナと同じように、どこかごまかすように菓子を口に運ぶ。ただ彼女がルーナと異なるのは、心の内が簡単には面に出ないところである。ルーナからしてみれば、この話題はこれで終わりとでもいうように、優雅に菓子を堪能しているようにしか見えなかった。
ルーナは頭を悩ます。相手はものすごく手ごわい。
かつて、ヒューイはアマリーへの好意を自覚した上で隠していたため、ルーナも背中を押しやすかった。しかしロッタは好意があるかないかも分からず、あったとしても恐らく自覚しない。相手に対する鈍感か、自分に対する鈍感かで言えば、ロッタはきっと後者なのだろう。
そこまで考えて、ルーナは一旦冷静になる。
(そういえば、まだ重要なことを聞いてなかった)
彼女はおいしそうに菓子を食べているロッタに、純粋な疑問を投げかける。