深緋の星
名古屋の幼馴染
帰りの電車の中、つり革に掴まりながら窓の外をぼんやり眺める。
地下鉄だから、外はただひたすらに真っ暗。
視覚からの情報がほとんどないこの状態が、あまり思い出したくない出来事ばかりを思い起こさせる。
名古屋にいた頃からバスケをしている紳一。
愛和学院の男子バスケ部は全国常連の強豪なんだから、紳一の事を知っている人がいてもおかしくはない。
けど…あの諸星君が、紳一の友達で名古屋の幼馴染だったなんて。
諸星君の名前は入学前から知っていた。
まさか、同じクラスになるとは思いもしなかったけど。
私と話してみたかったと言われた時は身構えてしまったけど、紳一と同じ中学だから興味を持っただけだろう。
紳一とは…あの時から、ろくに顔も合わせていない。
今はまだ、紳一や神奈川での事は思い出したくはない。
自分の右の手のひらを見つめる。
倒れこんだ時に私を起こそうと差し出された彼の手のひらは、大きくて…とても熱かった。
そのせいか、触れた部分が今もなんだか熱い。
それをかき消すように、ギュッと手のひらを握る。
諸星君には悪いけど…明日からはなるべく関わらないようにしよう。
足を心配してくれた事は、ありがたく思ってる。
いい人だけど…だからこそ彼の明るさが今の私には眩しすぎて、正直ちょっと近寄りがたい。
帰り道が逆方向だったのが、内心ちょっとホッとしてしまった。
「ほんとに…この高校にしたの、失敗だったな。」
小さく呟いて目を閉じ、もうこれ以上は考えたくないと思考も真っ暗に閉じた。