星と願いを

1月1日。
名古屋に来て、初めてのお正月。
午前中は両親と近所の神社へ初詣に行った後、おせちとお雑煮を食べた。
そして午後は諸星と2人で初詣へ行くため、お昼頃に家を出る。
諸星は午前中は親戚の家へ行くって言っていた。

約束の時間の15分前に神社の最寄り駅に着く。
有名な神社なだけあって、周辺には人がたくさんいる。
通行の邪魔にならない位置に移動して、初晴れの雲一つない青空を仰ぐ。
空気は冷たくて寒いけど、穏やかな午後の日差しが心地良い。

「ごめん、待たせた!」

少しして、諸星が人混みを縫うように駆け寄ってきた。
初めてのデートの時もそうだったけど、諸星の姿を見るだけで胸のドキドキが止まらない。
諸星の彼女になれたからとか、プライベートな時間を一緒に過ごせるからとか、まだ見慣れない私服姿がカッコよすぎるから…とか。
色んな思いで頭がパンクしそうだ。

最初のデートは大人っぽいファッションだったけど、今日はジーンズでカジュアル。
雰囲気は違うけど、どちらも諸星らしくてとても似合っている。
心を落ち着かせるために、目線を外して腕時計で時間を確認する。
諸星はだいぶ慌ててたけど、待ち合わせ時間まではあと7分ある。

「大丈夫。まだ、待ち合わせの時間じゃないよ。」
「前も待たせちゃったし、もっと早く来るつもりだったんだよ。けど、時間には間に合って良かった。」

諸星は苦笑いしながらもホッとした様子。
最初のデートは私が早く来すぎちゃっただけなのに、そう言ってくれるのが諸星らしい。

新年の集まりに行ってたんだし、もう少し遅い時間にすれば良かったかな?

「あ、明けましておめでとう。」
「明けましておめでとうございます。」

恭しく2人でお辞儀をし合って、改めて新年の挨拶。
顔を上げると至近距離で目が合った。
なんだかおかしくって、ふふっと2人で笑う。
そして、諸星は私の全身をマジマジと眺める。

「なあに?」
「今日も可愛いな、と思って。」

初めてのデートの時も可愛いって言ってくれたけど…また言われると思わなくて、不意打ちの言葉に顔が一気に熱くなる。

「あ、ありがとう。…それ、毎回言うの?」
「当然。だって毎回可愛いし。」

私の反応を楽しんでいるのか、イタズラっぽくニッと笑う。
まだ2度目のデートなのに、前より余裕のある感じが何だかちょっと悔しい。
私は心臓が破裂しそうなくらいドキドキしてるのに…。
火照った顔を冷ますために、冷たい空気に晒されて冷えきった両手を頬に当てる。

「あれ、今日は手袋してないのか?」
「うん、持ってくるの忘れちゃった。」
「じゃあ、これ使えよ。」

そう言って、諸星は右の手袋を外すと私に差し出した。

「いいよ、寒いでしょ。」
「いいから、はい。」
「…ありがとう。」

半ば押し付けるように私に持たせた手袋を、右手にはめる。
私にはぶかぶかな手袋は、まだ諸星の温もりが残っている。
それが諸星に触れられているようで、またドキドキしてしまう。

「で、左手はこうな。」

そう言って諸星は手袋を外した右手で私の左手を握ると、自分の上着のポケットに入れた。
諸星の温もりがダイレクトに伝わってきて、ポケットの中でギュッと握られた左手が手袋をした右手以上に熱い。

「な、これなら2人とも温かいだろ?」
「…うん、とても温かいよ。」

諸星は少し照れ臭そうにしながら、ニカっと笑う。
その笑顔に、さっき冷ましたばかりの頬だけじゃなく全身が熱くなった。
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