星の願いは

12月31日、大晦日。
今日はお互いに正月の準備をしないといけないから、会う事は出来ず。
その代わり、電話で一緒に新年のカウントダウンをする事になった。
何時に電話するかは決めていなかったから、23時を過ぎた辺りから部屋で電話を手にずっとそわそわ。
23時30分になり、堪えきれなくなって電話の発信ボタンを押した。

『はい』

2コール目が鳴り始めた所で通話状態になり、電話越しに聞こえる中瀬の声。
昨日デートしたばっかだし、学校でも毎日のように会っているのに、今日会えなかっただけで声が聞きたくて仕方なかった。

「もしもし、諸星だけど。…電話平気か?」
『うん、待ってたよ。』
「時間決めてなかったからさ、あんまり早くかけても悪いかと思って。」
『ふふ、そんなことないのに。』

そう言えば、電話で話した事ってあまりないな。

毎日顔を合わせているとは言え、ほんの数日前まではクラスメイト、バスケ部員としてだった。
プライベートで会ったのは昨日のデートが初めてだし、電話だって今が初めてだ。
だから、電話越しに感じる中瀬の声がいつもより柔らかくて、そんな声を聴かせてくれるのが嬉しい。

それから、今日は何をしていたとか、年越しそばは食べたかとか他愛のない話をする。
ふとテレビの時計を見ると、時間はもう23時55分。

「…なんかやべぇな。」
『えっ、何が?』
「真夜中に中瀬に電話かけられる関係になれた事が、嬉しすぎてさ。まだ不思議な気分だよ。」

新しい年を迎える直前の真夜中、そんな非日常な時間を中瀬と共有している。
これは夢なんじゃないか、なんてちょっと思ってしまう。

『うん…私も。』
「だよな。ほんの1ヶ月前なんて告白するって決心したばかりで、毎日落ち着かなかったのに。」
『そうなの?』
「そうだよ。その前からずっと気持ちを伝えたかったけど、関係が変わるのは怖かった。ヘタレだよな。」
『そんな事ないよ。…だって、もしダメだった時の事を、ちゃんと考えてくれてたんでしょ?』
「え?」
『気まずくなって、どちらかがバスケ部に辞めることになったりしたら…きっと責任を感じてしまう、って。』
「何で、わかったんだ?」
『私も…同じだったから。』
「…そうだったのか。」

中瀬に片思いしていた間も楽しくはあったけど、もどかしかったしどこか苦しかった。
こんなに誰かを好きになったことがなくて、自分がどうしたいのかすらわからなくなる事もあった。
中瀬の隣に当たり前にいられるようになりたい、それにようやく気づいたのがおよそ1ヶ月前。
とは言え、告白を決心してからもそれまでの関係を壊していいのか、何度も葛藤した。
…けど、それは俺だけじゃなかった。
中瀬も俺の事を思って、苦しんだり葛藤したりしてくれていた。
それが嬉しくもあり、少し申し訳なくもある。
もっと早く告白していれば、中瀬にそんな思いを多くさせずに済んだんだろうか。

なんかしんみりしてしまったが、このタイミングでテレビで中継をしているリポーターが新年まで1分切ったことを告げた。

「あっ、1分切ったぞ。」
『ほんと?今、手元に正確な時計がないの。』
「こっち、テレビでカウントダウンしてるからわかるよ。…あと30秒…20秒…15秒…10…」

リポーターがカウントダウンを始めたのに合わせて、俺もカウントダウンをする。

「『9、8、7、6、5、4、3、2、1…ハッピーニューイヤー!』」

10秒切ってからのカウントは中瀬の声も重なる。
0になった瞬間の挨拶も一緒で、俺達は笑い合う。

「明けましておめでとう、中瀬。」
『明けましておめでとう。』
「ほんと夢みたいだな。俺、中瀬に一番に「明けましておめでとう」って言えてる。」
『な、なんか大袈裟だよ。』
「大袈裟なもんか。ずっと中瀬の一番になりたい、中瀬の一番が欲しいって思ってたんだから。」
『諸星…』
「中瀬は?」
『私も…そうだった。でも、気持ちに蓋をしてた。』
「そうなのか?」
『うん、好きになってもらえるわけないって思ってたし。それに諸星の負担になりたくなかった。』
「そんなわけねぇのに。…じゃあ、どうして告白してくれたんだ?」
『気持ちが、溢れちゃったの。あの時はフラれる怖さよりも、どんな形でもいいから諸星の特別になりたいって気持ちが、強くなっちゃったの。』
「出会ってからずっと…これからも、中瀬は俺の特別な人だよ。」
『うん。…嬉しい。』

俺の意気地がなかったばかりに、中瀬から告白してもらう形になってしまった。
これからは中瀬の笑顔を隣で見続ける為に、俺が出来る事は何でもしたい。
願わくば、それがこの先ずっと叶いますよう。

「…来年はさ」
『え?』
「来年は一緒に年を越そう。電話じゃなくて…隣で一番に「明けましておめでとう」って言いたい。」
『…うん。』
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