38度の冷たいキス

「久莉奈。」
「なあに?」
「…キスしていい?」
「キ、キス!?…だめだよ!風邪うつっちゃう!」
「だからだよ。俺にうつせば早く治るだろ。」

大君は私の顔をジッと見つめる。
優しい眼差しの奥にどこか鋭さがあって、私は目が離せなくなってしまう。

…まただ。

「……だめだって…」
「…したくない?」

その目で見つめられると、心が暴かれる感じがして嘘がつけなくなる。

私は小さく首を横に振る。
大君は優しく微笑むとベッドに座り、私のマスクをそっと外す。

「やっぱり…だめ。大君にうつしたくない。」
「大丈夫。うつってもすぐ治るから。」
「…さっきは風邪引かないって言った。」
「そうだっけ?」

大君はクスッと小さく笑うと、私の左頬に手を添える。
いつも温かい大君の手が、なんだかヒンヤリしている。

熱のせい?…それとも…

大君は私の左頬を親指で優しく撫でると、ゆっくりと顔を近づける。
私はゆっくりと目を閉じてそれを迎えた。
唇に感じる柔らかい感触。
前の…初めてのキスと違うのは、ヒンヤリした唇の温度。

大君も…緊張してる…?

唇を離した大君がもう一度、私の頬を親指で撫でる。

「…うつっちゃったかな…?」
「きっと…まだだよ。」

そう言うと、大君はもう一度私に口づける。
さっきと違う、押し付けるようなキス。

「く…苦しいよ…」

長い口づけに息苦しくなって、私から唇を離す。

「…まだ、足りない。」

さっきまで頬を優しく撫でていたその手が、私の後頭部に回されて少し乱暴に私を押さえつける。
その唇の温度は今までよりずっと熱い。

…私の体温がうつったのかもしれない。

されるがままに何度かキスを落とされて、ようやく大君が手を離す。
酸欠状態で頭がクラクラする。
体温もさっきより上がっている気がする。

「…絶対、さっきより熱上がってる。」
「大丈夫。風邪は俺がもらったから、明日には治るよ。」
「治らなかったら?」
「また、風邪をもらいに来るよ。」

大君はそう言うと、また私の頬を優しく撫でて微笑んだ。


次の日、大君の言葉通りに熱が下がって登校した私に、大君は嬉しそうな少し残念そうな顔を見せたのだった。
(大君に風邪うつってなくて良かった)
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