特別な半分こ

「なぁ久莉奈、真ん中バースデーって知ってるか?」

3限終わりの休み時間、私の席に来るなり大君がそう切り出した。

「知らない。なあに、それ?」
「荻野にさっき聞いたんだけどさ。2人の誕生日のど真ん中の日の事らしいぜ。いつなのか調べられるサイトもあるんだよ。」

そう言って大君は、手に持った携帯の画面を私に見せる。

「俺達の真ん中バースデー、調べてみようぜ。」
「うん、面白そう。」

大君はウキウキしながら、携帯を操作し始める。

「俺が7月7日で、久莉奈が12月27日…っと。」

素早い手つきで名前と誕生日を入力して『調べる』ボタンを押す。

「「え?」」

次に表示された画面を見て、思わず二人同時に声を上げて顔を見合わせる。

「10月2日…」
「すげぇ、今日じゃん!なんかお祝いっぽいことしてぇけど、普通に部活あるしな…。」
「ふふ、今度の休みに何かしようよ。」
「あぁ。…でも、せっかく今日なのになぁ。」

ここでチャイムが鳴ってしまった。
ちょっと残念そうにしながら、大君は席に戻っていった。

***

4限終わりのチャイムが鳴る。
先生が授業の終わりを告げるやいなや、大君はすごい勢いで教室を飛び出して行ってしまった。
その速さに、私と近くの席の荻野は呆気にとられる。

「大君どうしたんだろ…?」
「購買行ったんじゃないの?」
「今日は、私がお弁当持ってきたよ?」
「じゃあ、トイレでも我慢してたんじゃない?」
「そ、そうなのかな…。」

そう、今日は大君からリクエストされて、私がお弁当を作ってきた。
大君が私の作る玉子焼きを気に入ってくれていて、たまにだけど作っている。
お弁当の準備をして待っていると、大君は10分ほどで戻ってきた。
その手には小さな紙袋が1つ。

「わりぃ、待たせちゃって。」
「購買行ってたの?」
「そ。これ買ってきた。」

そう言って紙袋から取り出したのは、小さなカップ。

「わ、これ、幻のプリン?」
「食べてみたいって言ってたろ。」

お昼休みに購買で限定20個だけ売られている、手作りプリン。
美味しいと評判で、いつもすぐに売り切れてしまうから『幻のプリン』と呼ばれている。
私も食べてみたいとは思ってたけど、この教室は購買から少し離れていて、未だ食べたことはなかったのだ。

「真ん中バースデーだしさ、ちょっとでも特別なことしたくて。」
「そのために、わざわざ買ってきてくれたの?」
「おう。すぐ売り切れて1個しか買えなかったから、一口味見させてよ。」
「ありがとう。せっかくだから半分こしようよ。」
「いいのか?結構小せぇぞ、これ。」
「真ん中バースデーだから、プリンも真ん中で分けようよ。…なんて、大してうまくないか。」

自分で言っといて、ちょっと恥ずかしくなってきた。
私は誤魔化すように、お弁当を広げ始める。

「ははっ。そうだな、じゃあ半分こしようぜ。」

そう言って微笑む大君の笑顔。
付き合ってから何ヶ月も経ってるのに、未だに私はその笑顔に撃ち抜かれてしまうのだった。

***

「私も大君に何かしたいな。」
「何言ってんだよ、弁当作ってくれたろ。今日食べられるのラッキーだったよ。」
「お弁当くらい、いつでも作るのに。」
「久莉奈だって毎日忙しいんだから、いつでもはわりぃよ。」
「じゃあ時々、ね。」
「うん、サンキュ。」

「…その代わり、ずっと俺の為に弁当を作ってほしい。」

「え?何て言ったの?」
「…何でも。」
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